123 招集
翌日、通例通り休日である。
キルは朝がたから生産者ギルドにスクロールを卸しに行く。
前回注文されたのは、⭐︎2のジョブスクロールは剣士騎士を500ずつ、⭐︎3のジョブスクロールは剣士騎士槍使い盾使い魔術師を50ずつだった。
注文されたスクロールをわたして代金を受け取る。⭐︎2が1000枚、⭐︎3が250枚で、60億カーネルになった。
「⭐︎1のジョブスクロールって相変わらず人気がないんですか?」
キルが何気なく聞いてみる。
「そりゃないだろう。ジョブは1つみんな持っているんだからな。」
生産者ギルドのオッサンが答える。
「2つ持ちたい人とかっていないんですか?例えば剣士が魔術師のジョブを欲しがったり、盾使いが剣士のジョブを欲しがったり?」
オッサンの目が点になる。
固まったオッサンが一拍置いて動き出した。
手で下顎を撫でながら天を仰ぎキルに向き直ると言った。
「それ、やりようによっては売れるしブームになれば⭐︎2の売れ方にもいい影響が出そうだな。今度本部に提案してみよう。」
「スキルスクロールは相変わらず人気がないんですか?」
「それもアレだな、持っていき方次第では売れ出すかもなあ。だが今はジョブスクロールだ。」オッサンがキメ顔で言う。
キルは納得して次の注文を確認する。
「この次は何を作ってくればいいですかね?」
「次は⭐︎2のジョブスクロールを満遍なく100ずつと売れ筋の5つは500、あと⭐︎3は20づつ用意しといてくれ。」
「了解しました。また7日後くらいにくれば良いですね。」
「そう言うこと。頼んだよ。」
キルはオッサンに手を振ると生産者ギルドを後にしてホームに帰るのだった。
10時、ホームに帰って来るとクッキーがキルのところに駆け寄って来た。
「キル様、冒険者ギルドから伝言が有りました。指名依頼を受けてほしいそうです。」
オット、これは昨日の一件がらみに違いない。
たまの休みというのにまた討伐に向かわなければいけないのだろうか?
「中身は聞いてるのかい?クッキー。」
「イエ、ギルドに集合してほしいということです。大規模な討伐隊を組むためだそうです。他のクランにも声をかけているそうですよ。急ぎで集めてるみたいでした。」
そうなると魔物の大量発生の間引きに違いないな。
取り敢えず冒険者ギルドに行くとしようかな。
「皆んなはホームに残ってるのかい?」
「皆さん出かける前だったので待機しています。」
「わかった。冒険者ギルドに行くと皆んなに声をかけてくれ。」
クッキーはパタパタと奥に入っていきメンバー達に声をかけた。
キルが装備を身につけてホールで待っているとメンバー達が武装して集まって来る。
「緊急招集がかかっている様なのでギルドに行ってみようと思う。良いね。」
「「「はい。」」」
良い返事が返って来る。
レスキューハンズはギルドに向かった。
冒険者ギルド前にはたくさんの冒険者がギルド内からあふれていた。
キルは冒険者をかき分けて受け付けの所まで手続きに行く。
ケイトさんが事情を説明してくれた。
「ウルテッド森林に魔物が大量発生していて大規模な討伐隊を送ることになりました。
サイクロプスが森じゅうで確認されています。Bランクの魔物の大量発生ですので、できるだけの冒険者を動員しようと考えているのですが、先発隊は先ほど出発しましたので第二陣がそろそろ出ますので参加して下さい。」
「わかりました。」
「第二陣は俺達が指揮を任された。またよろしくな。頼りにしているぜ!」
後ろからキルの肩をたたいたのはAランク冒険者のグラだった。
グラは隣町のリオンで最強と目される冒険者だ。
この前のゴブリンの大量発生の折にはキルを彼のパーティーに勧誘した事もある。
「お久しぶりです。ゴブリン討伐依頼ですね。」
「そうだな。君には俺のパーティーに入って欲しかったんだが今ではクランのリーダーとはね。驚いたよ。悪いが君のクランには主力で闘ってもらうよ。」
「お手柔らかにお願いします。」
キルは頭の後ろを掻きながら言った。
「ハハハハハ、別に虐めようという気は無いよ。でもキル君は俺が1番頼りにしている冒険者だからね。相応に働いてもらわないと困るというだけさ。」
グラは腹に手を当てて笑った。
「今回はサイクロプスの上位種がいるらしいからね。」
「サイクロプスの上位種って?」
キルの顔が青ざめる。
「そいつは俺が相手をする事になりそうなんだがね。風神サイクロンサイクロプス。」
「Sランクの魔物じゃないですか!」
キルがさけんだ。
サイクロンサイクロプスは、風魔法を使い強い再生力を持つと言われる超大型に進化したサイクロプスだ。
キルの声に周囲の冒険者が反応して視線が集まる。
グラは冒険者達に向かって言った。
「討伐隊の指揮を任されたグラだ。これからウルテッド森林に向かう。参加者はついて来てくれ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます