76 ジョブスクロールが売れた

盗賊の宝の8割程貰えることになってかなりの臨時収入が手に入った。なんと2人で300万カーネルほど手に入る事になり、半分ずつに分ける。ケーナは申し訳なさそうにキルを見る。


「いつもこんなに貰っちゃってすまないっすね。」気まずそうなケーナ。


「気にしないで良いよ。」キルはかえって気を遣われる方が嫌である。


工房に帰るとスクロール作り。そして次の日は荷馬車を借りてライガーを狩に行った。


ライガーを狩ってギルドに戻ると商人からの指名依頼が入っていた。この前の商人の護衛任務である。受けても良いのだが、8日程度の日程で1日15000カーネル。食事付き。盗賊討伐の様なおまけの収入は見込めない。この手の仕事にしては悪くはない報酬だがキル達にしては稼ぎは少なくなるし、キルはその間スクロール作りができなくなりそうだ。速く特級スクロール職人になりたいキルにとってはこちらの方が痛手である。


ケーナもキルと一緒であまり乗り気ではない様だ。

商人には悪いが今回は断らせてもらった。そして次の日もライガー狩りを続ける。ステータスの上がったキルにはライガーの群れに囲まれてもそれ程危険性は無い。


2人での狩りは3人での狩りとは同じ訳にはいかない。ほぼキルは接近戦を想定してヘイトテイカーで全ての敵を相手にしつつ、それを殲滅していくイメージだ。ケーナは離れたところから強射で援護という感じだ。キルのステータスが劇的に上がったために苦も無くこういう事ができる様になったのだ。(上昇前からできなくもなかったかもしれないが)


実際のところケーナがいなくてもこの狩りは可能だろうし、ヘイトテイカーを使わねばならないぶん手間がかかっているのかもしれない。だからといってパーティーを解散するという考えはこれっぽっちも無いキルである。思いつかないといった方がいいかもしれない。


どちらかというとケーナの方が自分の存在意義に疑問を感じてこのままで良いのか悩みを抱えてしまっている。かと言ってケーナが弓使いとして能力的に物足りないという訳では無い。キチンと矢を当てて獲物を倒しているのだから。ただケーナよりもキルが圧倒的にたくさんの獲物を同じ時間内に狩れてしまっているだけだ。足手纏いでは無い、足手纏いでは無いのだ、、と自分に言い聞かせるケーナである。


翌日は荷馬車が借りれず休みになった。

休みになりクリスがいないと1人が寂しくなるケーナ。仕方なくキルの元を訪れる。

同年代の女の子の仲間が欲しいと思うケーナである。


キルは朝からスクロールを売るために生産者ギルドと商業ギルドに行こうとしていた。

突然の朝のケーナの訪問に驚くキルとゼペック爺さん。


「ケーナ、朝からどうかしたのか?」キルが聞く。


「イエ。 暇だったので何してるかなと。」とケーナ。


「俺はコレから生産者ギルドと商人ギルドにスクロールを買ってもらいに行こうと思ってね。一緒に来るかい?」


「暇潰しに、一緒に行くっす。」とケーナ。


2人はまず生産者ギルドにやって来た。


生産者ギルドのオッサンがキルを見つけて声をかける。

「オヤ、キル君、今日は彼女連れかい?」


「やだな、揶揄わないでくださいよ。今日はスクロールを買い取ってもらいたくて来たんですよ。何か買い取ってもらえるものはないですかね?」


「そう言えばこの前のジョブスクロールな、仕入れたいって奴がいて頼まれてたワイ。売れずに残ってるんだろう。」


「はい。あれから⭐︎2もいくつか作ったんで鑑定お願いできますか?」


「ナナ、、ナーニー!  ⭐︎2のジョブスクロールだと。もし本当なら買い取ってやるぞ。⭐︎2のジョブスクロールは欲しがっている人は多いんだ。なにせ初級職が中級職になれるからな。それに作れる奴が居ないんだ。速く見せろ。」オッサンが食い付いてくる。


「えーと、コレが⭐︎2のジョブスクロールです。」キルは3つの⭐︎2のジョブスクロールを出して渡す。


オッサンが焦りながら鑑定を始めた。


「ア! ア、ア。  コレ本物だ。お前、できてるぞコレ!」オッサンがキルを見て口をパクつかせている。


「全部買う、コレ全部。」とオッサン。


「えーと⭐︎1のジョブスクロールは?」とキル。


「うん、それも買う。全部出せ。」


オッサン頭が動転しているのじゃないだろうか?


キルは⭐︎1ジョブスクロールを4つ出してオッサンに渡した。


オッサンが手を振るわせながら計算を始める。


「⭐︎2のスクロールは小売値が300万カーネルだから仕入れ値は150万カーネルだぞ!いいな。」


「ハイ。それでお願いします。」嬉しそうにいうキル。


「50万が4つと150万が3つか。650万カーネルだな。間違いないな。」オッサンが声に出しながら計算した。


ごくりと唾を飲み奥の職員に声をかけるオッサン。


「金貨、、金貨有る、、、?」


「は〜い。金貨65枚ですね〜。」


奥から声がして女の職員が重そうに金貨を袋に入れて持って来た。


オッサンがキルに金貨を数えながら渡す。「1、2、、、、65。  どうだ。」


どうだって言われても困るキルである。「は、ハイ。確かにいただきました。」


「この袋、サービスしてやるよ。あった方が良いだろう。」とオッサン。


「ありがとうございます。」袋があったら良いなと思っていたキルは喜んで答えた。


「⭐︎2のジョブスクロール、もっと作れるか?」


「魔石があれば作れるんですけれども、、、良い魔石が手に入りにくいんですよ。その

ジョブスクロールはワイバーンの魔石を使っています。そのくらいのランクの魔石を使わないと作れないんですよ。なので手に入り次第作りますよ。」とキルが言う。


「そうか、わかった。できたら買いたいから持ってこいよ。絶対だぞ。」


「ありがとうございます。」大喜びをして返事をするキルだった。


そしてキルは一旦、工房に帰る事にするのだった。

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