116 ゼペック工房の引越し 1

翌日、レスキューハンズは例によってフクラダンジョンに向かった。

ホームの留守番とゼペック爺さんの食事はクッキーに任せている。


フライでダンジョンまで一期に飛び第2階層でレッドオーガの魔石を集めるのが狙いである。

⭐︎2のジョブスクロールの材料がたくさん欲しいからだ。


「8人でレッドオーガを狩ってくれ。俺無しでも安全にこなせるだろう?」


「「「ハイ!」」」


「勿論っすよ。安心して奥に行って来て良いっすよ。」

ケーナが頼りになる発言をする。サブリーダーといった感じだ。


「レッドオーガの魔石がたくさん欲しいからそのつもりで狩ってくれ、任せるよ。」


「いつもの所でキャンプを張れば良いですね?」クリスは確認を怠らない。


「そうしてくれ。夕方には合流するからね。」


キルはブラッドオーガを倒して第3階層で狩りをする。

パリスからフクラまでの移動で3時間飛行したので8人の第2階層での狩りは7時間ほどできそうである。

キルは第3階層でシザーズウルフチーフの一団を狩り出す。


キルは器用さのステータスが高いので3対1でも余裕で近接戦闘をこなしていく。

新調した剣の切れ味も最高だ。

ウルフたちのスピードが速いといってもキルの方がもっと速い。

剣を振るいながら同時に魔法で攻撃することもできる。

見る見るうちにウルフとウルフチーフを切り倒す。


魔石を拾い、そして次の獲物に向かって走って行く。

大人数で狩りをしている時よりも機動性に優れているのかたくさん狩ることができる。


第3階層での狩りはキルの近接戦闘に大きな経験値をもたらした気がした。

ステータス上の討伐経験値は近接戦闘と遠距離攻撃に分かれている訳ではないので数字では測れないが、ただキルにはそう感じられたのだった。


6時間経ってブラッドオーガが復活した時に間髪を入れずオーガを討伐する。

メインは近接戦闘だ。

防御力も攻撃力も高いブラッドオーガを倒すのにはかなりの斬撃を加え続ける必要があったし、その間にオーガの攻撃を避け続けなければならない。


キルはヒットアンドアウェイを繰り返し攻撃を完璧に回避しつつブラッドオーガにダメージを蓄積させ最後に危なげなくトドメをさす。

そしてまた第3階層で狩りを続け7時間後には第2階層のキャンプ地点に引き返して来た。


今日キルはブラッドオーガ2、シザードウルフチーフ42、シザードウルフ84を倒していた。

ケーナ達8人もレッドオーガを62倒して戻ってきた。メンバーに怪我は無い。


レッドオーガが相手ならば彼女達は危なげなく倒すことができる様だ。

上級冒険者8人全員が遠距離攻撃のスキルを持っていて一斉攻撃されたらレッドオーガも近接戦闘になる事もなく狩られていったに違いない。


晩飯を食べると3時間三交代で警戒しながら睡眠を取る。

キルは初めに警戒に当たりながらその時間を利用してスクロールを作るのがパターンだ。

この時は上級召喚魔法で風、水、土、の精霊を召喚しておく。

そして160個の⭐︎3ジョブスクロールを作るのだった。

MPは使い切らずにもしもの戦闘に備えて余らせておく。

ダンジョン内でMPを使い切ることは安全性を著しく損なう行為なのは言うまでもない。


朝メンバーより早めに目を覚まし、ブラッドオーガを倒しておく。

そしてみんなと朝食を取り朝8時くらいから1日の狩りの開始である。


1時7時にブラッドオーガを倒して残りの時間はひたすらシザードウルフとウルフチーフを狩り続ける。そういった日々をそれから5日続けキルは1日平均ブラッドオーガ4、シザードウルフチーフ70、シザードウルフ140を倒し、メンバーは1日平均レッドオーガ95を倒した。


ダンジョン7日目の朝ブラッドオーガを倒した後で地上に引き返し、パリスに帰還。

帰り道ではグレートミノタロスも倒しながらレッドオーガ10、ミノタロス10を倒しながら地上に出る。無理をすることなく魔石と討伐経験値を稼いできた。


このダンジョン遠征でグレートミノタロス1、ミノタロス20、レッドオーガ557、ブラッドオーガ23、シザードウルフチーフ392、シザードウルフ784を倒したことになる。


金に換算すると46700万カーネルになる。

ケーナの提案でキルと他のメンバーの狩った分を分けて精算することになりクラン保留分が1割で4670万カーネル、キルの分が29740万カーネルから1割引いた26766万カーネル、他のメンバーは1908万カーネルという分配になった。


キルは1日に160個の⭐︎3のジョブスクロールを作っていたのでシザードウルフチーフの魔石240個を使い960枚の⭐︎3ジョブスクロールとシザードウルフチーフの魔石の残りは152個増えた。


ホームに帰るとクッキーとゼペック爺さんが迎えてくれた。

そしてダンジョンに行っている間にゼペックは工房との行き来が面倒になりクランのホームに住み着く様になっていた。

クランリーダー用の机に座ってそのまま寝てしまう様だ。

キルはゼペック爺さん用に余っている部屋を一つ提供して自分もクランのホームに一部屋持つことにした。


クランリーダー用の部屋は工房兼用にしても問題は無い。

スクロールの店をホームに併設してしまおうかとも考える。

別に看板と店番をゼペック爺さんかクッキーがしてれば良いだけのことなのだから。


晴れてゼペック工房の引越しが行われる事になった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る