128 ウルテッド森林   5

サイクロンサイクロプスは繋がった右腕をぐるぐると回し、その動き具合が以前と変わらないことを確かめる。


そしてキルを睨み口の端を釣り上げるのだった。


来る、、というキルの直感はすぐに現実のものとなりサイクロンサイクロプスの怒涛の猛攻がキルを襲う。

サイクロンサイクロプスは右手の大斧をまるでオモチャの様に軽々と物凄い速さで振り回し続ける。


キルはその連続攻撃を剣で受ける事もなく見切りだけでかわし続けた。

剣で受ければその剣が折れてしまうのは明らかだからである。


サイクロプスの攻撃を交わしながらも、キルは一瞬の隙をつき中級魔法アイスマシンガンで反撃をした。

魔法攻撃をまともに喰らって傷つくサイクロンサイクロプス。

だがその傷跡は見る見るうちに治っていく。

サイクロンサイクロプスは攻撃の手を緩める事も無く狂った様に連続で大斧を振い続ける。

一度でもその攻撃を喰らえば即死するに違いない。

避け続けるキルの額に冷や汗が流れる。


キル達の攻防の周りでは冒険者達がサイクロプスを撃退し続けその掃討にほぼ成功していた。

そしてキル達の戦いを息を呑んで見つめながらもキルの援護に割って入る事もできず距離をとって遠巻きに隙を伺うののみであった。

下手に攻撃を受ければ受けた剣ごと大斧によって真っ二つにされるに違いない。

そんな死線に踏み込むことは容易にできることではないのだ。


遠距離攻撃ですらキルの動きを妨げて、キルがサイクロンサイクロプスの攻撃を喰らわない様に狙うのはなかなかにハードルが高い事であった。

そんな事ができるのは詠唱省略で瞬時に魔法を発動できるクリスとオートターゲットを持つ弓使いのケーナくらいのものだろうが、その彼女達ですら攻撃のタイミングを掴めずにいた。


サイクロンサイクロプスの大斧の攻撃を回避しつつキルが思い切って斧の内側サイクロプスの懐に踏み込んでいく。


乱舞水流剣、キルは踊る様に回転しながら大斧を交わし身体はサイクロプスの肘あたりまで踏み入るとその腕を切り飛ばし、さらに回転しながら流れる様に脇腹を切り裂きいて通り過ぎてゆく。


大斧と右腕が飛んでいきサイクロンサイクロプスの脇腹からは血飛沫が飛び散る。


サイクロプスの後方にキルが通り抜けたその刹那、クリスとケーナが待っていたとばかりに攻撃を加えた。ケーナの3連爆射、クリスのサンダーボルトがサイクロプスに炸裂する。


続け様にエリス、ユリア、ユミカ、マリカ、ルキア、モレノも遠距離攻撃を放つ。

爆発して切り刻まれるサイクロンサイクロプス。

だが傷ついたそのすぐその時から回復が始まっている。


グラは切り飛ばされたサイクロンサイクロプスの腕と大斧を回収する事を指示して、冒険者達はその腕がサイクロンサイクロプスに取り返されない様に持って逃げ出した。

腕をつなげられない様にするためで有る。


「ギャオエーー!」爆発の中で叫ぶサイクロンサイクロプス、もう大斧の攻撃をする事はできなくなった。


そしてその隙にキルは特級精霊を召喚する。土、風、水の3匹の特級精霊が片腕のサイクロンサイクロプスを取り囲んだ。


三方向からロックバレット、エアカッター、水刃での攻撃がサイクロンサイクロプスに降り注ぐ。


特級精霊の火力は大きく三方向からの集中攻撃はサイクロンサイクロプスの回復力を上回りその身体は削られ続け最後には粉々のミンチとなって消失した。最後に残ったのは魔石だけである。


だがまだ戦いは終わっていなかった。


地に落ちた魔石に向かってミンチになった血肉がズルズルと寄って来てまた身体を再構成しようとしていた。


キルはサイクロンサイクロプスの魔石にトドメの一撃を加える。


兜割り、大上段から振り下ろすその剣撃によって魔石は真っ二つに切り離される。

そしてサイクロプスの粉々の血肉の動きが止まりだらりとした残渣となった。


周り中から歓声が上がる。

「やったーーーー」

「やほーー!」

「遂に倒したぞ!」


キルは静かにサイクロンサイクロプスの魔石を拾った。


「やったな!」

グラは軽くキルの方に手をかける。


「はい。なんとか倒せましたね。」

キルは手に持つ魔石をグラに渡そうとする。


「そいつはキル君のものだよ。君が倒したんだからな。」

グラは渡そうとしたキルの手を押し留めてそう言った。


「倒した魔物の素材は回収して冒険者の手当てに当てられるわけだが、自分達の狩ったぶんをしっかり請求して良いんだぞ。だからその魔石はお前の物だ。」


キルはサイクロンサイクロプスの魔石をストレージに収納し、グラと握手を交わす。


周りでは冒険者達が自分達の倒した魔物の素材を回収し出していた。


レスキューハンズはケーナがマジックバックに魔物ごと収納していた。

キルも魔物を回収することにする。


他の冒険者達は魔石と目、角といった運べる物だけを解体して持ち帰っているが、キル達はサイクロプスそのものを解体する事なく収納して持ち帰る。


骨や肉などの持ち運ぶのに重くなる素材を置いていくことなく全て持ち帰れるレスキューハンズは素材の買取価格でも有利である。


レスキューハンズはサイクロプスを45匹ほど狩っていたのでその分のサイクロプスを収納して帰途に着く。今回の討伐全体では180匹ほどのサイクロプスが討伐されたようである。


素材をギルドで解体買取に回して魔石以外の買取価格は900万カーネルだった。

魔石は1つ30万カーネルなのでその分はキルが買取りいつもの様にメンバーに精算した。

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