203 アルバス公爵ハーメルン 2
「信じられないっす。絶対下心があって指名依頼を出したに決まってるっす!」
ケーナがプンプン怒っていた。
「本当に信じられない奴であるな。アルバス公爵ハーメルン!」
ユミカも怒り心頭だ。
「本当にキモいわ、あの男、あの目つき。2度と近づくなって言いたいわ。」
サキの眉間に皺がよる。
「本当ですわ。近くに来ないで欲しいですわ。」とクリス。
「どうかしたのかい?」
グラが4人の様子を見て事情を確認する。
事情を聞いてグラも眉を顰めた。
「その依頼は聞く必要は無いですね。キル君が良い言い訳を言ってくれた様ですし、予定の行動のとおりに行動をしていれば良いでしょう」
「そんなの普通無視よ!!」「うん。うん」
「いーやーらーしーい…わね。」
「スケベジジイだね。」「スケベジジイ」
モレノとルキアがキッパリと決定した。
『アルバス公爵ハーメルンはスケベジジイ』
「グラ、本当にそれで大丈夫かのう?しつこく追いかけてくるのでは無いか?」
とロム。
「貴族の横暴は限度がないからな、あるかもしれないな。」
グラがその可能性を認める。
クリスは悲しそうに俯く。
「あ!ごめんクリス、貴族が全員そういう人ばかりではないことは知っているよ」
グラの言葉に頷くクリス。
「それでですね、この近くのダンジョンの情報を調べてきたんですけれど」
キルが気を使って話題を変える。
「この近くにAランクのダンジョンが無いか調べたところ北東のニコゴンにある様ですね。ほぼフクラダンジョンに近い魔物が出るダンジョンの様です」
「それは都合のいいダンジョンがあったな。フクラダンジョンは散々潜っていたからな。それに近いダンジョンならやりやすいというものだろう。」
グラはキルの助け舟にすぐに乗って話題を変えた。
「レベル上げもしたかったところだし、むしゃくしゃしているからダンジョンに潜るのは良いわね。」とサキ。
「それとこの際、クッキーちゃんとゼペックさんに強くなってもらいましょう。ジョブスクロールと貴族がよくやる様にトドメを2人に指してもらう形でね」
キルが2人のパワーレベリングを提案した。
「良い案かもしれないな。」
グラがキルの提案に賛成した。
*****
アルバス公爵邸
ニヤニヤと嫌らしい笑いを浮かべるハーメルン。
「旦那様、また良いおもちゃを見つけられたのですか?」
ハーメルンにそう問いただすのは執事のザパスだ。下卑た笑いを浮かべている。
「グフフ、わかるかザパス。」
「それはもう、旦那様のお顔を見ればすぐに見当がつきました」
「実は今日冒険者ギルドでなかなかの美女と3人の美少女を見つけてな。あと小僧も1人ついていたがな」
ニヤつくハーメルン。
「旦那様、それでは地下牢の整備でもしておきませんとなりませんかな」
「監禁の準備をしておいてくれよ、ザパス。グフフフフ」
「旦那様も飽きませんなあ」
「グフフフフ…薬も忘れるなよ。良いなザパス」
「しつれいいたします。冒険者ギルドより手紙が届けられました。」
扉の外から声がかかった。
「ザパス、持ってまいれ」
ザパスが手紙を受け取って来てハーメルンに手渡した。
「なになに………『15の光』が指名依頼を断っただと。奴らは『15の光』と言うのか。それにしても領主のこのワシの依頼を断るとは無礼な奴らじゃな!」
顔をしかめるハーメルン。
「全く身の程を知らぬ奴らですなあ。いかがなさいますか?ハーメルン様」
ザパスが口の端を釣り上げた。
「奴らはEランクとDランクのパーティーと聞いたぞ。お前なら力ずくでなんとでもなろうがな………だが上手く騙して此処に連れてこい。ザパス」
ハーメルンが下卑た笑いを浮かべてザパスを見る。
「断った依頼というのは此処の警備で御座いましょう?」
「いつもの様にそれで依頼したのだがなあ、グフフ」
「それではわたくしめが、直接出向いて説得してみましょう。私が拝み倒しをして断れたものはいませんからなあ」
ザパスが口の端を釣り上げて笑った。
「そうだったなあ。お前の拝み倒しは超一流だからなあ。理由はなんでも良い。適当に上手いこと言って連れてくるのだ。頼んだぞザパス」
「わかりました。ではさっそく行って参りましょう。」
ザパスが部屋を出て行った。
「グフフフフ…………」
ハーメルンは笑いが止まらない様だった。
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