71 狼の群れ

夕方になり日も沈み出した頃、北の森に居た群れが近づいて来るのがわかった。


予想通りの時間帯に予想通りの行動をとる狼の群れ。暗くなるのを待って村を襲うつもりだろう。


「ケーナ、群れが近くに来ているぞ。狩りの支度をしておいてくれ。」とキル。


「わかったっす。矢も多めに持ってるっすから大丈夫っす。」とケーナ。


村長が心配そうな顔をしてキルたちのことを眺めている。


「村長さん、村の人は家から出ないようにさせてください。あとは俺たちが狼を倒しますから。大丈夫ですよ。狼の死骸の片付けはお願いしますけれど、それまでは出てこないでください。」キルは村長の不安を解くためにそう言った。


「村人にはここのところ日が暮れたら家から出るなとキツく言ってあるだで、そこは問題無いですじゃ。狼の数が多いようじゃが本当に大丈夫だか?」


「俺たちは上から攻撃するので狼から攻撃は受けませんよ。多分。飛べますからね。」


キル達が空を飛べるのは見て知っている村長だ。少しは安心したようだ。


キルは剣を抜きケーナは弓矢を構える。


そろそろ村のすぐ側まで狼の群れは来ているようだ。


2人が空を舞うと、村長も家に入って硬く戸を閉める。


2人は上空からウルフの群れの動きをうかがう。


最後尾にいる一際大きな狼は、やはり上位種のグレートウルフだ。


どうやらキル達に気づいて警戒しているようだが鳥か何かかと思っているのだろう。


気にせず村の方にやって来た。上空からケーナが矢を射掛け出し、キルは鎌鼬を放ち出した。驚いて後ろに下がる狼達。5匹ほどもう死んで倒れている。


後ろに下がりながらも鳥が獲物を食べに降りて来るのを狙って待つ狼の群れ。だが攻撃したのは鳥ではない。


近くで構える狼にケーナとキルがまた攻撃を加えた。3匹のウルフが倒れて他のウルフはグレートウルフのところまで後退する。


恨めしそうな顔でキル達を睨め付けるグレートウルフ。狼達の低い唸り声が響きわたっている。


ケーナが弓矢を構えるとグレートウルフがジャンプした。そして空を蹴りジグザグに駆け上がって来る。なんと空まで駆け上がって攻撃を加えるつもりらしい。


キルもケーナも予想外の動きに驚きながら、狙われたケーナは飛んで逃げ、キルもグレートウルフに鎌鼬で攻撃を加える。


グレートウルフは目標をキルに変えジグザグに空を蹴りながら近づいて来た。キルは慌てずにそして卒なく攻撃を加え続ける。


多くの傷を受けながらもグレートウルフはキルに近づき飛びかかった。


キルは慌てずにグレートウルフに鼻先にアイスシールドを展開する。


突然現れた氷の盾に鼻面からぶつかり弾き返され地面まで落ちてゆくグレートウルフ。


そこにキルは鎌鼬を浴びせ続けた。グレートウルフは地面に落ちさらに切り刻まれて絶命した。


残ったウルフの群れはボスを失いケーナの矢を受けると身を翻して森の方に駆け出した。まだ20以上は残っているウルフの群れだ。キルとケーナは追撃するが3匹を倒すにとどまり、残りのウルフは逃げおおせてしまった。


だがボスを失った群れはバラバラになってしまった事だろう。


12匹のウルフと1匹のグレートウルフを討伐し20匹くらいのウルフが自他の森に逃げ込んだ。20匹のウルフは心配だが多分いくつかの群れに分裂して村を襲うほど大きな群れではなくなるだろう。


取り敢えず村長にこの事を報告して村人にはウルフの死骸をあつめてもらう。その間索敵でウルフの動向には注意を払っていたが、森まで逃げて行ったようで近くからはその姿は消えていた。


「キルさんケーナさんありがとうがざいます。この大きな狼がボスですか?」村長が聞く。


「そうです。コイツがグレートウルフと言ってウルフの上位種です。コイツが居たので群れは30匹以上に膨れ上がっていたようですがコイツを倒したので群れはバラけると思いますよ。ですからもう村を襲ったりしなくなるんじゃないかと思いますよ。」



「と言うことはまだ20匹のウルフが森にいると言うことでしょうか?」不安そうに聞く村長。


「そうですけれど、森には今のウルフ以外にもたくさんのウルフがいるものですから気にしても仕方無いでしょう。」とキル。


「コレで依頼は完了っすね。グレートウルフと12匹のウルフを倒して50000カーネルなんて報酬が安すぎですよね。」とケーナ。なんとハッキリ言うやつなんだと驚くキルであった。


「しかし、もう少し森の狼を狩って行ってくださらんかのう。」と村長が泣き目で頼み込む。人の良いキルは村長が可哀想になり条件を出した。


「それでは森で狩ったウルフを運搬する事と適正価格で買い取ってください。」


「狼は買取に来てもらう段取りはつけられるんじゃ。なので買取には心配ないのじゃ。それと明日森のウルフを狩に行くなら村に若いのを2人荷物運びにつけてやろう。それでどうじゃ。」と村長。


「たくさんウルフを狩って欲しいのならば荷車くらいあった方が良いかもしれませんね。数匹で良いのなら荷車は入りませんが、10、20と狩って欲しいなら荷車が無いと運べませんからね。」とキルは荷車も用意してもらう。


「そんなにたくさん狩ってくるれるなら荷車は用意しよう。たくさんウルフを退治して来て欲しいのじゃ。」村長は二つ返事でOKした。


明日は森のウルフを退治してくる事になった。

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