202 アルバス公爵ハーメルン 1
キル達の馬車はアルバスに到着した。
アルバス公爵領の都だけあってアルバスは大きかった。
キル達は15人が泊まれる大きな宿を探した。
10人部屋と5人部屋の有る大きな宿を探して見るとそれは意外と簡単に見つかった。
アルバスが大きな街だったせいだろう。
宿をとり、冒険者ギルドに先ほど狩ったビッグブラックベアーを卸しに行く。
冒険者ギルドは街の繁華街のやや東にあった。
15人で動くと目立ってしまうので10人は宿に残り5人でギルドを訪れる。
キル、ケーナ、クリス、ユミカ、サキの5人。
目立たないようにしても美女と美少女は目立ってしまうのだけれども。
「にいちゃん、良いなあ、1人分けてくれよ!」などとチャチャが入るがキルは聞こえないふりで無視をする。
サキがその真っ赤で苛烈な瞳で睨みつけ、皆黙って引き下がった。
どこの冒険者ギルドもガラの悪い奴はいる。
買い取りカウンターで小声で話をつけると大量買取用の部屋に案内された。
此処は魔物丸々1匹のように広い場所が必要な時に使われる場所だ。
そこにビッグブラックベアー1匹とライガーを20匹ほど積み上げた。
代金もそこで受けとった。
もう追手に命を狙われているわけではないので少しの間くらいはこの街に滞在してもなんの問題もない。
情報収集がてら依頼の掲示板を覗いてみた。
「特に変わり映えはしないわね」
サキが気の抜けたように呟いた。
「そうですね。何処でもこんな感じですかね」
とキル。
「レベル上げでも稼ぎの上でもAランクのダンジョンに潜るのが1番っすか?」
「この辺りのダンジョンの情報を調べておきますか?」
とクリスがサキの顔を見る。
「Aランクのダンジョン!腕がなるであるな!」
「この辺りのダンジョンの情報を調べておきましょう」
サキがこの辺りのダンジョンの情報を調べておく事を決めた。
キルがギルドの受付にこの辺りのダンジョンの情報が載っている資料が無いか聞いてみる。
受付嬢がダンジョンの資料は2階の資料室の本を見るようにと教えてくれた。
本は持ち出し禁止だそうだ。
2階に上がり資料コーナーの資料を5人で目を通していると奥の部屋から身なりの良い貴族と思われる男がお付きのものを従えて出てくるのが見えた。
キルはその男から目をそらして資料を食い入るように見つめる。
目があって興味を持たれたら大変だと直感的に思ったのだ。
男の横にギルドマスターと思える風体の男がつきそっていた。
貴族風の男は資料コーナーの横で立ち止まりこちらを見つめる。
そしてギルドマスター風の男に何やら言葉をかけていた。
何かイヤ〜な予感がする。
そして貴族風の男とギルドマスター?達は階下に降りて行った。
男たちが去ったのを確かめてからサキがブー垂れた。
「いやらしい目つきで私達を舐め回すように見まわして、まったく気に食わない男だったわね。身の毛がよだつわ。」
「本当っすね。嫌さらしいったらないっす。特にサキさんとクリスの事を舐め回すようにジロジロ見てたっすよ。きもいっす。」
「そうだったのであるか…気付かなかった。それにしても変な男であるな。」
クリスは両手をクロスして身を隠すように震えながら引いていた。
顔色が青い。
彼女達が貴族風の男に嫌らしい視線を向けられていたことは間違いなさそうだ。
ユリカは気付かなかった様だが。
ダンジョンの情報を頭に入れて5人は階段をおりる。
ギルドマスターと思われる男が受付嬢と話していた。
男がキル達を呼び止め話しかけてきた。
「君達にちょっと話があるのだが…」
「え、俺たちにですか?」
「俺はアルバス冒険者ギルドのマスターをしているボロスというものだ。2階の俺の部屋に来てくれないか?」
キル達は降りてきた階段を引き返してまた登った。
さっき貴族風の男が出てきた部屋がやはりギルドマスターの部屋だった。
ギルマスルームでボロスの話を聞く。
「君たちは『15の光』というパーティーで良かったのかな?」
「「「はい。」」」
「実は君らに指名依頼が入ってね。」
「「「え………」」」
知っている人間もいないはずなのに指名依頼というのは怪しすぎる。
「アルバス公爵ハーメルン様が、アルバス公爵邸の警備を頼みたいそうなんだが…どうだね」
「それは、先ほど資料コーナーの前を通られたかたですか?」
キルが確かめる。これは重要な事だ。
「そうだ。気づいていたのかい、この街を治めているかただから顔を知っていたのかね」
キルもみんなも顔を知っていたわけではない。
嫌らしい目でクリス達を見ていたのを知っているだけだ。
「すみませんが、そのお話は受けられません」
キルはハッキリと依頼を断る。サキやクリスに聞くまでもない。
「なぜだね?公爵様の依頼を断るなどありえない事だよ」
「と言われましても、我々には我々の予定がありますし、すでに1ヵ月先まで予定が組まれていますので」
キルが嘘8百の断り文句を口にした。
「1ヵ月先まで決まっているだと………まあ良かろう、公爵様にはそのように答えておく。
しかし、どうなっても知らんぞ。話はそれだけだ」
ボロスがもう行って良いというようにキル達を手で追い払った。
キル達は踵を返して立ち去った。
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