104 クリスとギルバート 2

午後の狩りを始める。また同じ組み合わせで2チーム編成だ。2時頃にケーナ班がキル班の獲物を回収して回ってくれてそのまま四時半まで狩りは続いた。


キル班は68匹のライガーとリカオウ45匹、ケーナ班はライガー73匹を倒して1日を終えた。その日の稼ぎは940万カーネル、1人あたり94万カーネルだ。スクロールの代金を差し引いてそれぞれに渡された。


翌日はまたライガー狩りで1人95万カーネルほど稼いだ。そして明日後日はフクラダンジョンに向かった。



フクラダンジョンに入る前に全員にスキルスクロールで魔法やアーツを強化した。

まだ経験値が足らないが⭐︎3のジョブスクロールが必要な3人にもジョブスクロールを使っておく。ダンジョン内で経験値が満たされれば上級に進化してくれるはずである。


今回は人数も多いので交代で夜の警戒をしながらダンジョン内で野営にチャレンジすることにした。マジックバッグの中に水食糧魔法回復薬などを充分に保存してダンジョン内に侵入した。


マジックバッグの中では時間が止まっているため暖かい料理を丸ごと保存できるのはありがたい。


夜はキル、エリス、ユリア、班とユミカ、マリカ、ルキア、モレノ班とクリス、ケーナ、ギルバート班の三交代制で警戒をする事にした。


ベースキャンプを1、2階層の連絡地点近くに敷いてグレートミノタロスが復活し次第キルが狩りに行った。


昼間はベースでオーガを待ち構えるケーナ班と周りを探索しながら狩りを行うキル班に分かれてレッドオーガを狩る作戦だ。キル班はクリス、ギルバート、ルキア、モレノだ。オーガ単体で遭遇した時はトドメは中級の3人にさしてもらった。


1日に大体ケーナ班は50、キル班は70体のレッドオーガを狩った。これは日帰りで狩りをするよりも狩りの時間が長かったせいだ。そのほかにグレートミノタロスを4匹キルが狩る。


10日の間にはクリスもルキア、モレノも上級に進化していた。そして10日の狩りを終えて地上に戻った。ギルバートの心配をよそにダンジョンアタックは無事に終わったのである。そしてクリスを上級魔術師にするという依頼は1か月を待たずに達成された。


ダンジョン内でも欠かさずスクロール作りをしていたキルは、

7日目に聖級スクロール職人に進化した。と同時に聖級スクロール職人のアーツ(紋様辞典)が生えたのである。これはあらゆる紋様が調べられる辞典である。


聖級スクロール職人に進化したキルは鎧竜の魔石を使って特級ジョブスクロールを作ってみた。剣士、魔術師、聖職師、盾使いの4つのジョブだ。


そして⭐︎4のスクロール作製に成功しその4つのジョブが特級に進化したのだった。

それに伴いステータスがグンと伸びて、MPも増え作れるスクロールの数も多くなったのである。


聖級スクロール職人………聖級といえばもう国に数えるほどしかいないレベルであった。


パリスの街に帰り解散する。10日のダンジョンアタックの後だけに明日は休みにする。

そして3人の上級進化のお祝いとして皆んなで夕食会をすることになった。


キルとクリスはギルドに活動を報告してクリスのパーティーからの抹消を回避した。

そして明日クリスはルビーノガルツ侯爵に上級魔術師になった事を報告にいくと言う。

そして冒険者を続ける事を許可してもらうのだ。


ゼペック爺さんを呼んで来てキル達11人は三日月亭という高級お食事所に行くことにした。代金はキル持ちである。


「今日まで10日間のダンジョンでの野営はとても体に負担がかかっていると思います。みなさんよく頑張ってくれました。その甲斐あってクリス、ルキア、モレノの3人が上級のジョブに進化いたしました。おめでとう。これからもお互い助けあって頑張っていきましょう。今日は美味しいものを存分に食べて明日はゆっくり休んで下さい。それでは皆んなの健康を祈念して乾杯!」キルの挨拶で宴会は始まった。11人もいると一部屋貸し切りである。次々に飲み物と料理が運ばれてくる。


「ルキア、モレノ、おめでとう。君たちはもう上級のジョブを持つ冒険者だよ。もう駆け出しと呼べる実力では無いんだ。すぐに冒険者ランクも上がるから楽しみにしていると良いよ。」


「ハイ、ありがとうございます。みんなキルさんと皆んなの助けがあったからです。これからはパーティーのために頑張ります。」とルキアとモレノ。


「よかったね。だからキルさんに任せれば大丈夫と言った通りでしょ!」「うん。うん。」とエリスとユリア。


「借金は自然に消えちゃうから心配ないよって言ったとおりだったでしょう。」とマリカ。


「ルキア、モレノよくやり遂げたぞ。」とユミカ。


クリスとケーナ以外の6人とは少し距離感があるようだ。流石にいきなり現れた貴族の先輩というのはなかなか取っ付きにくいのかもしれない。


キルはクリスに声をかける。「クリス、これで君は冒険者を続けられるんだね?」


「そのはずです。父は約束は守る人ですから。それにもし父が約束を破るようなら私、暴れてしまいますから。」とクリス。


「お嬢様、そんなことはおやめください!」ギルバートがあわてる。クリスの強さを一緒に戦ってきて理解しているギルバートだ。


「冗談よ、それに父は約束は守る人です。そのような事にはなりませんよ。」


「左様でございますな。私もそうならない様侯爵様を説得しましょう。」とギルバートは言うとキルの方を向き直った。


「キル殿、よろしければ明日お迎えを差し上げますので侯爵様とお会いになって頂けませんか?貴方の実力、人となりをお知りになれば侯爵様もご安心になられる筈。どうかお願い申し上げます。」


いきなりの無茶振りに参ってしまうキルだ。そんなキルを見つめるクリスの顔には懇願の色が浮かんでいる。


「わ、、、わかりました。明日ですね。」


キルの答えを聞いてクリスの顔が明るく輝く。そんなクリスを見てキルは(まあ良いか)と思うのだった。

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