73 ケーナ Dランクに昇格

商人はいたくキル達のことを気に入ったようで、今度長旅になる時には連絡をすると言って村を離れるのだった。キル達もフライで飛んで帰ることにした。


ギフトに依頼完了の報告をすると受付のケイトさんが複雑そうな顔で話しかけてきた。


「あの〜、クリスさんの事なんですが、、、今回ご一緒してないようですが、、、お伺いしてもよろしいですか?」


キルもハッとするが仕方ない事なので話に応じる。

「はい。クリスは実家から迎えがやって来て連れ戻されました。必ず親の許可を取って戻って来ると言ってましたが、あの様子だともう戻らないかもしれませんね。」


「そうですか、、、では当面2人組ということでお仕事を紹介していきますね。それとクリスさんは休眠扱いとさせて頂き、3ヶ月活動がない時は冒険者資格は失効となりますのでそのつもりでお願いします。」


「そうですよね。わかりました。」


「それからケーナさんはDランクに昇格しますので冒険者証をお渡しします。」


横で聞いていたケーナは喜んだ。ケーナはかなり早いDランク昇格である。もっともケーナにはその資格に見あった実力が充分にあると思うキルである。


「おめでとう、ケーナ。もうDランクなんて凄いね。俺もつい最近Dランクになったのにね。ケーナはとってもスピード昇進だと思うよ。」とキル。


「おめでとうございます。ケーナさん。ケーナさんは本当にスピード昇格ですよ。受付の私が言うんだから間違い無いですよ。」とケイトもケーナを祝う。


「ありがとうございます。照れるっすね。みんなキル先輩のお陰っすよ。」とケーナ。


「そうですね。私もキルさんにケーナさんをお預けして良かったと思っています。これからもお二人の活躍、期待していますよ。」ケイトが微笑む。


キルも照れる。


「それから仕事を依頼したいのですが、盗賊討伐の依頼になります。他のパーティーとの合同になるんですがよろしいですか?」とケイト。


「はい。大丈夫です。」キルは答える。キルにとっては他のパーティーとの合同依頼は歓迎である。


「では明日、朝にギルドに集合ですのでよろしくお願いします。1人10000カーネルの依頼料なんですがよろしいでしょうか。」


「はい。わかりました。全部で何人の討伐チームを組む予定なのですか?」


「10人程度を予定しています。」ケイトがにこやかに答える。


狩に行った方が稼ぎは多いかもしれないが、何事も経験だしギルドの仕事をこなすことはギルドに対する貢献度も上がるのだ。ギルドとの関係を良好に保つ事は大切だと思うキルである。


「では明日頑張りますのでよろしくお願いします。」 と言ってキルとケーナはギルドを出る。 まだ日暮までは結構時間が有る。


「昇格祝いにゼペックさんも混ぜて今晩食事でもしないか?」


「良いっすよ。ゼペックさんとも話がしたかったすしね。」ケーナはキルの誘いに乗ってきた。


「じゃあ夕方ゼペック工房に来てくれ。とりあえず解散な。」


「キル先輩、これから何かする事が有るっすか?」


「魔石を買いに行こうかなと思ってな。」キルはランクの高い魔物の魔石が必要だと思っていたのだった。


「フーン。それって、スクロール作るためにっすか?」


「そうだな。スクロールの材料にできそうな魔石をみつけたいんでね。」


「じゃあ自分はコレで失礼するっす。魔石には興味がないんで。」と言ってケーナは去って行く。


キルは商業ギルドの直営店に魔石を探しに行った。


地方の街のギルドの直営店といえど、他の店には見劣りしない品揃えはあるはずだ。街でも大きな方に入る店になる。だが王都の様な大都市の様に品揃えがあるわけでは無い。そこそこランクの魔石はあるだろうがとても高価な魔石はあまり無い。


キルは店にある中でももっとも高い部類の魔石を確かめる。


今ある中ではワイバーンの魔石が3つほどあり、1つ30万カーネルしてこれなら星2のジョブスクロールを作る事ができそうだ。もっと高価な魔石はショウケースには飾られていなかった。


「コレより高い魔石は有りませんか?」とキルが店員に聞く。


「残念ですが今はコレが1番大きくて良い魔石になりますね。こういう魔石は狩りをする冒険者も高ランクの方になりますのであまり数が出ない商品になりますね〜。」と美人の店員さんが丁寧に答えた。若いキルの質問に冷やかしならやめて欲しいという気持ちが目の奥に見え隠れしている。


キルは金貨を出して「ワイバーンの魔石を3つ買います。」と言うと美人の店員は金貨を確かめてニッコリ笑った。


「お買い上げありがとうございます!3つでよろしいんですか?」金持ちの子供だったと思ったのかいきなり他の魔石も勧め出した。


「こちらのオークジェネラルの魔石も人気のある商品になりますがご一緒にいかがですか?」愛想笑いが板についている美人店員だ。


「イエ。今回はそれは結構です。今度はもっと高い魔石を買いたいですね。」


「90万カーネル、確かに頂きました。ではこちらの魔石をどうぞ。」


3つのワイバーンの魔石を受け取るとそそくさと帰るキルであった。帰ったらコレでジョブスクロールを作ってみようと思っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る