143 天剣のキラメキとキル 1
「また彼に会えるね。」
青い瞳、色白の肌に青い髪を靡かせて喜びを隠さずグラは言った。
「まあ・・・グラったら、そんなにあの子がお気に入りなの?」
そう言う赤眼赤髪の魔術師のサキもキルに会えるのを楽しみにしているようだ。
「ワシも楽しみじゃ。」
茶眼茶髪の185を超えるゴリゴリのゴリマッチョが大楯をズンと地面に突きつけて言った。ロムである。
そしてその3人を涼しげな眼差しで見つめる黒髪の剣士ホドの4人が天剣のキラメキのメンバーである。
彼らはこの前キルから⭐︎4のジョブスクロールを買って全員が特級に進化していた。
特級4人のパーティーなどと言うものはなかなか揃うものではない。
おそらくこの国でも最強のパーティーと言えるのではないだろうか。
「ワシらも彼のおかげでかなり強くなったからのう。実力の程を見せてやりたいものじゃな。」
「俺が金を貸してやったおかげとは違うのかい?」
「そうじゃった。グラのおかげじゃよ。間違いなくグラのお陰じゃ。」
それを聞いて笑いながら答えるグラ。
「キル君のお陰で間違いないさ。彼が居なければスクロールを買って進化しようなんて考えつかなかったからね。」
「お金はすぐに返すわよ。何せ稼ぎもグンと増えたんだからね。」とサキが言った。
「その通りじゃ。強くなったお陰で狩りがスムーズに進むからのう。ありがたやありがたや。」とロム。
ホドはそのやり取りを聞きながら涼しい顔で3人を見ている。その口角にニヤリとした笑いを浮かべながら。元々この男はあまり喋る方ではないのだった。
4人の元にキルがやって来たのはそんな時であった。
「遅れてすみません。待たせてしまったみたいですね。」
「イヤ、そんな事はないよ。遅れた訳ではないさ。俺たちが少し早く着いたのさ。」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると助かります。今回は俺を指名してくださったそうで、恐縮です。俺なんかでお役に立てるかどうか?ストレージの中に暖かいスープやシチューを入れて来たのでそれだけはお役に立てると思います。」
「それで十分じゃ!イヤ、それが何よりじゃぞ。キル殿。」
ロムは美味しい食事が食べられると思うと上機嫌になっている。
「ありがとうございます。ロムさん、そう言って貰えると気が楽です。今日はダンジョンの調査でよろしいんすか?」
「そうだよキル君。君が見つけたらしいね。」
「ハイ。そうなんですがリザードマンが漏れ出ているようでして、俺は逃げ帰って来た次第です。」
「そう言えば私たちの前に調査隊を送ったそうよ。戻って来ないって聞いてるわ。」
「リザードマンが相手だとC級B級冒険者には荷が重いかもな」
「B級パーティーならなんとかなるじゃろう。」
「1匹相手ならね。数匹1度に来られたら敵わないわね。」
「溢れていたと言う事は中にはうじゃうじゃいると言うことかな?」
「そうですよ。索敵でわかりました。」
「うーむ、かなり難易度の高いクエストじゃのう。」
「リザードマン単体だとサイクロプスより強いかしら?」
「やや強いかもね。」
「リザードマンの魔石はサイクロプスの魔石より上ですね。多分⭐︎3レベル、上級冒険者レベルですね。」
「キル君は魔石のランクで強さを測るんだね。それはスクロール職人だからかな。」
笑いながらグラが言った。
「まあ、そうですね。ちなみにサイクロプスは⭐︎2レベル。中級冒険者レベルです。サイクロンサイクロプスは⭐︎4特級冒険者レベルです。」
「なるほどのう。確かに魔石のランクで解るのかものう。ある程度。」
「たくさん魔石をゲットしましょう。できたらギルド価格で俺に引き取らせて貰えるとありがたいですね。」
「あはは、勿論それで構わないよ。」
「それでは1つ25万カーネルで引き取らせて頂きます。」
「魔石の1/5はキル君、残りは天剣の取り分で良いかな。」
「それでお願いします。」
「よし、それでは現地に移動しよう。近くまでは馬に乗って行くけれど良いかな。」
「俺はゆっくり飛行してある行きますので後をついて来てください。」
4人は馬に跨るとキルはフライで上空に浮上がった。
「凄いな。それもスクロールでできるようになるのか?」
「なりますよ。10万カーネルです。安いでしょう。」
「リザードマンの魔石と比べれば安いわね。欲しいわ。」
「在庫有りますよ。いかがでしょう。」
「ダンジョン内では使うことも無かろう。このクエストが終わってからで良いんじゃないか。その時は4人で買っても良いだろう。」グラが言ったので皆んな頷いた。
やったね。キルはスクロールが売れて嬉しかった。スクロールの価値を認めてくれるのは職人として嬉しいのだ。
そうして5人は森の入り口まで馬とフライでやって来たのだった。そして徒歩でダンジョンに向かう。途中リザードマンと遭遇するかもしれないので索敵を怠らずに進むのだった。
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