126 ウルテッド森林  3

第一陣は第二陣よりも冒険者の数は多かったが、怪我で戦列を離れるパーティーが現れていた。

そういうパーティーは回復薬が切れて怪我の治療ができず回復薬を分けてくれる冒険者を探してまだ休憩地点をウロウロしている。


「回復薬や魔力回復薬を分けてくれないか?」


キル達のところにもそういう冒険者がやって来て声をかける。


「特上魔力回復薬ならたくさんあるぜ。1つ6000カーネルで買ったものだからその値段んなら売ってやるよ。

それと回復薬はないがヒールやハイヒールのスクロールならあるぜ。

ヒールは3000ハイヒールは10000だ。欲しけりゃ売ってやる。」

キルの顔が商売人の顔になっていた。


「頼む。売ってくれ。ヒールのスクロール2つと特上魔力回復薬2つ。」

「俺にも2つずつくれ。」

「悪い。俺の分もあるかな。2つずつ欲しいんだがな。」


「大丈夫だ、たくさん持ってるからな。」キルはストレージから取り出して3人に渡した。

これで3つのパーティーが戦線に復帰できるだろう。


3人は18000カーネルをキルに渡す。

「助かったぜ、これで俺たちのパーティーも戦線に復帰できるぜ、有難うな。」


「また必要になったら買いに来な。まだまだあるからな。」

キルはストレージを隠さずに言った。


「あんた、それは収納魔法かい?」買った後で確かめる冒険者。


「ああ、収納魔法ストレージさ。便利だぜ。」


「それがあれば商人としての成功は約束されたものと言われる魔法だな。羨ましいぜ。

そいつを身につけるためのスクロールは1億とも2億とも言われているらしいじゃないか。凄い魔法が使えるんだな。」


別の冒険者が、話に加わる。

「知っているぜ、幻と言われるスクロールだ。あればすぐ売れてしまうらしいな。」


キルがその言葉を否定する。

「俺はそのスクロールが作れるので4つ作って、1つは自分に使ってあとは売ろうとしたが、1つは2億で買い手がついたが値段が高いのと使える人が少なくて2つは売れ残っているんだ。すぐに売れると言うことではなさそうだな。

MPが10000以上ない人間にはこの魔法は使える様にならないんだ。」


「て事はあんた、MPが10000以上あるって事かい?」


頷くキル。


横にいたドラゴンブレスのリーダーゼクとサブリーダーのピケ、Aランク冒険者のグラも驚きの顔で固まった。


MPが1万以上あるという事は魔術師なら特級レベルを意味する。


上級魔術師のピケでは千数百しかMPは無いのだ。どうりで上級精霊を同時に何体も出していられるわけだと思うピケだった。


実際はキルのMPは20万以上である。


グラは特級と言えども剣士なのでMPはそれほど高くない。

特級魔術師だったらストレージのスキルスクロールを買うのになあと思うグラだった。


1時間が経過してまた戦い始める第二陣。ピケの戦力アップと水精霊が増えた分さっきより戦いは楽である。


サイクロプスを相手にすることに慣れてきた事もあって討伐は順調に進んでいった。


そして森林の奥に密集する敵の影があることを索敵で感じる。おそらく上位種を中心にしたボスグループに違いなかった。

そろそろ上位種との戦いに備えなくてはならなさそうだった。


1時間が経ちまた第一陣との交代の時間になった。

そして怪我をしたものは治療をし、回復と休憩をする。

次の戦いのために休憩する事は大切な行為なのだ。


キルはグラの近くに座り話しかけた。

「グラさん、もう少し進軍すると強い魔物が集まっているのに気づきましたか?」


「君も気付いたか、俺は索敵持ちだからわかったが君もさっきは索敵のスキルスクロールを売ろうとしていたくらいだから、勿論持っているのだろうけれどもな。」


「はい。うちのクランでは全員持っていますよ。」

その答えにグラは目を瞬かせる。


「上位種もいそうでしたね。」


キルのその言に我に帰るグラ。

「そうだね。どうしたものだろうかと考えていたところさ。」


「サイクロンサイクロプスは風魔法を使うそうですね。ならばその魔法を無効化したいところです。」

そう言うとキルは何か良いスキルは無いだろかと調べてみる。


上級魔法マジックブレイク、、、詠唱中あるいは発動した魔法にぶつけて魔法を打ち消す魔法か、、、。

特級魔法マジックリフレクションシールド、、、魔法を跳ね返す盾を作り出す魔法。

聖級魔法マジックアビリティキャンセル、、、、魔法の能力を封じる魔法。


3つほど見つけてストレージ内スクロール作製を実行する。

レッドオーガ、グレートミノタロス、ブラッドオーガの魔石の粉が1/4ずつ消費されて3つのスクロールが出来上がっていた。


ストレージから取り出して3つのスクロールで3つの魔法を身につける。


その様子を見ながらグラはキルに尋ねる。

「何かのスキルを身につけているのかい?」


「ええ。魔法を3つほど身に付けました。

サイクロンサイクロプスの魔法に対抗する為にその魔法打ち消したり跳ね返したり、あるいは奴の魔法を封じ込めたりする魔法です。」

キルはイタズラっこの様な笑顔をグラに向けながら答えた。


その様子を見てグラはキルの実力を想定以上だと感じるのだった。

「キル君、サイクロンサイクロプス戦では君が先鋒になってくれないか?

君ならきっと奴を倒せるに違いない。勿論俺も手伝うよ。

奴に通じる攻撃力を持つものはこの中でも限りがあるはずだ。

君はそのうちの1人なのは間違いなさそうだからね。」


その願いにキルは笑って答えた。

「言われるまでも無く、そのつもりでしたよ。その時は宜しくお願いします。」


キルは攻撃用のスキルも調べ出すのだった。

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