103 クリスとギルバート 1

ギルドの前で待つキル。


きゃっきゃと話をしながら7人の少女達が歩いて来る。皆んな屈託のない笑顔だ。新しく入ったルキアとモレノもみんなともう馴染んだようだ。


「キル先輩、まだ行かないっすか?」出発の掛け声が遅いのでケーナが声を上げる。


「ケーナ、昨日クリスが工房にやって来たんだ。」


「エ!クリスが戻って来たんすか?また一緒に冒険者をできるんすか?」ケーナはキルに飛びつく。


顔が近い、、、、


「落ち着けケーナ。クリスは今日から一緒に狩りをする。もうすぐ来るはずだ。」

と言う間もなく馬車が向こうから来るのが見えた。それは平民が使う馬車ではなく一眼で貴族の使う馬車である事がわかった。


「あ、きっとクリスだ!」ケーナが喜び手を振り出した。


「今日からもとメンバーのクリスが一緒に狩りをする。クリスは貴族だが温かく迎えてくれ。頼むぞ皆んな。」とキルが皆んなに頼んだ。


「もとメンバーって、1度やめたって事ですか?」とエリス。


「イヤ、実家に連れ戻されて少し休んでいただけだ。」上手く説明できないキルである。




馬車が止まり中からギルバート、そしてクリスが降りて来た。

ギルバートはクリスが降りて来るのを傍で待機する。そしてクリスの後ろからついてくる。


クリスに駆け寄るケーナ。クリスも駆け寄り2人は手を握る。

「クリス、戻って来れたんだね。」「ええ、やっと戻って来れたわ。」2人は涙目で再会を喜んだ。


「キル殿、今日はよろしくお願いしますぞ。」とギルバートがにこやかに声をかけて来た。


「大丈夫ですよ。お任せください。ギルバートさん。皆んなを紹介しますね。」キルはパーティーのメンバーを紹介した。キル、クリス、ギルバート、ケーナ、エリス、ユリア、ユミカ、マリカ、ルキア、モレノの10人の大所帯だ。そして皆んなでフライで移動して狩に出かける。


「二手に分かれて狩りをするよ。ケーナ、エリス、ユリア、ユミカ、マリカの5人と俺、ルキア、モレノ、クリス、ギルバートの5人に分かれます。ケーナ、そっちのリーダーを頼む。マジックバッグを渡しておくから収納しながら12時になったらこっちに合流してくれ。」


「了解っす。クリスお昼は一緒に食べようね。」と言うとケーナは手を挙げヒラヒラさせながら離れていった。


「さて、こちらの狩の作戦ですが、ライガーを1人1匹相手にする感じでいきますよ。6匹目7匹目は俺が倒しますね。」とキル。


クリスはライガーを相手にする事は経験しているので問題ない。ギルバートの方が初めてのライガー狩りに戸惑っていたようだがそこは上級騎士だけに上級騎士のアーツ エナジーランス、豪斬剣、パワーシールド、ステップカウンターなどを使ってライガーを圧倒し始めた。


ルキアは盾使い、モレノは槍使いのアーツとヒールを使い最後にはライガーを倒していく。そしてだんだんとライガーを倒すのになれていった。


キルは余裕で残りのライガーを切り刻む。午前中の間に5つの群れ、31匹のライガーを狩った。なおかつライガーの死骸に集まって来たリカオウの群れもキルが追い払いながら15匹のリカオウを殺したのだった。


ケーナ達も5つの群れ33匹のライガーを狩っていた。彼女達はやや早めに切り上げてキル達の倒したライガーの収納をしながら合流してくれた。昼飯ように1角ウサギも10匹倒しながら。



「キル先輩、昼飯の食材狩ってきたっすよ。」

「じゃあ、飯にしよう。」

「焼き始めてもいいですか?」とエリス。

「良いぞ。10人分はたいへんだろう。じゃんじゃん焼いてくれ。」とキルが頼んだ。


ウサギ肉を噛み締めながらケーナとクリスが懐かしそうに話を始め、ギルバートがキルに信頼の目を向ける。


「キル様はCランクの冒険者と伺っておりましたが、実力はそのようなものでは有りませんな。Aランクの実力者のような強さを今日は拝見させていただきました。クリスお嬢様が信頼を寄せるのも頷けます。」


「おだてないで下さい。俺はまだBランクに上がったばかり、Aには届いていませんよ。ケーナもBランクに上がったのですよ。2人共上がったのはついこの間ですがね。」

ギルバートの視線がなんだか暑苦しいんですけど。


それを耳にしたクリスが驚いたような顔色を見せる。その顔には自分のいない内に置いて行かれてしまったという思いとキルとケーナに対して祝福する思いとが混在していた。


「ケーナ、あなたBランクに昇進したの?」とクリスがケーナに確認する。

「そうっすよ。クリスも少しすればすぐなれるっす。」


「おめでとうケーナ。そうね。キルさんについていればすぐに追いつけるわよね。」


クリスとケーナの話を聞き流してギルバートはさらにキルを褒め称える。

「キル様の身のこなしを拝見するにライガーの攻撃はまるで当たりそうに有りませんでしたなあ。素晴らしい。」


「それは器用さのステータスが高いせいだと思います。スクロール職人は器用さのステータスが高いので。」


「成程、それにしてもギリギリでライガーの攻撃を交わしながら剣を振る様はまるで剣の達人のようでしたよ。上級騎士のわたしが見ても驚くほどにね。」


キルは剣士としても上級のジョブランクである。その上にステータスは特級なのだからそう見えても不思議はない。


「ギルバートさんって上級騎士だったんすか?すっげ〜。」驚くケーナ。そういうケーナももう上級弓使いなのだが。


「私など、大したことはありませんよ。」謙遜するギルバート。


「それにしても全員がライガーを単独で倒せるとはこのパーティーのレベルが高いのには驚きですね。クリスチーナお嬢様もこれほど強くなられていたとは思いませんでした。」


「私、ライガー狩りは前からできましてよ。ギルバート。」とクリス。


「数日ライガー狩りをしたら、ダンジョンに潜るつもりだからね。そのつもりでね、クリス。」とキル。


「わかりました。ダンジョンは何処のダンジョンでしょうか?」


「フクラダンジョンだよ。」


それを聞いたギルバートが驚いた。「フクラダンジョンといえばAランクダンジョンではないですか?危険です!上級冒険者数人で入るダンジョンじゃないですか?」


「何度も潜ってますから無理をしなければ問題無いと思いますよ。フクラダンジョンの第2階層のレッドオーガを相手にレベル上げをしようと思います。それにパーティーには上級冒険者は6人ギルバートさんを入れれば7人いるんですから。」


それを聞いて納得するギルバートだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る