151 ラザップ工房

地図を頼りにラザップ工房を探すキル。


どんどん街のはずれに足を踏み入れていく。


こんなところでいいのかなあ?

そう思いながら地図を睨むキル。


周りからいかがわしそうな男達がキルを睨んでいる。

キルもその視線に気づいて警戒を怠らない。


こういうところでは追い剥ぎや引ったくりなんて日常茶飯事に違いない。


地図通りならあそこかもしれない?

鄙びた工房が目に入った。


剣を鍛える金槌の音など一つも聞こえて来ない。

ここで本当に良いのだろうか?


恐る恐る工房の戸を開けて中に入るキル。

「いらっしゃいませ〜。」


明るい声がして奥から小さな女の子が現れた。

10歳くらいだろうか?


「あの〜、これ。」


キルはギルマスから渡された手紙を少女に渡した。


少女は手紙に目を通すと軽く会釈をして奥に入って行った。


そして老人に肩を貸しながら2人で現れた。


老人が口を開く。

「紹介状は読んだ。剣を見繕ってくれと書いてある。」


老人はそう言うと真っ白く太く垂れ下がった眉毛の奥の小さな目でキルを見据えた。


「フーーーン。人は見かけによらんのう。此奴にミスリルの剣を見繕ってくれと言うのか。使いこなせるのか?」


小声でブツブツと文句を言いながら少女に耳打ちをした。

聴こえてますけど、、、、。


少女が剣を取りに行ってミスリルの剣をキルに渡した。


良い剣だとキルは思った。


「その剣に魔力を流して見せてくれ。できる限り多くの魔力じゃ。」


老人にそう言われてキルが剣に魔力を流し始めた。


剣が眩いばかりの光を放つ。


「もう良い。もう良い。」

老人が急いで魔力を流し始めたキルを止める。

キルはまだ魔力を充分に込め終わっていなかった。


キルは魔力を流すのをやめて言った。

「まだ少ししか流してないですよ。」


「判っておる。驚いたの、、、」

ブツブツ言いながら老人は少女に耳打ちをした。


少女がまた剣を取りに行き今度はさっきより美しい剣を持ってきてキルに渡した。


「魔力を流してみろ。」


再び老人が言う。キルは言われた通り魔力を流した。


剣が眩いばかりの光りを放つ。


さっきより魔力が素直に吸い込まれていくような気がした。


「それなら良いじゃろう。魔力は無駄に沢山流さんでも充分に切れると思う。流し過ぎに注意して使ってくれ。2億カーネルじゃ。買っていくか?」


剣が2億カーネルとは驚いたが握っている剣にその価値があるのはなんとなく頷けた。

恐らくギルマスの剣より高性能だ。


キルはストレージから金塊を2つ出して少女に渡した。


少女はニッコリと笑って

「毎度あり。また来てください。」

と言った。


キルは手にした剣をじっと見つめる。


「もう一本この剣が欲しいんですけれど。  有りませんか?」


「なんじゃと。もう一本じゃと?」


「はい。これほどの剣は何本でも欲しいです。」


「そうか、、、、、、良いじゃろう。」

老人が少女に顎で指示をする。


少女が剣を取りに行った。


もう一本の剣を確かめるキル。

これも素晴らしい剣だった。

鞘や翼などに派手な装飾はされていないが刀身がピカイチなのだ。


飾り気のないミスリル製の名剣だ。

魔力の流れが抜群で強度も申し分なさそうである。


「2億じゃ」


キルがまた金塊2つを少女に渡した。そして今度は2本の剣をストレージにしまった。


外に出た時に剣を買った事が周囲の人間にバレないようにする為である。


そうしてキルは会釈をすると工房を出て行った。




店を出て、良い買い物をしたと思うキルである。

今度また世話になるかもしれないな、、、、という予感がした。


周囲はもう日が暮れかかったいた。

周りからいかがわしい男達がキルを取り囲むように近づいてきた。


あ〜〜。やっぱりコイツら追い剥ぎか。と思うキルである。

くる時からそう言う気配は感じていたのだ。


「お兄ちゃん。あの店にはどんな用があったんだい?」

痩せこけた男が聞いてきた。


「手紙を届けにきただけですよ。」


「剣は持っていないようだけれど買いに来たわけじゃあないのかい?」


「金持ってるならおとなしくだしな!」

別の男が怒鳴りつける。


「ヤダな。勘弁してくださいよ。手紙を届けにきただけですよ使いっぱしりですよ。」


「うるせー」

殴りかかってきた男の脇をすり抜けてキルは全速、、でもないがあっという間に逃げおおせるのであった。




あーヤダヤダ。

絶対襲われると思ってたよ。

殴り倒すのは簡単だけど可哀想だからな。


それにしても良い剣が手に入った。

良い工房を紹介してくれたな。

ギルマスに感謝しなくては。


そんなことを思いつつキルはホームへの道を歩いて行った。

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