124 ウルテッド森林  1

ウルテッド森林、先行した冒険者達がもうサイクロプスを狩り始めていたが、サイクロプスはBランクの魔物、つまりは上級冒険者レベルの実力を持つ。


中級冒険者が数人掛りでは怪我人が出る事も珍しくはない。

つまりは双方に損害が出ていたという事である。

冒険者達は治療薬や治癒魔法を使っていたので死者まではでていなかったけれど。


グラ率いる第二陣が到着すると冒険者達の戦力は厚みを増し第一陣の冒険者達も余裕ができたというものであった。


3時間ほど戦い続けていた第一陣の冒険者に代わり第二陣の冒険者が前線に立つことになる。


中央は大規模なクランのドラゴンブレスの25人が受け持つ。

ドラゴンブレスにはBランク冒険者が4人Cランク冒険者が16人、Dランク冒険者が5人所属している。


左翼は少人数の冒険者パーティー4組、12人が受け持つ。

Bランク冒険者は1人しかおらず、やや左翼の戦力が心許ない様な気がする。

そして右翼をレスキューハンズの9人で担当する。


第二陣全体の指揮を取るのはグラ率いるAランクパーティーの4人だ。


総勢50人の大部隊だ。


冒険者達の周りから10匹程度のサイクロプスが襲って来た。

左翼3、中央4、右翼が3匹のサイクロプスを相手どる。


右翼ではキル、ケーナ、クリスがいち早く遠距離攻撃を開始して他の6人が追随すると短時間で3匹を撃破した。


その頃中央では戦いがやや優勢に拮抗し、左翼ではサイクロプスが優勢に暴れていた。

苦戦する左翼に対しグラにパーティーが援護に入り形勢逆転、サイクロプスを殲滅した。


中央でもサイクロプスの殲滅に成功する。

その間に右翼は前方に突出して他のサイクロプスに攻撃を開始していた。


キル達は瞬く間にサイクロプスを狩り尽くし掃討範囲を拡大する。

キルは単独で中央から右翼まで進出して後続のサイクロプスを殲滅して回ると、右翼は8人に任せ遊軍の状態になっていた。


それでも右翼のレスキューハンズの8人は左翼、中央に比べて手際よくサイクロプスを狩っていた。

キルは近接戦闘に切り替えてサイクロプスを切り刻みながら戦場を縦横無尽に走り回った。


走りこみ瞬間で敵の間合いに入ると飛び跳ねて大上段から斬りつけて一刀の元に2つに分つ。

そして次のサイクロプスに向かって走り飛び込む様に剣撃を加える。

サイクロプスはキルに気づいた時には真っ二つに切り刻まれた。


暫くすると戦線は全体に右に展開し、右翼5中央4左翼1の割でサイクロプスを受け持つ様に変化していた。

グラのパーティーは予備戦力として待機する。


1時間ほどで第一陣の冒険者達と交代して第二陣は休憩に入り次の1時間に備えて英気を養った。


「凄まじい戦闘力だね。君のクランは。」

グラがキルに話しかけて来た。


「まあ、全員上級戦闘職ですからね。」


「それは凄い。どうやってそれだけの上級戦闘職冒険者を集めたんだい?集め方を教えてくれよ。」グラは信じられないという顔だ。


「集めたというより経験値を稼いで成長してもらったんですよ。

勿論ジョブスクロールを使って上限を引き上げたり、ジョブが農民の子には別の戦闘職を覚えてもらったりしたのですけれどもね。」


「ジョブスクロールを使って上限を引き上げる……か。」

グラは眉間に皺を寄せて人差し指を額に当てた。


「高かったろうに、その金はどうしたんだ。」


「一時的に借金という事で俺が金を貸しましたがレベルが上がれば稼ぎも増えますからすぐに返済されましたよ。

ジョブスクロールだけでなく有効なスキルを身につけるのにもスキルスクロールを使いました。

俺はスクロール職人ですから上級職のスクロールはすぐにでも全て作れますし、特級のスクロールも魔石さえ手に入れば作ることができますからね。」


「君はスクロール職人なのか?」


「はい。俺は聖級スクロール職人です。

スクロールがお入り用ならなんでも売りますよ。

ここのところ⭐︎2、⭐︎3のジョブスクロールはよく売れてますよ。

⭐︎2を使えば中級に、⭐︎3を使えば上級に進化できますからギフトが⭐︎1相当だったり⭐︎2相当だったりした人は使えば上限が引き上げられて強くなれますよ。」


ドラゴンブレスのリーダー ゼクが話に割り込んで来る。

「そのジョブスクロールってのは今も買えるのか?いくらだ?」


「ジョブスクロールは⭐︎1は100万カーネル、⭐︎2は300万カーネル、⭐︎3は1200万カーネル、⭐︎4は8000万カーネルですね。

討伐経験値が基準以上ならば進化しますよ。」

キルは営業スマイルで答えた。


「⭐︎1のスクロールを使えば別の職業も覚えられるのか?」

ゼクは食いつく様にキルに詰め寄る。


「勿論ですよ。幾つでも身につけられますよ。事実俺は16のジョブを身につけていますからね。」


「なんだって〜!」

周囲で聞き耳を立てていた冒険者が声を上げた。


キルは逆にその声で驚かされたのだった。

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