193 脱出ベルゲン王国2

少女達は楽しそうに狩りを始めた。


倒すことより相手の攻撃を躱すことを主眼にしているようだ、

つまりは訓練?攻撃すれば一撃で倒すこともできるステータスを持っているのだから攻撃すればすぐに戦いは終わってしまう。


あまり狩りすぎてもお金が必要なわけでもないし1度にたくさん引き取って貰えば悪目立ちしそうだ。それにこの地のライガーを狩り尽くす訳にもいかない。


なので少し1対1で戦って攻撃を受け流す訓練をする事にしたらしい。

後衛のクリスやケーナ、マリカは軽いフットワークだけでライガーの攻撃をかわしている。


「時間っすよ!」

5分くらいライガーをあしらった後、ケーナの合図で一斉に倒しにかかった。


みんな一撃でライガーを倒す。

倒したライガーをケーナがマジックバッグに収納して次に向かう。

8匹の群れを探して接敵するまでには多少の時間がかかるようだ。


キルはその様子を保護者が見守るように眺めていた。


グラ達4人はゼペック爺さんの護衛をしながら何やら相談をしている。


グラの足元に矢文が突き刺さった。


グラ達は周囲を警戒する。

ホドが矢文を取り手紙をグラに渡した。


グラが手紙を読み上げる。

「ベルゲン王国が刺客を差し向けたもよう。黒蜘蛛党に注意されたし。クリープ」


ゼペックの顔色が真っ青に変わる。心なしか足が震えているようだ。


「大丈夫ですよ。ゼペックさん。私たちがついていますから。これでも実力パリス1の冒険者クランだったんですからね」

サキはゼペックを安心させるために優しく背中に手を当てた。


ゼペックの顔色に赤みが戻ってくる。


「黒蜘蛛党って知っているか?」

グラが4人の顔を見回した。


「黒蜘蛛党ね〜。知らんのう」

物知りのロムも知らないと言った。

サラも横に首を振る。


無口のホドが口を開いた。

「黒蜘蛛党はベルゲン王家お抱えの暗殺者一族と聞いたことがある。代々王家に仕えた影の一族だと」


「王家がキル君を消しにかかったということかな」

グラが腕を組んで考え込んだ。


「暗殺者一族か?そんな奴らがこの世にいるとはな」


グラの言葉をホドが否定する。

「そういった一族はたくさん存在するぞ。少なからず王族、貴族にはそういった一族を抱えているものがあるらしい」


「そういうものなのね」とサキ。


「王国を闇で支える一族か?手強そうじゃのう」

ロムが唸る。


「クリープさんはそういう所の生まれのようよね」

サキが今気がついたかのように言う。


「まさかクリープさんの実家ということではないだろうね」


「そんな事を気に掛けても仕方があるまい」


「そうだね。この事はみんなに教えなくてはね。それから暗殺者の手口はよくわからないけれど毒殺とかには注意しなければね」


「うむ。そうじゃな」



2時間の狩りを終えてキルと少女達が帰って来た。

80匹のライガーを倒してきたようだが思っていたより倒しすぎてしまった感がある。



戻ってきたみんなにグラが黒蜘蛛党の話をして手紙を見せた。


キル達は手紙を回し読みしながら不気味な思いに包まれた。


「黒蜘蛛党ですか…そんな一族がいるんですね。村一つ黒蜘蛛党?みたいな感じですかね」


キルが顎に手を当てて表情を曇らせた。


「黒蜘蛛なんて気持ち悪い名前をつけますね」「うん。うん」

エリスとユリアも気持ち悪いという表情。


「暗殺ー者ーに、狙われるーなんて、うーん、こまりーましたーね。」とマリカ。


「現れたら返り討ちにしてやるのである。」

ユミカは勇ましい。


「やっぱり、暗殺って言えば毒殺かな?」

「毒だ!決まりだ」


「みなさん落ち着いてください。キルさんとグラさんの指示に従いましょう」

クリスが騒ぐみんなを落ち着かせようとした。


「キル先輩、毒消しのスキルスクロールをみんなに配ってくださいっす。そういうのあるっしょ」


「ケーナちゃん、良いこと言うね。キル君さっそく頼むよ」


キルが毒耐性1〜3までのスキルスクロールを作り全員に配った。

これを使えば毒はほとんど無効化できるはずだ。


スキルスクロールを使い全員が毒耐性3の状態になった。


「これで毒殺の心配はほとんどなくなったね」

グラがにっこりしながらキルの肩を叩く。


「アンチポイズンの魔法も使えますから毒の心配はそれほどないでしょう」

キルも太鼓判を押した。


キル達は馬車に乗りノルンの街を目指すのだった。

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