105 ルビーノガルツ侯爵

迎えの馬車に乗りルビーノガルツ侯爵邸を訪れたキルはギルバートに連れられて迎賓室で侯爵を待つ。流石に侯爵家の迎賓室だけあって高価な調度品が飾られている。


迎賓室ではクリスがキルを迎えてくれた。そしてクリスと一緒に立派な椅子にかけて侯爵の来るのを待つ事になった。


「クリス、話はどうなっているの?」キルがコッソリと現状を聞くと、

「大丈夫。父は私の願いを聞き入れてくれたわ。」とクリス。

まずは一安心かなと思うキルだった。なんだ俺が来なくてもよかったんじゃないか?


侯爵が部屋に入って来た。整った顔立ちのスラリとしたナイスミドルだ。クリスは父親似かなと思うキルだった。


「ムスメが世話になっているそうだね。わざわざ来てもらってすまなかった。本当に14歳の若者なんだね。もっと歳上の冒険者と一緒なのかと思っていたよ。」


「初めてお目にかかります。キルと申します。冒険者パーティー緑の草原のリーダーをしています。」とキルが挨拶をする。


「冒険者になれない敬語は求めないから普通に話してくれて良いよ。これからもムスメが世話になりたいと言っているのだが君はそれでも構わないのかな?」


この侯爵様はザックバランな性格の様だ。あまり偉ぶったりしない貴族には珍しいタイプと言えるな……と思うキル。


「勿論です。クリス、いや、クリスチーナお嬢様が戻って来てくれることは俺にとってもパーティーにとっても嬉しい事です。」キルも本音で話す。


「ところで君のパーティーはバカに人数が多い様だけれどどういう訳なのかな?それも13歳の女の子ばかりだそうじゃないか?」


「はい。今年冒険者を始めたばかりの子達ですね。ギルドの受付のケイトさんに紹介を頼んだのが始まりです。俺がケーナとクリスチーナお嬢様を紹介してもらってパーティーを立ち上げました。その時は3人だったんです。その後2人ずつ冒険者を辞めそうな子の面倒を見てくれないかとケイトさんに頼まれまして3回で6人増えて今は9人になってます。」


「そういう経緯があったのかい。それにしても今は皆んな上級冒険者になっているとか?それは本当かね?」


「はい。ダンジョンから戻った今は全員上級戦闘職の冒険者ですね。」


「普通に才能のある子を紹介されたという事なのかい?上級のジョブを持つものは全体の1割と聞くけれど。」


「それはですね。俺がジョブスクロールを使って才能を伸ばしているからですよ。今のところ上級までのジョブスクロールは作れますからね。それを出世払いで買ってもらって能力を上げているんです。お嬢様にも買って頂きましたよ。」


「なんだって!君はそんなものが作れるのかね?」


「ジョブスクロールをご存知ですか?」


「聞いたことはあるがなかなかお目にかかった事はないな。そういえば最近王都の騎士達の間で手に入れたという話をよく聞くな。」


「はい。それは多分俺が作ったジョブスクロールだと思いますよ。」


「とても高価なものだと聞くが?」


「中級になれる⭐︎2のジョブスクロールは300万カーネル、上級になれる⭐︎3のジョブスクロールは1200万カーネルですね。」


「何!そんなに高価なスクロールを娘に使ったのか?金はどうしたのだ?」

驚いて侯爵が問いただした。


「魔物を狩ったその儲けで払って頂きましたよ。そのほかにも魔法を覚えるためにたくさんのスキルスクロールも買って頂きました。ギルバートさんとお嬢様の狩った魔物の代金で払ってもらいましたから借金はもう無いですよ。」笑顔で答えるキルである。


「そんなにたくさんの魔物を狩ったというのか。」


「はい。私は荷馬車10台分の収納力のあるマジックバッグを持っていますので輸送に苦労するということがありません。なので1日に100万カーネル近く狩ることが可能なんですよ。運ぶ時間が少ないですからね。それに索敵を覚えてもらったので魔物を探す時間も少ないですからね。」


大体において普通の冒険者は移動に時間がかかり、獲物を見つけるのに時間がかかり、持ち運ぶ量に制限がかかる。この3つによって稼ぎが大きく減ってしまうのだ。


そういった意味では上級冒険者用のダンジョンはもっとも稼ぎが良いといえた。


「なるほどたくさん魔物を狩れるので経験もたくさん積んで成長が早いということか?」

理解が早い侯爵である。

「で、これからはどうするつもりなんだね?」


「そうですね。メンバーが今のままならまたダンジョンに潜る事になるのでしょうかね?」と答えるキル。


「というと?」


「いえ、まだ決めていないのですが、このままならそうするんじゃないかなということです。また辞めそうな子の面倒を見る様に頼まれた時はすぐにダンジョンに潜るというわけにはいきませんけれどもね。」


「なるほど、まだメンバーが増えるかもしれないのだね。その人達も上級冒険者まで引き上げるということかな?」笑いながら侯爵が聞いた。


「頼まれれば仕方ないですからね。ギルドにはクランを作って欲しいと言われているのでこれからも紹介者は増えるのかな〜なんて思っていますよ。それに指導パターンは出来上がってますしね。」


「なるほど、思っていたよりも面白い人の様だ。これからも娘をよろしく頼みましたよ。」


キルは侯爵からクリスの事を頼まれるのだった。

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