69 クリスとの別れ

「嫌です!わたくし帰りませんわ!」ハッキリ宣うクリスである。


「許されません。クリスチィーナお嬢様。」我儘は許しまへんで〜という感じのギルバート。


「お嬢様、お嬢様に帰って頂けなければ私共がどんなお仕置きを受けるとお思いですか?私だけでなく貴方付きのメイド達も皆解雇されてしまうのですよ。お分かりですか?」理詰めで説得に来るギルバートである。コレではクリスも帰らざるを得ない。


「し、仕方ありません。一旦は、、、一旦は帰ることといたしましょう。でもまた、お父様のお許しを得てもう一度戻って参りとう御座います。」シクシク泣き出すクリスである。


「さあ、参りましょう。」とギルバート。


クリスはキルの背中に隠れるのをやめてうつむきながら歩み出した。


キルとケーナは呆然と立ち尽くすだけである。一言も声が出せなかった。


トボトボと歩いて行くクリス。時々振り返っては悲しそうな顔を見せた。



「クリス、、、いっちゃったね、。」とケーナ。


「うん。」キルも寂しさを感じていた。


「なんとなく、こういう事が有るような気はしてたんだよね。」キルはポツンと呟いた。


しばらく呆然とクリスを見送ったまま立ち尽くしていた2人だったが、気を取り直して明日の依頼を探す事にした。掲示板に何か良い依頼は無いだろうか?


『 クルリン村  狼の群れ退治、5万カーネルと倒した狼の素材』


「コレにするか?」気力のない声でキルが聞く。


「良いっすよ。」ケーナもどうでも良いという感じだ。2人ともクリスとの突然の別れに落ち込む気持ちを制御できないでいた。


「コレ、お願いします。」受付のケイトさんに手続きを頼むキル。


「クルリン村ですね。はい、わかりました。明日ですね。気をつけて行って来てください。


クルリン村までは歩けば半日は掛かる。でもキルもケーナも飛んでいけば1時間半だ。

だが狼の群れは夕方から夜にに村の家畜を襲うそうで泊まりの仕事になりそうで有る。


2人で2日で5万カーネルだとキルやケーナにとっては稼ぎの良い仕事ではない。


だがケーナに色々な経験を積ませてあげようと思うキルである。


行き帰りの道中で何か狩りながらというのも悪く無いかもしれない。


去年なら1日1人10,000カーネル稼げれば多い方だったのだ。そしてこういう依頼も行き帰りで小さな魔物を狩ったり薬草や木の実などを摘みながら移動してこまめに稼いだものだった。


そういうノウハウを教えるためにも一度やっておくのも良いかもしれない。

なので明日はぼちぼち歩きながら小銭でも稼ぐ方法を伝授してやろうと思う。


「明日はいつも通りギルド前集合で、クルリン村までは歩きだ。」それではまたな。


キルはケーナと別れ工房に戻る。


そして明日の分もたくさんスクロールを作ろうと思った。


アリゲータゴンの魔石はライガーの魔石よりは魔力を持っていそうだが、ジョブスクロールを作れるほどの魔力は無い気がする。


ハイオークの魔石と同じようなものを作る時に使う感じか?

フライのスキルスクロールを4個、アイスシールドのスキルスクロールを4個、アイスマシンガンのスクロールを4個、索敵のスキルスクロールを4個作った。

槍のアーツを身につけたいと思うので目に焼き付けた紋様を探して槍のアーツのスキルスクロールをつくる。滅多突き2個と朧突き2個だ。アリゲータゴンの魔石は5個使う。こんばんはそのくらいにしておいた。魔力回復薬は4つ使った。槍のアーツは使って身につけた。


「明日はクルリン村の狼退治に行きますので、泊まりの仕事になると思います。」キルはゼペック爺さんに明日の予定を伝えた。


「それじゃあ明日の晩はキルさんは帰ってこんという事じゃな。わかったぞい。気にせず行ってこい。」ゼペック爺さんは快くキルの不在を受け入れた。


「ゼペックさん、、、クリスが、、貴族で、、、連れ戻されました。」キルはクリスのことも話す。


「やはり、、、貴族の娘じゃったか。 覚悟しとっても別れは辛いか?キルさん。」

ゼペック爺さんが言った。


「はい。  予想はしていましたが、あまりに突然で。」


「わしも残念じゃ。2度しか会っておらなかったがわしも残念じゃ。じゃがまた会うことはあるかもしれん。再会のその日を楽しみにしてそれまでにキルさんも立派に成長しておくことじゃぞえ。」


「ハイ。」また会う日を楽しみにか、、、そうだな、、とキルは気持ちが軽くなるのがわかった。

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