158 天剣のキラメキとレスキューハンズ  7

第5階層の狩りを3時間程度で切り上げて4階層にに戻ってきた5人はそのまま夕刻まで第4階層で狩りを続けてから3階層のレスキューハンズの8人と合流した。


今晩野営して明日はダンジョンをさる予定でだ。

つまり、狩りは帰りの道で出会った魔物の他はあえて狩ることはしない。

そしてパリスに帰るのだ。


キル達の野営地ではもう女子達のお喋りが始まっていた。

サキを取り囲みワイワイキャラキャラと盛り上がっている。


時々「えー」とか「ウソー」とか「信じられなーーーイ」とか聞こえてきていつもと違う盛り上がりを見せていた。


時々女子達の視線がキルに向けられるような気がするのは気のせいだろうか?

なぜか時々サキさんが顔を赤らめて頬を両手で包んでいたりするぞ。


近寄らない方が良いなと思うキルは余ったMPでストレージ内スクロール作成をしてMPを空にする。

MPの有効利用はキルの生活習慣として根付いている。

5時間の睡眠で完全回復する前にMPをからにするのだ。


さて寝よう寝よう。サッサと眠りにつくキルであった。



翌朝パーティーはパリスに向けて動き出した。


3層から先はレスキューハンズのメンバーが現れる魔物を狩りながら進んだ。

そしてダンジョンから外に出てからは空を飛んでパリスに戻った。


途中次のフクラダンジョン行きにも参加させてくれとの要請を受けて二つ返事でokをする。何ならこのままクランに勧誘したいくらいだ。


聖級冒険者4人にクランに入ってくれなんて虫の良い話かもしれないがダンジョンに一緒に行きたいだなんてクランに入ってもらえる目が全く無いとも言えないかも?なんて思ったりする。


まあ、借金が返し終わるまで同行しようと思っているのだろうと考えるのが妥当なところか。


そうこうしているうちにパリスについて天剣の4人にクランのホームに宿泊してくれる様にお願いした。


部屋は余っていたし暫く一緒にダンジョンに通いそうだから待ち合わせの手間がなくなる。


グラも喜んでその提案を受け入れてくれた。

女子達はサキさんと一緒にいれることが嬉しそうだ。


そしてキルは生産者ギルドにスクロールを売りに行った。



生産者ギルドがいつもと違った緊張感に包まれているような気がしたキル。

オッサンがキルに奥の部屋に来る様に指示をする。

呼ばれるのはいつものことだが、今日に限ってオッサンの表情が固い。

何かあったのだろうか?


奥の部屋でオッサンがキルによってきて耳打ちをする。

「教会の者と、王家の使いがお前の事を調べにきたぞ。」


キルは驚いて聞き返した。

「それって、どういう事ですか?」


オッサンが小さな声で耳打ちする。

「お前、王家に連れて行かれるかもしれないな。スクロール作りを独占したいんじゃないかな?教会も同じだ。」


キルは背中に冷たいものが走った。


「名前は教えたがそれ以外は知らないと言っておいたから此処にはもう来るな。それから身辺には気をつけろよ。誘拐なんて事はないだろうが、王家の使いについて行くと帰って来れないかもしれないぞ。いい扱いを受けるかもしれないしそうでないかもしれない。とにかく王都に連れて行かれてそこで飼い殺しは間違いないだろう。」


「、、、、」


「お前のスクロールはそれほど独占したくなるものだからな。国のお抱えにしたくなったのだろうけれど、、、どういう待遇になるのかな。無理矢理捕えて拘束するなんて事はないと思うけどなあ。いい待遇で雇いたいって言ってくるだろうが、作ったスクロールは安く買い上げられてしまうことになるんだろうな。」


「、、、どうしよう。」


「俺なら逃げるけどな。自由が無くなるからな。」



「逃げるって言っても、、、、。」


「考えてみろ、お前のスクロールが他国に流出したとして王やその側近はお前をどうしたいと思うか?」


「活動停止、、、させたい。」


「王国内で流通している内はまだ良いが、教会を通じて宗教国家スタインブルクに流出しているとなると話は違うぞ。本来王家だけで独占したいだろうからな。」


「はい、、、。」


「それにもっとヤバいのは教会から来た奴らだ。間違いなくスタインブルクに連れて行かれると思う。」


「それって拉致監禁ですかね。」


「なんだかんだ甘い言葉で誘ってダメなら拉致監禁だろうな。知らんけど。」


「知らんけど、、、。 でもそう思いますよね。」


「誰でもそう思うだろう。俺としちゃ〜、前回が最後でそれ以来売りに来てないって事で通すから、お前はこのまま帰って身の振り方を考えるんだな。」


「わかりました。蝋皮紙だけ買って行って良いですか?」


「良いけど何で今更売れないスクロールを作るんだよ。」


「作らないと職人レベルが上げられないので、、、。」


「そうかあるだけ買って行っても良いぞ。2万枚用意してやる。」


「ありがとうございます。全部買わせて下さい。」


キルは蝋皮紙を買ってクランのホームに帰るのだった。

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