165 ゴリアテと『谷間の百合』 3
ギルドに行っていたマリとリカが戻って来た。
「マリ、リカ、どうだった?」
シルキーが細い目を細めて2人を見た、
「この前と同じですね。新しくわかった事はありません。
ドラゴンが飛んだとか火を吐いたとか、そういう具体的な情報はないようです。」
マリが答えた。
ゴリアテ姐さんは腰に両手を当ててシルキーを見る。
「現地に行って調べるしかなさそうだね。」
「アンタが行ったらその場でたたかいだすだろう。」
とプリンがゴリアテをからかった。
「確かにそうかも。アチキは面倒臭いのが嫌いさあね。」
ゴリアテがニンマリ笑ってプリンの言葉を肯定した。
「プリン、ここは全員で現地に向かおうじゃないか。」
シルキーが言った。
「はーい。リーダー。行きますよ。ところでコイツはどうするんですか?」
プリンがキルのことを指差した。
「連れていく。」
「ゴテは強いよ。アタイの目に狂いはないんだから。」
ゴリアテは得意げだ。
プリンが一瞬キルを見てすぐに顔を背けた。
何か気にくわない事が有るらしいが気にしても仕方がないと思うキルである。
さっき、はっきり言いすぎたからだろうか。
「明日、スプラート山にドラゴン討伐に向かう。初めは現地で情報を集めるよ。わかったね。」
リーダーのシルキーが言った。
「「「了解!」」」
全員の声がそろった。
翌日、スプラート山近辺で聴き込みをおこなってドラゴンの目撃情報を集め、おおよその目撃領域を把握した。
目撃情報から大きな翼を持っていた事がわかり鎧竜ではない事が判明する。
ドラゴンの体色は緑だったことからグリーンドラゴンの可能性が高まった。
グリーンドラゴンは小型の飛竜で毒ブレスを吐くAランク相当の魔物である。
鎧竜なみと考えて良いだろう。
「目撃情報からグリーンドラゴンの可能性が高い。強さは特級冒険者と互角。
全員でかかれば倒す事はたやすいだろう。マリ、リカ、スバルは十分気をつけて戦いに臨むように。」シルキーが全員を見渡す。
『谷間の百合』はドラゴン発見のために山間部に足を進めた。
「あっちだね。」
キルが索敵でグリーンドラゴンらしき気配を捕えるとほぼ同時にゴリアテが指をさした。
ゴリアテの指さす方向にしばらく進むと大きな穴を見つけた。
「この中だ。」
ゴリアテが敵が近いとシルキーに目配せをした。
「空に逃げられると厄介だ。この中で戦おう。」
「毒ブレスはどうするんだい?逃げ場が少ないよ。」
「私が炎魔法で相殺する。」
「プリンがしくじってもシルキーの神聖魔法で何とかなるか?」
ゴリアテがプリンを見る。
「私はしくじらないよ。毎度失礼ね。」
「アンタら毎度戯れてるんじゃない。そろそろ行くよ。」
シルキーは呆れ顔だ。
プリンがキルを見てニヤリと笑う。
「ゴリアテ自慢のゴテ様は戦ってくれるんだろうね?強いらしいんだって。」
とばっちりは迷惑だ。
「皆さんの獲物や経験値を横取りしては良くないんじゃないですか?」
キルはやんわりと断ろうとする。
「アタイはゴテの実力を見てみたいな。」
ゴリアテはワクワク顔だ。
ゴテじゃないです。勝手に名前を決めないで。
シルキーもキルを見つめて目をほそめる。
「できれば私も手伝ってほしいと思っているよ。ゴテ。」
「フー。」
キルは大きくため息をついてから聖級精霊4体を召喚した。
キルの周りに聖級精霊たちがあらわれる。
いつの間にかキルの手にはミスリルの剣が輝いている。
「召喚士!」
シルキーが驚きの声で続ける。
「しかも4体同時、この大きさは聖級精霊?」
驚く5人を横目に驚きながらもドヤ顔のゴリアテ。
「これじゃあ、アタイらの出る幕はないね。」
精霊を見上げる。
聖級精霊4体に対して特級のドラゴン1体では相手になるはずがない。
ゴリアテの言う通りだ。
顔を見合わせる『谷間の百合』のメンバー。
「ゴホン!」
咳払いをしてシルキーがキルに言った。
「参戦しないで見ててくれれば良いです。」
キルは精霊達を送り返した。
ゴリアテはキルの剣を見て顎をなでる。
「それがアンタの本当の相棒かい。良い剣だね。」
「剣の実力も相当なのがわかるよ。」
シルキーもキルの剣を見て苦笑した。
「聖級精霊なんて凄いものを見たわ。」
プリンはキルを憧れの目で見ていた。
マリ、リカ、スバルは腰を抜かしていた。
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