170 黄燐山攻略戦
ギルドで集められた冒険者達は黄燐山に向かって行軍している。
結局キルはゴテの名で召喚士としてギルドに登録した。
この世界の身分証代わりにもなるギルドカード、はっきり言って身分証としてはザルだ。
名前がわかれば良いのだというレベルの品物だ。
200人集めるはずだって冒険者討伐隊は結局186人しか集まらなかった。
なので指揮官のシルキーも不満顔だ。
行軍中ゴリアテにガングルについて聞き出そうとした。
似た境遇かもしれない逃亡者の先輩ガングルについて知りたいと思ったのだ。
「ガングルさんって、どんな人だったのですか?」
「気になるかい?」
ゴリアテは空を見あげながら思い出すように語り出した。
「もう2年以上前のことかねえ。
狩りの帰りの馬車の中でガングルを見つけたのは。
一目で只者じゃあないのはわかったよ。
背にしている大剣も普通の大剣じゃあなかったしね。」
ゴリアテは顎を右手でさすりながら話を続けた。
「アタイのハートは燃え上がったねえ。アタイより強い男を見つけたと思ったよ。
でもね、アイツは上級剣士だったんだ。目を疑ったよ。
簡易鑑定スキルがおかしくなったかと思ったよ。
なのにアタイよりステータスが上回っていた。
何故だかわかるかい。
よく見てわかったよ。討伐経験値が圧倒的に高かったのさ。
討伐レベルが高ければその分ボーナスが付くだろう。
ギフトが⭐︎3で上級剣士でストップしていても討伐経験値が増え続ければ討伐レベルのボーナスもそれに応じて増え続ける。
ガングルの討伐レベルは15万もあったのさ。驚きだろう。
聖級剣士を上回るステータスを持つ上級剣士。
勿論追われる前の冒険者レベルはS級だったらしいけどね。
それがガングルさ。
知りたいと思って調べれば本当の名前も追われることになった事情もわかるだろう。
アチキは調べやしなかったがね。
奴はしばらく『谷間の百合』に在籍したが1月ほどで周りに不審な奴らが現れ出してね。
そしてアイツは出て行った。挨拶もなしにね。」
アレ?500対186なのにゴリアテより強いやつが向こうにいるってやばくないですか?
顔面蒼白で冷や汗を流すキルをゴリアテが笑ってはたき飛ばす。
「大丈夫だよお。ステータスだけで強さは測れないし、多分ガングルはすぐに緑光山に逃げるだろうよ。アタイらと戦いたくないからね。そういう男さ。」
黄燐山が目の前に大きな姿を表して、周囲の森の中に盗賊たちの気配がチラホラと散在する。斥候だろうか?
冒険者軍は構わず黄燐山に向けて直進した。
眼前の黄燐山から盗賊達が大挙して降りてくるのが見える。
そして黄燐山の手前の平地で両軍が対峙する形になった。
盗賊軍500対冒険者軍186。
3倍近い相手であるがこちらは上級戦闘職に参加者が絞られている。
盗賊達は非戦闘職でそれも初級中級がほとんどの数だけが頼りの集まりだ。
中心メンバーは極端に強いものも混じっているがそれは10人に満たない。
噂に聞く盗賊達のリーダーは、元王国軍槍使い隊師範特級槍使いピンチュン、ライガー瞬殺の特級拳闘士シン、そして謎の大剣使いガングルの3巨頭だ。
500人の盗賊達を背に3人が前に出た。
こちらからはゴリアテとシルキー、プリンが前に出ている。すぐ後ろにキルとマリ、リカ、スバルもいた。
「冒険者達よ。俺たちは討伐されるような悪さはしてはいない。戦わずに引き返して欲しい。」
槍使いのピンチュンが槍を振り回して格好をつけてから大声で行った。
ドヤ!この槍捌き、すごいんやで〜てなものである。
確かに元王国軍槍使い隊師範である。めっちゃカッコ良い。
冒険者軍がざわつく。
シルキーが前に出て大声で答えた。
「我々は黄燐山の攻略の依頼を受けている。盗賊の命を取るところまでは依頼には入らん!見逃してやるから砦を捨てて緑光山にでも逃げていけ、さもなくばこの聖剣ルクスカリバーンの光の中に消えることになるぞ。」
シルキーが聖剣ルクスカリバーンを天にかざして見せると盗賊達からドヨメキが起きた。
拳闘士のシンが前に出て、大声でシルキーをこき下ろす。
「剣がいくら凄くても使うものが大したことなければ恐るに足りんわ!このライガー殺しのシンがその剣叩き落としてくれるわ!」
盗賊達から歓声が上がる。
ゴリアテが前にずいと進み出て怒鳴った。
「アタイらの腕がどうのとはしゃらくさい。
アタイは聖級剣士のゴリアテだ!アタイと一騎討ちで勝負をつけようぜ!
勝てると思う奴は前に出てきて戦いやがれ!
アタイに勝てたらアタイの身体、好きに抱かせてやるぜ、
腕に自信の有る奴は、さあきやがれ!
さあ!アチキに勝てる奴はいないか!」
盗賊達にどよめきが起こる。
盗賊幹部達が譲り合いをしているように見える。
「さあ!やるか!」
ゴリアテが怒鳴る。
「退け〜!全軍退去〜!」
ピンチュンの退却の怒声が響き盗賊軍が緑光山をめざして逃げ出した。
「アタイに恐れをなして逃げ出したか! さあ、黄燐山を占領するぞ〜。」
冒険者軍は戦うこともなく黄燐山を占領したのであった。
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