115 キル 久しぶりにケラとバンに合う。

バッカス工房からクランのホームに向かう途中で冒険者ギルドに立ち寄る。

明日はまたフクラダンジョンに向かうつもりでいたがとりあえずどんな依頼があるかチェックする。

必要な魔石はフクラダンジョンに潜らなければ手に入れ難いのでチェックはすれど明日はダンジョンで決まりだ。


依頼ボードを眺めていると後ろから声がかかった。


「久しぶりだなあ、キル。元気にやっているか?」


振り返るとそこには元パーティーメンバーだったケラとバンがいた。


「ああ! 久しぶりだね。ケラ、バン。俺は元気にやってるよ。君たちは?」

懐かしさにキルの頬が緩む。


「俺達は(大地の護り手)で頑張ってるぜ。俺達この前Dランクに上がったんだ。」

ケラは誇らしそうだ。


キルはこの前Bランクに昇格している。

ルキアとモレノがこの前Dランクに他のメンバーはCランクに昇格している。

ケーナもBだ。

そのことは黙っておいた方がいいかもしれないとキルは思った。

言うことはケラとバンの誇りをいたく傷つけてしまうに違いないのだ。


「凄いね、何か良いアーツを身につけたのかい?」

少し引き攣った笑顔になりながらもキルは聞いた。


「キル〜、わかってないなあ。アーツなんて生えるのに2〜4年かかるんだぜ。俺たちまだ1年半に満たないのにそんなの身につけられるわけがないじゃないか。」

ケラがバカにした様にキルに言った。


「そうだよキル。俺もアーツを身につけたいとは思うけれどさあ、そううまくはいかないよ。」と諦めた様にバンが言う。


「ならスキルスクロールを買って身につけたら良いよ。ケラなら飛剣撃鎌鼬、バンなら流星槍とかがおすすめだよ。どっちも80000カーネルで買えるよ。」


「オイオイ、キル、久しぶりにあったのにスクロールの押し売りとは酷くないか。」ケラがキルを睨みつけた。


「そう言うつもりじゃないんだけどね。」想定外の反応に驚くキル。


「どっちにしても80000カーネルなんて高くて手が出ねーよ。」バンも憤慨している様だ。


「そうか〜、半分なら金貸してやっても良いんだけどね。」


「「まだ言うか!」」2人は今にも殴りかかってきそうな勢いだ。


「ごめん。良かれと思って言ったんだけどね。別に俺は金に困っている訳じゃないんだよ。」キルはそういと、誤解を解くために小金貨を5〜6枚見せた


「「エエ!!!」」ケラとバンが顔を見合わせる。小金貨は1枚10万カーネルだ。


「どうしたんだよ?その金。」ケラがキルの顔を睨む。


「まさかやっちまった訳じゃないよな!」とバン、


「スクロールを売った金だよ。泥棒とか盗賊とかやってないから大丈夫だって。」

まさか泥棒したと思われるとはトホホである。


「スクロール職人って儲かるんだな〜」ケラとバンがまた顔を見合わせた。

そしてにっこりと笑う。

「飲みに行こうぜ!いや、飯食いに行こう。キルの奢りでな!」

ケラとバンがキルの両側から肩を組んだ。


明日からまたダンジョンに潜るのだからコイツらと飲み食いできるのも今日を逃したらしばらく無理だ。

久しぶりに一緒に晩飯を食いに行くことにしよう。

「良いけれども、俺のクランに飯の準備がされてるはずだから断ってくるので店を決めてくれ、そこで合流しよう。こんばんは俺が奢るよ。」


「ヒャホー! バンバン亭ってしってるか?大盛りで有名な。」


「しってる、じゃあ そこに行く途中でチョット抜けて連絡して来るから。」


「大丈夫だぜ、お前のクラン経由で行ってやるよ。話しながら行けばすぐだろう。」


キルはケラとバンと一緒に歩き始めた。

繁華街へ向かう途中にレスキューハンズのホームは有る。

ホームの前で2人に待っていてもらいキルは晩飯に参加できないことをクッキーに伝えると再び2人と共にバンバン亭に向けて歩き始めた。


「此処がキルの所属するクランか〜、メンバーは何人?」


「今は〜9人、、、かな。」


「へーーー。やるじゃん。それなりの大きさだね。よくいれてもらえたな?」

ケラが不審そうに尋ねる。


「う、、、うん。 て言うか、、、新しく作ったんだよ。俺たちで。」


「「へーーー。」」


「冒険者を辞めようかと思ってる新人をケイトさんに面倒見ろって紹介されて、それでドンドン増えて今9人。ケイトさんにクランを作れって言われてできたばかりなんだ。」キルは頭の後ろを描きながら説明した。


「まるでクランのリーダーの様な口ぶりだな?」とケラ。


「うん。実は俺がクランのリーダーなんだ。」キルは少しうつむいた。


「ハハハハハ!キルがリーダーなんだ。凄いクランだな?でどんな依頼をこなしてきたの?」ケラとバンは興味深々だ。


「まだ依頼は受けたことがないんだ。草原で狩りをして素材の買取をしてもらったり、ダンジョンに潜ったりしてたかな。」


「なるほど。依頼を受けなければ、未達成にもならないものな。少なくとも罰金は発生しないからな。」わかったぞと言う顔のケラである。


別に依頼の未達成を避けるために今まで狩りをして素材の買取をしてきた訳ではない。

依頼をこなすよりより多額のお金が稼げるからそうしていたのだ。

依頼を受けていたのでは日に1人当たり1〜2万カーネル程度しか稼げないものが多いのだから全然割に合わないのだ。

ちなみにダンジョンに潜るのは常時依頼というものの中には含まれているのだが、それは此処で話している依頼には含んでいない。


3人はバンバン亭に着くとキルの奢りで旧交を温めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る