142 天剣のキラメキの指名

キルは冒険者ギルドに呼ばれたので行ってみるとケイトさんが奥の部屋に入るように指示をした。


キルは奥の部屋に行くとギルドマスターが待っていた。ここはギルマスの部屋だったのを思い出す。


「キル君だね。」

ギルドマスターのゼノが言った。


「お呼びだそうですが、何か?」

キルがギルマスに聞く。


「実はこの前調査してもらったのを覚えているかな。」


「ああ、はい、サイクロプスの出どころを調べたら、ダンジョンらしき物を見つけたやつですね。」



「ああ、そのダンジョンらしき物は、やはりダンジョンだったよ。しかもまだ中から魔物が湧いて出てきている。」


「リザードマンがですか?」

あの時周りに何匹かのリザードマンを見つけてそれも報告したっけな・・とキルは思い出した。


「リザードが湧いて出てきているようだな。あの後他のBランクの冒険者パーティーにダンジョンの調査を依頼したんだが帰ってこなくてな。そこで天剣のキラメキに依頼を出したんだが君を一緒に連れて行きたいそうだ。指名依頼を受けてくれるよな。」


よりにもよってとても危険な依頼だなあと思うキル。

しかし指名依頼を断るのはギルドとの関係上あまり望ましくはない。

「はい。わかりました。」


キルは渋々返事をする。何かイヤ〜な予感がする。

リザードマンが湧いてくる穴に入って行くって、、どうよ。


仕方がないさ・・・と自分を納得させた。


「その前に武器を買わないといけないんですけれど時間はありますか?」


「武器がどうかしたのかね?」


キルは自分の剣をゼノに見せた。


「この通りボロボロでして、買ったばかりなんですが強い魔物相手ではもっと良い材料の剣でないともたないみたいなんですよ。」


「ふむ。確かに、、、リザードマン相手でも良い剣は必要だな。」

ゼノは顎に手を当てて考えながらしばらくして自分の剣を抜いてみせた。


ギラリと輝く凄い剣だった。

「これはミスリルの剣だ。魔力を込めると剣の強度も切れ味も跳ね上がる使い手を選ぶ剣だが・・・・使えるかね?」


キルはゼノから剣を受け取ると魔力を込めて見る。

剣がさっきよりも強い光を放ちギッラギラに輝いた。


「ほーー、流石は天剣のキラメキから指名されるわけだな。その剣を貸してやる。必ず返せよ。」


「生きて戻れたら必ず返します・・・が・・・。」


「仕方ない。依頼料としてくれてやるから持っていけ。」


「良いんですか?」

なんという太っ腹だろう。さすがギルマス。


「死ぬなよ。剣を折ってしまっても良いから生きて帰ってこい。」


「ハイ。がんばります。」

ギルマス優しい。惚れそうである。


そう言うとキルは踵を返して部屋を出た。


ケイトが明日の朝ギルド前に集合だと教えてくれた。




ホームに帰るとメンバーが事情を聞きにキルを囲む。


「なんのようだったんすか?キル先輩。」

ケーナが不躾に聞いてくる。

周りでメンバー全員が興味深々と言う顔だった。


「昇格・・・てことはなさそうですよね。」

とエリスが聞く。


クリスはキルの持ってきた剣が気になっているようでじっと剣を見ている。


「明日指名依頼を受ける事になった。何日かかるかわからないから次のダンジョン遠征は俺なしで行ってきてくれ。」

キルがそう言うとみんなが失望の声を発した。


「えーーー。キルさん来れないの〜〜。」

「またですか〜〜。」

「ヤダ〜。」


みんなが駄々をこね終わってから最後にクリスが口を開いた。

「その剣は・・・どうしたのですか?」


キルはクリスの問いに答える。

「この剣はギルマスの剣なんだが、良い剣が必要だと言ったらくれた。初めは貸すから返せって言ってたんだが死んだらかえせないと答えたらやるから生きてかえってこいだとさ。」


「「「おーーーー」」」

「ギルマス男前っすね!」

と声が上がる。


かなり高価な剣であることは皆んな一目見てわかったようである。


「その剣、ミスリルでは有りませんの?」

とクリス。


「そうだな。」

キルは答えながら剣を抜いてみせた。


「「「おーー」」」

またひときは大きな声が上がった。


「生きて帰って来たらちゃんと返すつもりだけれどな。」

とキル。


「生きて帰って来たらってーーそんなに危ないんですかーー?」

マリカが真顔で聞いた。


「天剣のキラメキが依頼されたんだが俺を助っ人に指名したらしい。確かに天剣のキラメキでも不安を覚える依頼だと思うよ。」


「そんなに・・・ですか。」エリスが驚く。

メンバー全員が静まり返った。



「なので、俺にもしものことがあったらこのクランのリーダーはケーナががやってくれ。サブリーダーはクリス。2人とも頼んだぞ。」


「そんな!」とクリス。

「大丈夫っすよね。先輩!」とケーナ。


ケーナとクリスの顔が青ざめた。


「俺も死ぬつもりはないよ。危なそうなら引き上げて来るさ。」


「何処に行くんですか?」モレノが聞いた。そういえば何処に行くかも話していなかった気がする。


「サイクロプスが出て来たと思われるダンジョンだ。この前の指名依頼の時に俺が見つけて報告した穴だ。周りにリザードマンが漏れ出ていたな。」


キルの答えを聞いて全員が静かになった。


「大丈夫だ。適当に切り上げて帰って来るから。第一階層位をクリアすれば取り敢えず良しとして良いだろう。天剣のキラメキが主力だからキット大丈夫だよ。」


言っているキルに余裕は無かった。

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