186 まだ力不足だった件

第5階層フロアボスの近くにまで来ている。


索敵でおおよその敵の強さを推し量るとやはり⭐︎7レベル、エンシェントドラゴンあたりではないかと思われた。


はっきり言ってかなり強い。

レッドドラゴンが可愛く感じる。


「グラさん、これやばいですよ。先に王級になっておかないと危険です。俺は王級になってますけど聖級が戦える相手ではないですね。」


グラも苦虫を噛み潰したような顔で言った。

「言われるまでもなく、奴の強さをビンビン感じてるよ。今戦うのは自殺行為だな。」


「暫くレベル上げをしてからでないとワシらでは無理じゃ。」


「暫くレベル上げの時間ね。引き返しましょう。」


ホドも頷き踵を返した。



4人が来れば戦えるかと思ったけれど少し考えが甘かったようだ。


それでも暫くすればかなりレベルを上げることはできる。

これから暫くはひたすらブルードラゴンを狩り続けよう。



キルとグラ達4人はその後ひたすらレベル上げを行った。


だが5日のあいだ狩り続けても4人は進化していなかった。

そして予定日にはまたパリスのクランホームに戻って行った。



1人残ったキルは5階層でブルードラゴン狩りを続ける。

王級精霊4体と一緒にブルードラゴンを一方的に攻撃した。


格上5人(1人と4体)相手ではブルードラゴンと言えども瞬殺だ。


レベル上げは同じ魔物の討伐の繰り返しになるのでだんだんマンネリになりやすい。

まして格下が相手だと消化ゲームのようでな感覚だ。


召喚した精霊が倒した魔物の討伐経験値も召喚したキルに入るので手を抜いて精霊に任せていても問題ない。


効率よく討伐経験値を稼ぐために精霊2体のパーティー2つとキル1人の3チームで同時に討伐して回まわれば3倍の経験値が稼げる事に気がついた。


キルの脳裏にはSランクより強い上級冒険者の事が浮かんでいた。

⭐︎が低くても⭐︎が高いものより努力次第では強くなれるのだと。


⭐︎の高い自分もそのくらい努力をしなければいけないな・・・と思うのだった。


キルは精霊を使って1日約300匹のブルードラゴンと4匹のレッドドラゴンを倒して約184800の討伐経験値を稼いでレベルは18480上げた。


この方法を思いつく前の5日間は1日約7700のレベルアップだったから2.4倍レベルアップが早い。


4人パーティーで同じペースの狩りをするのと比べれば10倍近くレベルアップが早い事になる。

ちょっとしたチートだ。


明日の昼前にはレスキューハンズのみんながまたダンジョンに来ているはずなので夕刻には合流できるはずだと思うキル。


ゼペック爺さんとクッキーに何事もなければ良いなあ…


キルを誘き出すためにゼペック爺さんやクッキーを捕えるような卑劣な真似は、まさかしないだろうなあ…と思うキルだった。

一抹の不安がよぎる。


翌日も1日レベル上げをしてから夕刻に第3階層に移動した。

レスキューハンズのみんなが予定通り野営の準備をしていた。

2日ぶりの合流で、教会と王家の手の者の様子はどうか教えてもらう。


モレノとルキアが寄って来た。

「あのね、キルさん。クッキーがお役人がとても怖いって言ってたよ。」

「そう言ってた。」


「怖いってどういうふうに?」


「ゴテを隠しているとお前達にも罪が及ぶぞ!って脅すんだって。」

「凄い剣幕なの。」


いやーな予感がする。ゼペック爺さんたち大丈夫だろうか。


「俺、出頭したほうがいいのかな?モレノはどう思う?」


「出頭なんかしちゃダメだよ。」

「ダメ!絶対ダメ!」


「俺なら捕まってもなんとか逃げられるような気がするし。」


「そんな事ない。捕まったらダメダメ危ないよ。」

「ダメ!絶対ダメ!」


「まあ、そうだよね。」


キルはゼペック爺さんとクッキーに申し訳ないと思うのだった。


グラがキルの肩に手をかけてキルを落ち着かせる。


「落ち着け。周りは監視されているが今に諦めるだろう。俺たちはいつもと変わらずダンジョンに通うだけだ。奴らはここまでは来られないしな。」


「大丈夫よ。またそのうち諦めていなくなるわよ。それまでレベル上げしてれば良いじゃない。」とサキ。


「ゼペックさんたち大丈夫ですかね?酷い目にあわされたりしないですよね?」


グラが眉間に皺を寄せて深く考えた。

「そこまで横暴とは、思いたくないが。貴族だの王族だのって奴は民の事なんて虫ケラ程にしか見ていないからな。」


クリスはそれを聞いて悲しそうに項垂れるだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る