72 森の狼

北の森に逃げた狼を狩るためにキルとケーナは村人2人を連れて森に向かった。


森の入り口で村人に待機してもらいキルとケーナは森の中に分け入って行った。


索敵でウルフを探す。5〜6匹の群れを見つけてそちらの向かった。


索敵持ちにかかれば見つけるのはすぐで有る。5〜6匹くらいの群れなら今のキルにかかればなんの工夫も要らず近寄って切り殺すだけである。


飛びかかるウルフの攻撃をやすやすとかわしながらバッタバッタと斬り殺すのみだ。


器用さのステータスは攻撃をよけたり当てたりするときにはその身のこなしに大きく影響する。


キルはその数値が2000を超え文字通り桁違いの回避力を持っていると言って良い。

いわゆる一寸の見切りという奴だ。無駄な動きは少なくギリギリでウルフの爪や牙をかわし、それ故に体勢を崩す事なく次の動作に入る事ができる。次の動作、、つまりは攻撃だ。


何事もないようなスピードで歩きながら、キルの通った後にウルフの死体が転がっていった。


「ケーナ! 村人を呼んできてウルフを運ばせてくれないか。」


ケーナに6匹のウルフの死体の輸送のために村人を呼びに行かせ、キルは次の群れを索敵で探し出す。そして次のウルフ狩りに向かった。


ケーナは村人と一緒に荷車にウルフを積む。


積み終わる頃にキルが戻ってきて合流して次のウルフの群れの死体の元に3人を案内するのだった。


そんな事を繰り返してウルフを25匹倒して荷馬車に乗せ村に戻った。


村人は驚きながらキルに言った。


「冒険者ってあんなに簡単にウルフを狩ってしまうものなんですね。」


ケーナが代わりに答える。


「キル先輩は特別っすよ。普通は1日かけて1つの群れを見つけてその中の何匹かを狩れれば良い方で、逃げられる事だって多いっす。」


「そうですよね!普通そうですよね! こんなの今までみたことないですよ。」村人が改めてキルを称賛した。


荷車を村まで運ぶと、村には丁度商人が買取に来ていた。


「冒険者様のおかえりだ。 」商人がキル達を見てそう言った。


「おやおや本当に腕利の冒険者が来てくれてたんだね。半日でそんなにウルフを狩ってくるなんて、Bランクのパーティーかい?良くこんな村の依頼を受けてくれたものだな。」


キルは商人に挨拶がてら自己紹介をする。


「初めまして。Bランクなんてそんな高ランクでは無いですよ。それに俺のギフトはスクロール職人なんで、スクロールを作るのが本業ですから。良かったら、スクロールを買ってくれませんか?」


「エ!コレほど狩に精通している腕利さんがスクロール職人なんて信じられない事を言うね。今日はウルフを買って行くだけで精一杯でスクロールまでは買っていけませんね。これほどたくさんのウルフを仕入れられるとは思っていなかったものでね。」と商人にはスクロールの購入はピシャリと断られてしまった。


しかし、昨日倒したウルフと合わせてウルフ37匹とグレートウルフ1匹の買取をしてもらいウルフの魔石以外を1匹7000カーネルで37匹259000カーネル、グレートウルフの魔石以外を60000カーネルで買い取ってもらった。


「魔石はどうして売らないんだい?」と商人。


「魔石はスクロールの材料として使えるかもしれないので売らないんですよ。」とキルは答えた。


魔石はキルがいつものようにもらう。


「なるほどね。スクロールの材料として使うのか。材料を狩りで調達してるって事だね。だから冒険者もやっているという事ですか?」


「イエ、冒険者を始めたのが先なんですよ。たまたまギフトがスクロール職人なんでスクロール職人をする事になったのですけれどね。でもスクロールを作る事で自分の道が開けたように思いますね。ギフトって大切なんですね。」とキル。


「そうですね、自分のギフトも商人なので、こうして商人をしているのですが、ギフトが違うものなら別の仕事についていたでしょうからね。確かにギフトに合わせた方が上手くいきやすいですね。」と商人は笑った。


「そうなんすか?」とケーナ。


「ケーナも弓使いでギフトと仕事が一致しているから凄く上手く行っているじゃ無いか?」とキル。


「エ! 上手く行ってるのはキル先輩のお陰っすよ。自分キル先輩がクリスみたいにいなくなったらと思うとメチャ怖いっす。」


「ハハ、俺も1人になるのは怖いよ。これからもよろしく頼むぜ、ケーナ。」


「それは自分のいう事っす。自分のこと見捨てないで欲しいっす。役に立つっすよ。」


「見捨てるなんて気とは無いから心配するなよ。それにケーナは弓使いとしては頼りになると思うよ。なかなかの腕前だしね。」キルはケーナの心配を否定した。


「あなた方のような腕利の冒険者を護衛に雇えたら遠くに商売をしに行っても安心なのだろうなあ?護衛とかの仕事に興味ありませんか?」商人はキルに聞いた。


「条件次第ですよ。(緑の草原)というのがパーティー名ですので、ギルドに指名依頼をして頂けたら大丈夫ですよ。あとはゼペックさんのスクロール工房に住んでいますのでそこに連絡をして頂ければ大丈夫です。」キルは依頼の連絡の場所を教えておくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る