111 フクラダンジョン第3階層 3
キルは索敵の情報をパーティーメンバーに伝えた。
「俺は1人で先行するが皆んなは9人が離れない様に急いで着いて来てくれ。
くれぐれも脇道からの攻撃に注意しながら走るんだぞ!」
そう言うとキルは全速で走り出し9人からはアッと言う間に離れていた。
9人も上級に進化していたがキルとはそれほどステータスに差が有ったのだ。
キルは走った、もうすでに1人は死んで残り4人の戦線も崩壊しているに違いなかった。
救助に一刻を争う状態、キルはトップスピードで道を急ぐ。
前方に交戦中のパーティーとシザードウルフチーフ、シザードウルフが見えて来た。
3頭の注意を引くためにファイヤーボムを冒険から離れた位置に放った。
勿論魔物に当たらないことは計算済みだ。ただ攻撃の手を止める事が狙いなのだ。
シザードウルフチーフ達の注意がキルの方に向く。
すでにキルの魔法攻撃の射程内に3匹の魔物をとらえている。
冒険者達は密集陣形で魔物の攻撃を耐え忍んでいたがかなり手傷を負っていた。
キルはアイスサイランダーを唱えウルフの足元から円錐状の氷が生えてシザードウルフを襲った。ウルフは飛び退いてその攻撃をかわした。
冒険者達とウルフの距離は離れ冒険者の余裕ができた。
次の瞬間キルは3匹の魔物との近接戦闘に入っていた。
シザードウルフに切り付けてその首を飛ばしていたのだ。
そして冒険者と魔物の間に割って入る。
「助けいるか?」大声で叫ぶキル。
「頼む!」という声が響いた。
遠くに『レスキューハンズ』のメンバー達が走ってくるのが見えた。
キルはシザードウルフチーフにファイヤボムで牽制攻撃をかまし即座にシザードウルフに斬りかかる。
シザードウルフは一刀の元に切り殺されて煙に変わった。
そしてシザードウルフチーフを睨むキル。ジリジリと間合いを図り体制を整える。
シザードウルフチーフは両手の刃物、爪を前面に構える。
『レスキューハンズ』のメンバー達が走って近づいて来た。
ウルフチーフはキルの視線が『レスキューハンズ』のメンバー達を確認した一瞬の隙を狙って飛びかかった。
だがキルに隙はなかったのだ。
ウルフチーフは無数の斬撃にさらされていた。上級剣士アーツ千斬剣だった。
大きな煙が上がり魔石がガコンという音を立ててキルの前に落ちてき来た。
パーティーメンバー達が到着した時にはキルが魔物を全て倒していたのだった。
「終わったっすか?」息を切らしながら到着したケーナが聞いた。
「今倒したところだ。」キルが答える。
『レスキューハンズ』のメンバー全員がすでに集まっていた。
キルは助けた冒険者に声をかける。
「魔物を横取りしてしまった様で悪かったかな?」
「イヤ、君が来てくれなければ俺たちは全滅していただろう。助かったよ。ありがとう。」4人のうちの1人がそう答えた。死んだ仲間の生死を4人は確かめていたがダメだろう。索敵で気配が消えた時点で息はない。
「俺たちはクラン レスキューハンズだ。俺はBランク冒険者のキル、よろしくな。」
「Bランク冒険者!、、AかSかと思ったよ。とてもBランクとは思えない実力だな。なにせ俺たちは5人ともBランクなのだからな。Bランクパーティー ゴルゴダのメサだ。君は命の恩人だ。この恩はどこかで返そう。」黒髪黒眼のマッチョマンが握手を求めて来た。
キルはその手を取って答える。
「お互い様だ。今度俺たちのピンチの時は助けてくれ。よろしく。」
「勿論だ。俺はフカ、盾使いだ。ありがとうな。」青眼茶髪のゴリマッチョが答えた。
「ヒーラー(聖職師)のルルカです。助かりました。」緑眼青髪のショートヘアの女が感謝を伝える。
「魔術師のドラだ。感謝する。ところで魔力回復薬を持っていたら売ってくれないか?」赤眼赤髪のノッポが訊ねてきた。
「特級魔力回復薬なら6000カーネルで買ったものだが幾つ欲しい?」
「俺とルルカの分2つ分けてもらえるとありがたい。15000カーネル出す。」
「いや、12000カーネルでいい。数に余裕があるからもう少しなら分けてやれるぞ。戻るのに必要だろう。4つくらい必要なんじゃないのか?」
「実はそうだ。本当に分けてくれるのか?君の分が足りなくなるだろう。」
「イヤ、俺は剣で戦えるからな。それにこの大所帯だから、余裕はある。」
「なら4つもらえるとありがたい。24000カーネルでいいのか?」
「勿論。無事に外まで戻って欲しいしな。ヒールもかけてやるよ。」
「イヤ、そこまでしてもらっては申し訳ない。此方にもルルカというヒーラーはいるのでな。」魔術師のドラがそう言うと、青髪の女も頷いた。
「そうか、じゃあ気をつけてな。」上の階までの間には魔物の気配は無さそうだしブラッドオーガはまだ復活していないのを索敵で確かめてキルは別れを告げる。
そして反転してもう少しこの階層での狩りをする為に脇道の探索に向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます