197 キル反撃に出る。
キル達は空を飛びすぐに隣町テクアに到着した。
ノルンに比べると小さな町だ。
ノルンに近いせいか宿屋も数えるほどしかない。
15人が同じ宿に泊まれる宿屋が無く二手に別れるのも危険な気がしたのでこの街を通り越して次の街までは行くことにする。
15人一緒にいられないなら危険度は上がる。
どうせなら途中で野営をした方が安全かもしれない。
そろそろ夕刻も近い。
テクアを飛び越えて次の町ドグリとの中間地点で野営の準備を始めた。
ドグリもそれほど大きな街ではないと聞く。
「グラさん。黒蜘蛛党ってどこまでも追ってくるんですかね?」
テントを張ながらキルがグラに話しかけた。
横ではケーナがマジックバッグから馬車を取り出してクリーンをかけていた。
「キル君、残念だけどいつかまた俺達に追いついて襲撃してくると思うよ。
奴らが全滅するまでね」
「やはり黒蜘蛛党は倒すしかないですかね」
キルは遠くを見つめて覚悟を決めようとしている。
「残り5人…」
キルが呟く。
「キル君、今日はこれだけ距離をとったんだ。たぶんまだ追いついてこれないと思うよ」
「俺もそうだとは思うんですがね」
そう言いながらも不安を拭いきれない。
「鬼蜘蛛、雷蜘蛛、土蜘蛛、火焔蜘蛛、蜘蛛隠れ…か」
グラがニヤリと笑った。
「毒蜘蛛は一撃で倒せたぜ。多分上級職程度の実力だ。さほど強くない」
「毒は猛毒だったんですよね」
「ドラゴンも死ぬとかいっていたけど、そこまでではないと思うな。
ドラゴンはしぶといからね。
でも、毒自体はかなり強力な毒みたいだった」
「女郎蜘蛛も厄介な相手でした。
魅了させた冒険者や一般人が攻めてきたので殺す訳にもいかなくて。
探しても見つからなくて。
ゼットさんがいなかったら大変なことになっていたでしょう」
「確かに奴らの攻撃自体は強力だと思う。
でも奴ら自体のレベル、ランクはそれほどではない気がするね」
俯いて考え込むキル。グラの意見で思うところがあるようだ。
「かえって受けに回るよりこちらから攻めた方が組みしやすいのではないでしょうか?」
キルの言葉にグラは眉間に皺を寄せた。
「そうかもしれないけれど…」
2人の話にロムが加わってくる。
「なんの相談だい?」
「いや。キル君が受けに回るより攻めに転じた方が良いのではないかとね…」
ロムも眉間に皺を寄せた。
「攻めに転じるってどうするんじゃ?敵をどうやって見つけるんじゃ?」
「索敵で探しながら辺りを廻るくらいしかできませんね。
でも探さないよりは見つける可能性がある。
それに俺1人で探していれば向こうから襲ってきやすい」
「誘き寄せるということかのう…
それも悪くなかろう。
キル君なら奇襲を受けてもなんとかできるじゃろうしのう」
ロムの言葉にキルが頷く。
クリスとケーナが心配そうにキルを見つめた。
サキが2人の肩をそっと抱く。
「大丈夫よ。キル君ってあなた達が思っている以上に強いから」
サキは2人の耳元でそっと囁いた。
モレノがキルに言った。
「キルさんが黒蜘蛛党を倒しにいってくれるんですか?ガンガンにやっちゃってくださいね」
ルキアがモレノを白い目でみる。
「任せておいてくれ。俺がみんなを守るから」
キルが拳を前に突き出して見せた。
「3日の内には合流しますので、みんなは明日ドグリのできるだけ大きな宿屋に泊まって待っていてください」
キルはそういうと立ち上がりフライを唱えた。
上空から黒蜘蛛党を探すキル。ノルン方向に引き返して探す。
ノルンからテクアに向かう5つの影を見つけたのは真夜中だ。
意外に簡単に見つけたな…
キルは5つの影に近づいた。
地上の降り立ったキルの気配を察知したのか5つの影が散り散りに離れていく。
逃げるつもりか?
俺1人なのに狙ってこないのか?
5つの影はキルを取り囲むように移動し始めた。
逃げるつもりではないらしい。
キルは5つの影を感じながら正面の影に向かってゆっくりと歩き出した。
正面の影が近づく。
四方の影はキルが逃げられないように取り囲んでいた。
1人で俺を倒せると思っているのかな…
キルは全てのステータスにバフをかける。
そしてミスリルの剣を抜いた。
もうすぐ正面の敵とぶつかるはずだ。
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