127 ウルテッド森林  4

特級剣士のアーツ乱舞流水剣、雷光一閃。

キルは良さそうな特級剣士のアーツを見つけ、魔法に続いて剣のアーツも身に付ける。


サイクロンサイクロプスの取り巻きのサイクロプス軍団を切り刻みサイクロンサイクロプスとの戦いを邪魔されない様にするのに良さそうなアーツだ。


そう言えば精霊召喚も今は上級の精霊を召喚しているが特級精霊を呼び出すこともできるはずだ。キルは火、水、風、土の特級精霊を召喚できる様にスキルスクロールを作り身に付ける。


着々とスキルスクロールを使いS級の魔物を相手にする準備を整えるキルであった。

グラはそのキルを見ながらそのスクロールに興味深々である。

下顎を右手で撫ぜながらキルに問う。


「だいぶたくさんスクロールを作ったみたいだけれど、どんな効果があるスクロールなんだい?」


キルはその問いに顔をあげてグラの顔を真っ直ぐに見つめて笑顔を見せる。

「これは特級精霊を呼び出すためのスクロールですよ。さっきまでは上級精霊を呼んでいたのですけれどもう少し強い精霊を呼ぼうと思いまして。」


「君は特級精霊も呼べるのかい!」

驚くグラ、思わず声も大きくなる。

周囲の冒険者がグラとキルに視線を集めた。


「俺は特級召喚士でもありますからね。特級までは呼べますよ。

スクロールって便利でしょう?」

すかさずスクロールを宣伝するキルである。


「テイマーも便利に戦力を増やせますけれど魔物の管理が大変ですからね。その点召喚ならその都度精霊は帰って行きますから普段管理しなければならないということがないので楽です。」


その言葉にグラが敏感に反応する。

「君はテイマーでもあるのかい?」


「まあ・・・そうですね。俺は16のジョブを持っていますがスクロール職人のジョブ以外は特級まで進化しています。」


グラは羨ましそうにキルを見ながら、

「スクロールを使いたい放題だな。作れるというのも良いもんだな。」


キルはグラに営業スマイルを向けて、

「グラさんだってたくさん稼いでいるんですから買えば良いだけでしょう。使いたい放題ですよ。それに俺だって材料が手に入らなければ作れませんからね。そういう意味では作れないレベルがあるんですよ。」


苦笑するグラ。そうはいってもスクロールは高価な物だ。使いたい放題というほど購入できるはずもない。

だがグラもスクロールを購入しスキルを身につける利点をその目で見せつけられて利用しない手はないとは思っているのだった。


そんな思いを知ってか知らずかキルは営業トークを続ける。

「さっき使ったのが特級剣士のアーツのスキルスクロールで、乱舞水流剣と雷光一閃ですね。次の戦いで使いますから見ていて下さい。」


第一陣は敵の抵抗にやや苦戦し出している様だった。

1時間を待たずして第二陣も戦いに加わった方が良い様な気がする。

それだけ敵がたくさん密集しているということだ。


第一陣は徐々に後退しだしていた。


キルもグラもそのことを感じ取って目と目を合わせる。

口に出さずともお互いの言わんとしている事はわかっていた。


キルとグラは立ち上がる。


「キル君先行して応援に行ってくれ。俺は第二陣全軍を率いて戦線に参加する。」


「わかりました。俺が敵の勢いを押し返して見せます。」

キルはグラにそう答えるとクリスとケーナに声をかける。

「後は任せたぞ。」


「ハイ!」

「了解っす!」


キルは急いで前線に向かって走り出す。


第一陣の戦いに加わり走り抜けながら次ぎ次とサイクロプスを切り刻んで行った。

敵の攻撃を舞う様にすり抜け水の流れる様に澱みなく流れながら剣を振り通り過ぎた後には数々のサイクロプスの首が飛んでいた。乱舞水流剣である。


そしてサイクロンサイクロプスの眼前に迫る。

その前にはまだ10数匹のサイクロプスが待ち受けている。

キルはそのサイクロプス達に向け横一閃に剣を振る。


一瞬の光が走り3匹のサイクロプスが胴を薙ぎ払われて2つに分たれ崩れ落ちる。

雷光一閃。


キルは1人でサイクロプスの群れに踊り込む。

乱舞水流剣と雷光一閃を使いまくり次々とサイクロプスを倒していく。


周囲からは第一陣、第二陣の冒険者達がサイクロプスを倒しつつサイクロンサイクロプスを囲む。


サイクロンサイクロプスが上級風魔法サイクロンを唱えて周囲の冒険者を範囲攻撃しようとする。


キルはすかさずマジックブレイクをぶつけてサイクロンを打ち消す。

魔法を打ち消されたサイクロンサイクロプスが憎しみを込めてそのたった一つの目でキルをカッと睨みつけた。


キルは続けざまにサイクロンサイクロプスの魔法攻撃を封じ込めるためにマジックアビリティキャンセルをかける。

サイクロンサイクロプスの体が黒い影に縛られる様に覆われてその影が身体に染み込んでいった。


何をされたのかと戸惑うサイクロンサイクロプス、だが魔法を使おうとして何をされたのかはすぐにわかった様だ。

「グギャアア!」と悔しそうに叫んでも魔法は使えなくなったままだった。


サイクロンサイクロプスはキルを殺せば魔法を取り戻せるに違いないと考えたのかキルに向かって手に持った大斧を振り上げる。


振り下ろされた大斧をギリギリの見切りで一歩移動しただけで余裕でかわしカウンターの剣撃で斧を持つ腕を切り落とす。


「グワーーー」と叫びながら右腕を失ったサイクロンサイクロプスが後ずさった。


地面に突き刺さった大斧とそれを握ったまま切り落とされたサイクロンサイクロプスの右腕が残された。


サイクロンサイクロプスが残された左腕で反撃のパンチを振り回す。

キルは3歩後ろに飛び退いて斬りつける隙をうかがった。


サイクロンサイクロプスは切られた腕を掴むと右腕につなげる。

そして切られた右腕は元通りに治ってしまうのだった。

強い回復力を持つとはこういう事かと思い知るキルであった。

だがこの強い回復力を見てもなおキルは余裕を持ってサイクロンサイクロプスを倒せるという見通しでいたのだった。

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