125 ウルテッド森林 2

「欲しいな、ジョブスクロール。⭐︎3があれば上級冒険者になれるのか。上位1割になれるのか。とは言え1200万カーネルは手が出ないな。クソ。」


何処からかそういう声が聞こえて来る。

Cランクの多くの冒険者がそういう思いを抱いたと思われた。


Dランク冒険者のほとんどが⭐︎1のために中級に上がれないのだろう。

討伐経験値は十分に条件を満たしているはずだ。

そいつらは⭐︎2のスクロールが欲しいと思ったはず。

だが300万カーネルは大金だ。


それだけの大金を貯めるためには獲物を大量に狩りそれを輸送手段を持つか、ダンジョンに潜って魔石をたくさん集めて来るしかないだろう。


「スキルスクロールで有効なスキルを身につけると狩りの効率が上がってたくさん稼げる様になりますのでそれも有効ですよ。

例えば索敵を覚えるだけで敵がすぐに見つけられますから歩き回る量が圧倒的に減りますし、遠距離攻撃のスキルを覚えれば戦いがとても楽になります。

ちなみに索敵のスキルスクロールは10万カーネルです。」

キルは今はもう商人の顔になっている。


しかし王国や貴族領の騎士団、教会の聖騎士とは違い冒険者にとっては買いたくてもなかなか手の出ない金額なのは間違いない。

やはりスキルスクロールの方が手頃な値段だしスキルを1つ身につけるのにも数年を要するので多くのスキルを得る時間を考えれば欲しいと思う人もいると思うのだ。

スキルスクロールを勧めるのも良いかもしれない。


「攻撃力や、腕力、防御力、知力、素速さ、器用さ、走力などの強化のスキルスクロールは8万カーネルです。

全部揃えると相当ステータスが上がりますよ。」


休憩の間に商品を勧めてみたが購入するという声は上がらなかった。残念。


1時間が経ち第一陣と交代して戦闘に入る。

フォーメイションはさっきと同じでキル達は右翼を担当する。

キルは風と土の上級精霊を召喚して戦いに参加させる。

2体の参加でさっきよりも戦いに余裕がある。


キルは精霊の助けを借りながらも3匹のサイクロプスを1人でいち早く倒してドラゴンブレスの援護をする。遠距離からサイクロプスの目を狙ってフリーズボムだ。


頭部が凍りつき動きが止まったサイクロプスにドラゴンブレスの面々が攻撃を加え続けサイクロプスはズシンと音を立てて倒れ込んだ。

そしてすかさず息の根を止めるための剣が突き立てられる。


それを横目にキルは前進して次の敵を求めるのだった。



1時間が経過して森の中腹までサイクロプスの掃討が進んだ。

そして休んでいた第一陣と役割交換である。

今度は第二陣が休みを取り回復する番である。


「キル君、召喚士のジョブも持ってるのかい?」

グラが近寄って来てキルに声をかけた。


「あ、はい。上級召喚士ですね。さっきのは上級風精霊と上級土精霊です。」


「良いねえ。戦力が足りない時に呼び出すだけで増強できるなんて。他にも呼べるのかい?」


「そうですね。火も呼べますよ。でも森の中では火は呼びずらいですけれどね。火事になってしまうので。」


「なるほど、水は呼べないのかい?」


「スクロールを作れば呼べる様になりますよ。作りましょうか?」


「戦力は多い方がいいからね。良かったら次の戦いから参戦させてくれるかな?」


「了解です。」キルはストレージ内スクロール制作で上級水精霊の召喚を身につけた。


「では次から水精霊も呼び出すことにしますね。」


「ウム。頼んだよ。」グラは上機嫌だ。


「俺はドラゴンブレスのサブリーダー、ピケだ。」

見るからに魔術師といったローブを羽織り銀髪、青眼、35歳位のその男は右手に青い大きな魔石のついた杖を持っていた。

「さっきは援護射撃をしてくれて有難う。助かったよ。

ところでさっき使った魔法のスキルスクロールはいくらするんだい?」


どうやらスキルスクロールを買いに来たらしい。

「フリーズボムですね?あれは上級魔術なので50万カーネルです。今スキルスクロール持ってますよ。お買い求めですか?」


「50万カーネルか〜」

ピケは値段を聞いて迷っている様だ。


「中級魔術のスキルスクロールなら30万カーネルでアイスマシンガンというとても有効な氷魔法のスキルスクロールも有りますよ。」


ピケは眉間に皺を寄せて暫く考えた後思い切った様に言葉を発した。

「両方売ってくれ。」



さすがは、クランのサブリーダー、思い切りが良い。

キルは2つのスキルスクロールをピケに渡した。

ピケはそれを受け取ると80万カーネルをキルに渡す。


「一つずつスクロールの手を当ててゆっくり少しだけ魔力を流してみてください。」


ピケが言われたとうりにやってみるとスクロールが光出しその光がピケの中に吸い込まれていった。

次のスクロールも同じ様にやってみる。

今度はさっきのものよりも光が強かったがやはり光はピケの中に入って行った。


「もう使えるはずですから安全なところで試し撃ちでもしてみてくださいね。」

キルは久しぶりにスキルスクロールが売れて嬉しかった。

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