122 ウルテン村

「おめでとう御座います。」

ケイトがクランのBランク認定に祝意を示した。


「実はそのBランククランに指名依頼が有るんですけれど〜。」

ケイトの笑顔が少し固くなった様に感じるキル。

これは何か嫌な予感がするなあ。

難しい依頼をされるのかもしれないとキルの顔も引き攣る。


「どんな依頼ですか?」


「ウルテッド森林の近くにウルテン村という集落があるのですけれど、

そこでサイクロプスが出たとう報告が有りまして、

急いで討伐隊を送らなくてはという事になったのですが、

この時間帯でBランクパーティーが捕まりませんで、

そこに丁度よくキルさん達をお見かけしたと言うわけです。

一刻も早い対応が求められる事案ですのでぜひ受けていただかませんか?」

ケイトの顔は真剣なものに変わっていた。


メンバーを見渡すキル。

「帰って来た早々で悪いんだけれど、この依頼受けてもいいかな?」


「勿論です。」クリスは使命感に駆られた顔で返事をした。

住民を守るのは貴族の使命でもあると感じているのかもしれない。


「自分は問題ないっすよ。いくらでも付き合うっす。」

「皆んなが行くなら行きます。」「うん。うん。」

「サイクロプスとは相手にとって不足なしだぞ。行かせてくれ。」


「人助けはレスキューハンズの存在意義ですから行きますとも。」

モレノが立派な事を言っている。


他のメンバーもついて来てくれそうだ。


「ケイトさん、その依頼レスキューハンズに任せてください。」

サイクロプスならレッドオーガとたいして変わらないだろうと思って、胸を叩くキルであった。


「助かりました。パーティーを送るのが明日になるかと思いウルテン村の方々が心配だったのです。」

ケイトがやれやれと言った顔でホッと胸を撫で下ろした。


「早速出発するぞ。」

キルはそう皆んなに声をかけるとケイトからウルテン村の地図を受け取りギルドを出た。


現地までフライを使って一っ飛びのレスキューハンズである。1時間とかからずにウルテン村に到着した。


村の北側、ウルテッド森林に面する方向に防衛のための柵がつくられていたが、その柵を守る様に村人達が武器を握って集まっていた。

柵の向こうにはサイクロプスが村の方を大きな一つ目で睨んでいる。

右手には大きな木の棍棒を握り本気になれば村の防御柵など一撃で壊せると思えた。


サイクロプスの前には無数の矢が地面に突き刺さりサイクロプスの侵入を阻止しようとした跡がありありとわかった。


村に入ったレスキューハンズを村人達が大歓声で迎える。

「やった!こんなに早く冒険者を送ってくれるとは思わなかった。

知らせを送ったのは今朝だっていうのにどうやったらこんなに早く来られるんだ。」


興奮する村人にキルが自己紹介をする。

「我々はBランククランのレスキューハンズというものです。俺はリーダーのAランク冒険者のキルです。奴らは俺たちに任せてください。」


「「わーーー」」という歓声がまた上がる。

「「もう大丈夫だ」」「「Aランク冒険者だって!」」「「9人も来てくれたぜ!」」

村人達は口々に期待の程を口にする。


キル達は防御柵を飛び越えてサイクロプスに近付いて行った。


1つ目1本角の巨人サイクロプスはBランクの魔物だ。

つまりBランク冒険者と互角、Bランク冒険者複数人のパーティーでならば安全に倒すことができるレベルということだ。


サイクロプスは近づいて来るキルに警戒心を露わにして森林方向に逃げ出した。

Aランクレベルのキルの姿に恐るべき何かを感じ取っていたのかもしれない。


逃げ出すサイクロプスをムザムザそのまま逃すキルではない。

キルは重力追加の魔法でサイクロプスを押し潰す。

サイクロプスはその重みで歩を進めることができなくなった。


キルが一瞬で近づき剣を振るう。

その一瞬に3度の剣撃がサイクロプスを切り刻んだのが見えたものはこの場では上級冒険者のレスキューハンズのメンバー達だけだろう。


「なんかー、自分達の出番がなかったねー。」

つまらなそうにマリカが言った。


背中から切り刻まれたサイクロプスの体が5〜6個に分かれて散らばった。


「森の中にも何匹か居るみたいですよ。」

クリスが念の為に周囲の魔物も倒しておいた方が良いという顔付きで警告する。


「後で村を襲われるのも困るし、出て来るのを待っているのも面倒だな。続けて森の中の魔物も狩っておくか?」


確かにキルの索敵にも複数のサイクロプスが引っかかっていた。


「ついでに森の掃除をするのも一興であるな。」

ユミカはやる気満々だ。

ここまで来て戦わずに帰るのはイヤだと顔に書いてあった。


レスキューハンズは森林の中に入っていきサイクロプスを狩り始める。

クリス、ケーナ、ユミカの3人が積極的に狩ろうとしていた。

強くなりたいという意志の現れだろう。


結局その後村周辺の森林内にいたサイクロプス8匹を見つけて狩った。

原因は解らないが村の近くの森にこれほど多くのサイクロプスがいる事自体異常であると考えざるをえない。


ギルドに報告はしておいた方が良さそうだと考えるキルである。

村を後にしてギルドに帰ると村近辺の森林にサイクロプスが大量にいたことを報告してホームに帰ったのだった。

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