78 ⭐︎2のジョブスクロール1

「キル先輩〜! 」ケーナが元気に声をかけてくる。


今日は荷馬車が借りられているのでライガー狩りの予定だ。


「キル先輩、昨日は突然押しかけてすみませんっす。自分昨日考えたっすけどー。

ワイバーンとか、オーガとかを狩に行った方が良くないっすか?魔石手に入るし。買うと高いじゃないっすかあ。」ケーナが途方もない事を言い出した。


「そりゃあ、自分で狩れれば、それに越したことはないけれどもなあ。しかしノウハウがぜんぜんないぞ。どこで取れるとか?どのくらい強いか?とか。」とキル。


「ケイトさんに聞いてみるっす。知らなかったら他の方法で調べるっす。」とケーナ。「ケイトさんに聞いてみるのは良い考えだな。良し、教えてもらおう。」とキル。


キルは受付のケイトに話しかけた。

「ケイトさん、俺オーガとかワイバーンを狩りたいんですけれどどうしたら良いでしょうか?」


「え! オーガ? ワイバーン?  急にどうしたの?そんな強い魔物を狩りたいなんて何か訳でもあるの?」ケイトは聞き返す。


「魔石が欲しいんです。ワイバーンの魔石。それかレッドオーガの魔石。どちらでも良いんですけれど。」


「ワイバーンは北の方に2日ほど行った所の崖に群れでいるらしいけど群れを狩るのは無理ね。」ケイトが場所と様子は教えてくれたが狩りは無理と言われてしまった。


「Bランクの冒険者が複数でワイバーン1匹を狩るのが普通なのよ。群れを相手にするのはAランクでもかなり厳しいわね。相性は有るんでしょうけれど。」ケイトが続ける。


「ワイバーンは飛ぶから攻撃を当てること自体難しいらしいわよ。それとレッドオーガの方だけれど、彼らも村を作って生活をしているから彼らを狩る事は村ごと全滅させる事を意味するわ。そうでないと彼らは復讐にやって来る。下手に手を出さないでね。」


なるほど、レッドオーガを狩る時は相手を全滅させないと周りが迷惑するらしい。


キルもケーナも飛べるからワイバーンとの相性は良い方かもしれないが、自力の面でケーナには同行してもらう事に無理がありそうだ。それに飛んでいるワイバーンに矢を当てるのは自分が跳べても難しい事に変わりはないだろう。


オーガであれワイバーンであれ、いずれにしてもハードルは高いと思われる。


「難しいのはわかりました。諦めてライガーを狩りに行く事にします。」とキル。


そして今日もライガーを狩った。


「ケーナ、ワイバーンとオーガの件は没だな。」


「そうっすね。他に適当な魔物がいれば良いんすけどね。」


「そうだな、あとはダンジョンの中かな?」


「ダンジョン!ダンジョンですよ。その手が有りましたよ。」ケーナがダンジョンという言葉に食いつく。


「ダンジョン深くは中で野宿をしなければならないし、浅ければ大した魔石は取れないだろうなあ。」


「野宿上等っす。自分頑張れるっす。」


「ふたりのパーティーだと夜の警戒が大変だから4人くらいのパーティーで臨みたいよな。」キルは現状の人数では無理な気がしているしすぐにはメンバーは増えない。


「掲示板で募集してみたらどうっすか?自分女の子友達が欲しかったとこなんす。」


「成程、あとケイトさんに良さそうな人を紹介してもらうのは手堅いかもしれないな。」キルはケーナとクリスを紹介された経験からケイトに頼るのも信頼できると思うのだった。


ギルドにに戻りケイトによさそうな冒険者がいないか尋ねてみる。


「そうですね。心当たりが無い事もないですが、少し探してみますね。候補がいたら声をかけます。」ケイトが探してくれるという。ありがたい話だ。


「ケイトさん。いつもありがとう御座います。」キルが礼を言う。


「冒険者の助けをするのもギルドの仕事ですから、気にしないで下さい。」とケイトは通常業務の範囲だと言った。


キルとケーナはケイトが紹介してくれるまで待つ事にした。それまではライガー狩りとダンジョンの情報収集だ。そして今日も工房に帰ったらスクロール作りである。


帰りに途中で生産者ギルドに昨日作った⭐︎2のジョブスクロールを売りに立ち寄った。


生産者ギルドのオッサンがキルを見るなり声をかける。


「オヤ!キル君じゃないか、昨日ぶりだな。」


「昨日作ったぶんのジョブスクロール持って来ましたよ。」とキル。


「ヨシ!奥の部屋で話そう。」オッサンがキルを奥の部屋へと招き入れた。


「どれだけ作れたんだ。見せてみろ。」


「これです。」キルは昨日作った16個の⭐︎2のジョブスクロールを出して見せた。


「オオ!良いね。良いね。色々有るのも良いが、剣士と魔術師、槍使い、盾使いは人気だ。あと騎士は特に人気だぞ。騎士は騎士団でまとめて売れる事もある。これからはその5種類を優先的に作ってくれ。」


「はい。」


「16個だな。2400万カーネルだな。」計算を確かめながらオッサンが言った。


「はい。」


「王都の生産者ギルド本部が喜んでいてな、もっとあるかと言われたぞ。作れる者がいると言ったらもっと作らせろと言われた。もっと作ってくれ。買い取るからな。」


「はい。」これは嬉しい。全部買い取ってもらえなかったらどうしようと思う事も有ったのだ。でも訓練にもなるし経験値を稼いで上のランクに上がりたいから売れなくても作り続ける事には変わりないが、買ってもらえれば材料も買うことができる。


キルは2枚の金板と大金貨4枚を渡された。


「これで、2400万カーネルだ。」オッサンがキルに言う。


「5種類を作ってくれ。また持ってこい。頑張れよ。」


「幾つくらい要りますか?」


「それぞれ10くらいは買い取るぞ。中でも騎士と剣士は20でも良い。」


「わかりました。暫くは作っていても大丈夫そうですね。」


「そうだな。ただ次の買取は少し後にしてくれ、7日後だな。こっちにも資金繰りという奴があるからな。すまんがな。」


大金を持ってキルは工房に帰るのだった。


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