119 クリスの頼み

一仕事終えて、何事もなかったかの様にホームに戻っているキルで有る。


クランのマスタールームでスクロール作りでもしようかと思い昨日見つけた聖級スクロール職人のアーツでストレージ内スクロール作製を作って試す事にした。


ブラッドオーガの魔石を使いMPを大量に込めて紋様を刻む。成功だ。

自分に使いそのアーツを試してみる。


ストレージ内にレッドオーガの魔石の粉を用意、⭐︎2の剣士のジョブスクロールを100個作ろうと念じた。


MPが減るのを感じるスクロール内を確認すると100個の⭐︎2剣士のジョブスクロールが増えている。成功だ。時間もそれ程かかっていない。


続けて騎士⭐︎2のジョブスクロールを100個作る。成功した。

これは使えるスキルだ。ここの所作る時間がかかりすぎるのが難だったのだ。


キルは喜んでこのスキルを使い続ける。

その後、盾使い、槍使い、魔術師、弓使い、聖騎士、の⭐︎2ジョブスクロールを50づつと斥候45枚作ってMP20万を消化した。スクロール495枚だ。魔石の消費はレッドオーガ123と1/4で有る。


夕食前にスクロール作りは完了し食後にはフリータイムができた。さて夕食後は何をしようかと思いながら食堂に向かうキルであった。


ホームには風呂はない。というよりもこの世界で風呂があるのは貴族か大商人の家だけである。

メンバーはクリーンの魔法をスクロールを買って身につけているからホームに風呂は必要がないと言える。

クッキーを除いてゼペック爺さんもクリーンを身につけていてクッキーもこの前借金でクリーンを覚えたいと言って来たので今では全員クリーン持ちである。


だから食後に入浴タイムなどというものはなく部屋で身体を拭くという事もなく食後はフリータイムになるのだ。


共有スペースでキャラキャラ楽しんでいたり訓練をしていたり自分の部屋に行くものもいる。


キルは食事が終わるとマスタールームでスクロールを作っているのが日課であったが今晩は自室に篭る事になった。これからも自室でストレージ内スクロール作製をチョチョっとやってしまえるだろう。


部屋のドアがコンコンとノックされ、「クリスですが入ってよろしいでしょうか?」

と声がした。


「良いよ。入ってくれ。」とキルが答えるとクリスが部屋に入って来た。


「どうかしたの?」キルは不審な顔になってクリスの顔を見る。

クリスは真剣な顔をしていたからだ。


「実は、相談したい事が有るんですけれど、、、、。」


キルの背中に冷ややかなものが走る。

また侯爵に連れ戻されそうなのか?このクランに不満があるのか?はたまたキルに不満があるのだろうか?


何を言われるのだろうかと唾を飲むキル。


キルの顔を真っ直ぐに見つめながらクリスは口を開いた。

「私、もっと強くなりたいんです。どうしたら良いでしょうか?キルさん教えてください。」


キルはホットして身体から強張りが抜けていくのを感じる。

良かった、そんな事か、と思うキルで有る。


「まずは⭐︎4のスクロールを使えば討伐経験値さえ積めば特級魔術師になれるな。」

キルは普通のことを答える。


「私、魔法以外の基礎的なステータス、防御や攻撃力が低いのをもっと高くできないかと思うんですよ。」クリスの目は真剣だ。


「それなら、、、防御力なら盾使い、攻撃力なら剣士、両方なら槍使いのジョブを身に付ければ良いんじゃないか?まずは⭐︎1と2を身につけてその後⭐︎3を身につけるんだ。なんなら全部1度にやっても良いんじゃないか?」


「はい、やりたいです。お願いできますか?」


「スクロールを買うってことで良いんだよね?」


「はい。」


「3つとも?」


「おいくらですか?」


「えーーーと、⭐︎1が100万、⭐︎2が300万、⭐︎3が1200万だから1ジョブ上級まで1600万カーネルだね。⭐︎4まではかなりの討伐経験値が必要だからだいぶ時間がかかりそうだからまだ買わないでも良いと思うよ。」


「3つだと4800万カーネルですか、、、わかりました。思い切って3つとも買います。ちなみに⭐︎4は、おいくらですか?」


「⭐︎4は8000万カーネルだからその分貯めておいた方が良いな。経験値が貯まるのはしばらく先だしな。」


「そうですね。そうします。」


キルはストレージからスクロールを渡しクリスは剣士、盾使い、槍使いのジョブを得た。」


「これから稼いだ討伐経験値で進化するからそれに伴ってステータスも伸びるぞ。

そうすれば一撃で即死する心配がやや減ると思う。

特に魔術師などは防御力攻撃力が高くはならないからな。」


「そうですね。魔法で補っていますけれども元々のステータスが高い方がなお良いですからね。」クリスは笑顔になっていた。


その笑顔を見て流石に貴族の出身だからとても綺麗だなと思うキル。


「キルさん、明日一緒に狩りに行ってもらえませんか?」


「2人でか?」


「そうですね。みんなは休みを楽しみたいでしょうから。」

考えている顔も答えを出して笑顔で答える様子もいろいろな顔をするんだなあと思うキル。別に好きというわけではないと自分を諌める。ただ客観的に可愛いというだけだ。

そもそも生まれも育ちも違うのだ。


「で、フクラダンジョンを日帰りするのか?」


「たまには他の魔物と戦ってみたいから、ギルドで依頼を見てみませんか?」


「それなら俺が今日見てきたのだが良さそうなのは2時間飛んで行ったところにあるドルケン山のワイバーンの群れとかがお勧めだよ。」


ワイバーンなら取れる魔石は⭐︎2のジョブスクロールに使えるレベルだから討伐経験値も1匹倒せば10は獲得できそうだ。経験値はトドメをさしたものに入るのは間違いないことだとキルは思っている。実際この世界ではそうなっている。


「ワイバーンって単独でもBランク上級冒険者レベルですよね。その群れと戦うんですか?」


「そうだな、レッドオーガと同じくらい強いと思って良いよな。その群れだ。」


「大丈夫なんですか?私死にそうな気がします。」


キルは笑って答える。

「俺がついてるから大丈夫だ。2人で行くなら君だけ守れば良いのだからな。」


「ハ、ハイ。よろしくお願いします。」

クリスの頬が少し赤くなった様な気がした。

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