204 アルバス公爵ハーメルン 3
ザパスがキル達の宿泊していた宿屋を訪れたのはキル達がダンジョンに向かった後であった。
「仕方がないな。宿屋を引き払っているところを見るとしばらくは戻ってこないか、別の町に移動したかだな」
ザパスが1人呟いた。
(それにしてもハーメルン様の話では5人とのことだったが実は15人だったとは、だいぶ話が違ったな。一度戻ってハーメルン様に相談しよう。)
* * *
アルバス公爵邸
「どうであった?ザパスよ」
ハーメルンはザパスが1人で戻って来たのを知ると眉を顰めて問いただした。
「宿屋を突き止めて行ってみたのですが、もう既にダンジョン攻略に出たとのこと。
入れ違いになってしまいました。帰ってくるのを待って再度訪問してみましょう。
それともう一つ、奴らは15人パーティーの様です」
ザパスがわかった事を報告した。
「なに、15人パーティーだと。ちと人数が多すぎるな。チッ!」
口をへの字に曲がるハーメルン。
「いかがいたしましょう?」
「まあ良い。戻って来たら此処に呼んで、グフフフフ」
「わかりました。いつ戻ってくるかは定かでありませんが街の様子には目をひからせておきます」ザパスが答えた。
* * *
その頃キル達一行はニコゴンのダンジョンに入ろうとしていた。
クッキーとゼペック爺さんに⭐︎1〜3の盾使い、拳闘士、聖職師のジョブスクロールを使って体力、防御力、回復力を上げておく作戦だ。
上級までなら簡単に討伐経験値を満たすことができるし、そこまでステータスを底上げしておけば刺客に襲われてもまあまあ安心できるだろう。
スキルスクロールで飛龍拳とハイヒールを身につけて、経験値稼ぎに飛龍拳を使ってもらった。
パワーレベリングで2人のレベルをあげる。
パワーレベリングとはトドメだけをレベル上げしたいものが行うやり方だ。
王族や貴族が部下を使って行う事が多い。
あと一撃というところまでは周りの仲間が魔物にダメージを与えておきゼペック爺さんが飛龍拳でトドメをさした。
順番に次の魔物はクッキーが同じ様にトドメをさす。
そしてまたゼペック爺さんの番だ。
ニコゴンダンジョンの1階層で2人のレベル上げが行われ上級まですぐにレベルが上がった。パワーレベリングはチートだと言える。
とっても強い爺さんと料理人が出来上がった。
その後は少女達と一緒に2階層に侵入した。
現れる魔物はフクラダンジョンと一緒で1階はミノタロス、2階層はレッドオーガだ。
その後3階層に入ってそこで狩りを続けてレベルを上げる。
この3階層で怪我をしないレベルになればもう足手纏いにはならない。
そしてゼペック爺さんもクッキーもすぐにそこまで成長した。
そこでパワーレベリングは終わりだ。
この時には⭐︎4のジョブスクロールも使っている。
まだ経験値が足りていないのでしばらくは意味をなしてはいないのだが。
ケーナ達8人はもうすぐ聖級に進化する頃合いだ。
この前ジョブスクロールは渡してあるのですでに⭐︎5になっている。
このダンジョン攻略のうちに進化することが目標だ。
グラ達4人ももう少しで王級に進化できる。
こちらも今回での王級進化を目指す。
今までであれば6日戦って1日休んでいたが、今回は依頼を断る理由にしていることに合わせて1月ダンジョン内で過ごすことになる。
かなりのハードスケジュールだ。
と言っても体の負担がきついのではなくメンタル的に外に出たくなるだけなのだ。
料理人のクッキーが道具も食材も調味料も取り揃えて持って来ているので食べ物も美味しいものが食べられている。
この間に少女達8人は聖級に進化し、グラ達4人も王級に進化した。
とんでもない戦力、パーティーメンバーは皆上機嫌だ。
最終日、キル達王級冒険者5人と王級精霊4人で神級魔物のエンシェントドラゴン(フロアボス)に戦いを挑んだ。
エンシェントドラゴンはドラゴン種の中では最強の種類だ。
その中で最強の一体がエンペラードラゴンと呼ばれる。
キル達は1時間に及ぶ戦いと王級水精霊の犠牲の上でエンシェントドラゴンに勝つことができた。そして遂に⭐︎7の魔石を手に入れたのだった。
これは神級のジョブスクロールを4つ作れる事を意味している。
討伐経験値が足りていなければ進化できないのでレベル上げの方が大事になってくるのだが。
初めに使うのは経験値から言ってキルが使うことになるだろう。
それを使ってキルが強くなればその分エンシェントドラゴンが倒しやすくなる。
そうして倒したエンシェントドラゴンの魔石でグラたちの分のジョブスクロールを作ることができるのだ。
1ヶ月の成果を胸に『15の光』はアルバスの街に帰って行った。
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