176 変装と登録
朝食を済ませて皆んなでリオンに飛んで行く。
クッキーとゼペック爺さんも一緒だ。
2人ともフライのスキルスクロールを使ってフライは身につけている。
ホームの前からいきなり空に飛び始める。総勢15人での大移動である。
馬車で移動するより圧倒的に移動時間が短いし、風を切って飛ぶのが気持ち良い。
1時間ほど空を飛びリオンの街に着く。ここからは徒歩である。
リオンの街中を15人で歩くのはかなり人目を引く。
女の子達は服やアクセサリーや小物などを見て回りたい。
キルは仮面と新しい防具を買うのが目的だ。
キルは皆んなと別行動で必要なものを買い揃える。
キルが選んだのは兜に付属した防御力の高い仮面状の防具、顔全体を守り目と口に穴のある以外はなんの装飾もないノッペリとした仮面だ。
それと鎧は要所に金属を使った革鎧で肩から腕にかけては金属で覆っているかなり手の込んだものを選んだ。
あとは髪の毛を緑に染めるための顔料をてにいれた。
これを使って変装をするつもりだ。
名を変え、姿を変えこれからはスクロールは作っても生産者ギルドに売りに行くことはない。
冒険者ゴテとして生きていく事になる、いや、する。
スクロールを売れば足がつくので生活費は冒険者として稼ぐのだ。
もっとも働かなくても食ってはいけるのだが。
店で新しい防具を身につけて裏路地で髪を染め仮面をつける。
変身の完了だ。
クランのメンバーと合流するために女の子達の後を追った。
途中の喫茶店でゼペック爺さんとグラ、ロム、ホドがお茶を飲みながら休んでいたので女の子はこの近くにいるはずだ。
キルはゼペック爺さんのそばに寄っていった。
突然近づいてきた鉄仮面にゼペック爺さんは驚いて固まった。
グラが青い髪をかき分けて笑う。
「ゼペックさん、キル君ですよ。」
「ええ! キルさんじゃと。」
「ゼペックさん、俺ですよ、俺。」
キルがゼペックの耳元で小声でささやいた。
「本当にキルさんなんじゃね。全然わからんかった。」
「隣に座って良いですか?」
「良いぞえ。」
キルはゼペックの隣に座るとコーヒーを注文した。
「あ、飲みにくいな。」仮面をしたままコーヒーを口にしようとして仮面にコーヒーカップをぶつける。
仮面の口の部分が下にスライドする構造になっていてスライドすれば食べやすくなる構造なのに気づく。
「なるほど。こうやって口を開けてから飲み食いする訳ね。」
1人で納得しながらコーヒーを飲んだ。
「なかなかシンプルでかっこいいね。その仮面。」
グラが仮面をほめる。
「やっぱり不自由は不自由ですね。」
「きっと今になれると思うよ。」
頷くキル。
「それから、ゴテ君と呼ばないといけないんだよね。これからは。」
グラが皆んなに確認するようにそう言うと見回す。
「ゴテ・・・じゃな。」
ゼペック爺さんが呟いた。
女子達が買い物から帰ってくると、パリスの冒険者ギルドに登録をしに行く。
パリスまではまた編隊飛行だ。
パリスの冒険者ギルド、受付のケイトにグラが変更点とゴテの登録をお願いする。
「え〜。『天剣のキラメキ』が『レスキューハンズ』に入るんですね。なるほど。
それからそちらが新人さんですか?
ルクスブルクからの移動・・・と。」
ケイトがゴテ(キル)の冒険者証を見ながら手続きを進めた。
「ジョブは召喚士、元、Aランクパーティー『谷間の百合』、個人はBランクですか。
ドラゴンスレイヤーに・・・緑山泊討伐隊に参加ですか。
なかなかの経歴をお持ちですね。」
ケイトが感心しながら仮面のゴテ(キル)を見つめた。
正体がバレないか不安になるキルである。
「『谷間の百合』ってあの『谷間の百合』ですよね。Sランク冒険者ゴリアテと聖剣のシルキー。」ケイトがゴテ(キル)を見ながら驚いた顔をする。
どうやら『谷間の百合』はかなり名の知られたパーティーだったらしい。
「そして今度はグラさんに誘われたんですか・・・かなりの実力者のようですね。
パリス冒険者ギルドはあなたの移籍を歓迎しますよ。」
あっさりと認められた。
ニコニコと笑って誤魔化すグラとダンマリを決め込むゴテ(キル)。
「『レスキューハンズ』はAランクの格上げを検討しなければなりませんね・・・これは。」ケイトが独り言を呟いた。
「登録と変更はすみましたよ。」
ニッコリ微笑むケイト。
グラとゴテ(キル)とメンバー全員がケイトに会釈すると踵を返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます