164 ゴリアテと『谷間の百合』 2
「シルキー、ゴテは今までに鎧竜、ブルードラゴン、レッドドラゴンの討伐経験が有るらしい。」
「何だって! そいつはありがたいね。」
身を乗り出すシルキー。
「ゴテの言うには、鎧竜ならアタイ1人で倒せるけどレッドドラゴンは全員でもダメだってよ。」
「なるほどね。ブルードラゴンだとどうなんだい?」
シルキーがキルの顔を見つめた。
「多分勝てると思いますよ。ただ上級冒険者は気をつけないと命の危険も有ります。」
マリとリカ、スバルが顔を見合わせる。
「攻撃もあまり効きませんしね、なんなら3人で戦った方が安心かもしれませんね。」
「ゴテも入れて4人だろう。」とゴリアテ姐さんがキルを睨む。
「あ〜。俺とゴリアテさんなら余裕で勝てますよ。」
その一言に5人がキルをキッと睨みつけた。
「すみません。基礎ステータスが聖級と特級では雲泥の差なんで。」
ゴテ(キル)は聖級の冒険者だとわかりまた5人が顔を見合わせる。
「コイツはアタイより強いと思うよ。」と聖級のゴリアテが捕捉した。
「ブルードラゴンは聖級冒険者と互角です。ですから聖級冒険者が2人で戦えばまず勝てるでしょう。」
「特級上級は足手纏いなのかい。」
「特級はそれほどでもないでしょうが、上級は足手纏いでしょうね。上級だと一撃で即死に成りかねない。それを気にしながら戦わなくてはならないとしたら、、、。命が掛かっている事なので正直に言ってしまってすみません。」
「気に食わないけれど、忌憚のない意見が聞けてありがたかったよ。
まずは敵が何なのかを調べる事からだね。」
「鎧竜なら良い経験になるでしょうから、上級でも戦いに加わった方が良いですね。
ブルードラゴンだったら、遠くで見ていてもらった方が良いと思います。だから全員で現地まで行くのは問題ないと思いますよ。」
「まずはギルドに上がっている情報を確認しよう。
何ドラゴンだかわかっていれば対応がしやすいからねえ。」
シルキーがギルドに行って今わかっている情報を確かめる事を提案した。
「すみませんが俺は此処に隠れさせてもらいたいので、ギルドに行くのはちょっと。」
キルは目立ちたく無いのでギルドに顔を出したくないのだ。
「良いよ。アンタは此処で待ってな。」とゴリアテが言った。
「私たちが、ギルドで情報を確認して来ます。」
マリとリカがそう言って出て行った。
「アンタ此処で、別人にならないかい?ゴテていう良い名前もついた事だしさ。
今までの人生を捨てて新たな旅立ちってのもオツなものさ。」
「そんなことができるのか?」
「近くの村から冒険者になりに来たって言ってギルドで登録してしまえば新しい身分証ができちまうだろう。簡単さあ!」
キルがしばらく考え込んで答えを出す。
「でも俺は、3ヵ月したら地元に戻りたいんだ。」
「へ〜〜。地元に戻れるのかい。そいつは良かったねえ。」
「わかりませんけれどね。」
「本当に大丈夫なのかい?此処にいた方が安全なんじゃないかい?」
「たぶん、ギルドに出入りしなければ大丈夫です。」
「フーン。 それで不便じゃないのかねえ。」
ゴリアテが顎に手を当て不審そうな顔をする。
「はは・・・・。平気ですよ。」
俯きながら答えるキル。
「心配だねえ。じゃあその時は、アタイが付いていってやろうじゃないか。」
ゴリアテが顎に手を当てながらニンマリしている。
驚いて顔を上げゴリアテを見るキル。
「だだだ、大丈夫です。1人で。」
「心配するなよ。アタイは強い男が好きなんだよ。嫁に行くなら自分より強い男って決めてるんだ。言わなかったか?」
ドヤ顔のゴリアテ。
聞いてないよ〜と思うキル。
「アンタ童貞だろう。14歳か〜。良いねえ。アタイは歳下でも構わないんだけどさあ。
どうだい。やるか?」
ニッコリ微笑むゴリアテ。
怖いんですけど。
良い人の様な気もするんだけれど、それだけは勘弁である。
やはり好きな女の子とでないと無理・・・・と思うキル。
「いえ・・・・。お断りしますう?」
あやふやにいいながら横を向くキル。
「何照れてんだい!」
キルの肩をたたくゴリアテ。
軽くたたいてるつもりなんでしょうけど、とても痛いんですけど〜、ゴリアテさん。
「ははは。冗談だよ。冗談。」
笑うゴリアテ。
ほっと背を丸めるキルであった。
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