192 脱出ベルゲン王国1

再びロマリア王国に向けて旅立ったキル達一向。


緑山泊を出てもう3日になる。

誰かに守られてでもいるかのように何事もなく馬車は進みロマリア王国との国境の検問所が見えて来た。


ベルゲン王国の検問を抜け次にロマリア王国の検問からロマリア王国に入国する。


緑山泊で手に入れた身分証が役に立った。


検問所を抜けるとまたしばらく馬車を走らせる。


秋空の下に枯れかけた草原が見渡す限り広がっていた。


1番近くの街までは、まだだいぶはなれているようだ。


時々歩きで旅をしている冒険者パーティーを追い越していく。

彼らもベルゲン王国からロマリア王国に移動している人達だ。


草原のあちこちに魔物の気配は感知できるが襲ってくる様子は感じられない。

そこまで強い魔物ではないこともあるのだが。


キルは順調に馬を走らせて、夕方野営に適した場所に止めた。


「今晩は此処で野営をしましょう。

此処なら見晴らしも良いし魔物が近付くのも分かりやすそうです」


キルの言葉にロムも頷く。

「此処は野営にはもってこいの場所じゃな」


グラとホドはもうテントを張る作業を始めている。


ケーナとクリスが薪木に火をつけ鍋で湯を沸かし出していた。

火も水も魔法で作り出したのは言うまでもない。


クッキーは料理の下拵えを始めている。

鍋に入れてスープにするのだろう。


ケーナがマジックバッグから肉を出してクッキーに渡す。

「モーモウの肉でいいよね」


「はい。今日はモーモウの肉をつかいます」


ゼペック爺さんはじいっと炎を見つめている。


エリスとユリア、マリカ、ユミカとモレノ、ルキアは二手に分かれて近場の小さな魔物の狩りで食材調達だ。


料理が出来上がるまでのほんの30分ほどの狩りだ。


狩った魔物は後日の食材にする為ケーナの持つマジックバッグに収納しておいてもらった。


夕食の準備が整って、全員で食事をとった。


会話の輪の中心にはいつものようにサキがいる。


「サキさんはロマリア王国に行った事は有るのですか?」

エリスがロマリア王国の予備知識が欲しいのかサキに聞いた。


「有るわよ。この先にノルンという町があるのよ。朝出発すれば昼頃には着けると思うわ」


「なら、多少寄り道をする時間があるっすね」

何やら考えがありそうなケーナ。


「途中でちょっと2時間くらい狩りをするってのはどうっすか?みんな体を動かしたいと思ってるんじゃないっすか?」


「わたしもそう思いますわ」

クリスも同意見だ。


「明日は少しだけ気晴らしに狩りをする時間をとりましょうか?」

サキがグラの方を見る。


「そうだな。いいんじゃないか。ノルンの冒険者ギルドの買取所を利用してみよう」


グラの意見にキルはあわてて確かめる。

「大丈夫なんですか?」


「身分証が上手くできてれば買い取りは大丈夫じゃろう」

ロムが答える。


なるほど、此処でも緑山泊の身分証が役に立つのだな…。


明日は少しだけ狩りの時間を設けることが決定した。




馬車を走らせながら適当な獲物の気配を確認しているキルだ。


できれば強そうな魔物を相手にしたいのだ。


とはいえ馬車道近くではそれなりの魔物しか見つからなかった。


キルはライガーの群れが多数いる草原の近くで馬車を止める。

「この辺りで2時間くらい狩りをしていきましょう。」


キルの声に合わせて少女達が元気に馬車から飛び出して行く。


「ライガーの群れ狩り、久しぶりだな〜」

ルキアが伸びをしながらモレノをの方を見る。

モレノもあくびをしながらルキアを見た。


彼女らの今の実力からすればライガーも子猫のようなものだろう。

この狩りはちょっとしたレクリエーションのようなものだ。


「どっちがたくさんかれるか競争よ、ルキア。」

「いいわよ。モレノ。」

2人は完全に遊び感覚だ。


キルは2人に苦言を呈す。

「狩りでは油断してはダメだよ。それに命で遊んではいけないよ」


2人はバツの悪そうな顔をして俯いた。

「「はーい。すみませーん」」


「本当にわかっているのかい?」


「「はい。わかっています」」


「よろしい」


2人はみんなの後を追った。



キルは少女達を見送りながらゆっくり後を追って歩き出した。

何かあったら即座に対応できる体制を整えて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る