68 アリゲータゴンとクリスの正体

アリゲータゴンはゴブリンの死体を見つけると少しずつ寄って来た。


複数のアリゲータゴンが寄ってくる所少しずつ誘うようにゴブリンを引いて河岸に呼び寄せる。


「ヨシヨシ、寄って来たぞ!」


もはや河岸近くまでアリゲータゴンの群れが寄って来ていた。


キルはゴブリンの死体を河岸の地上にまで引き上げた。水際スレスレにである。


水際からアリゲータゴンがゴブリンにかぶりつこうと飛び込んでくる所をキルはぐいと綱を引き済んでのところで食わせない。水から上がって来るアリゲータゴン。


次々と陸に上がってゴブリンを食おうとする。上陸した数は10をはるかに超えている。

そして奴らはゴブリンの死体の積んであるのを発見するとそちらに移動始めた。


もはや吾先にとゴブリンの山に向かうアリゲータゴン。その数は20を超えた。


「ヨシヨシ、狩りどきだな。陸に上がればこっちのものよ。」キルが攻撃を開始する。


まずはファイヤーポールで炎の柱を立てアリゲータゴンの川への退路を塞ぐ。


そしてケーナは強射で射掛けクリスは逃げようとするアリゲータゴンの行く手にファイヤーボムでそれを遮る。キルは槍を持って突き殺そうとする。


大きく開けた口の中が魔法も槍も狙い目だ。


皮を傷つけないように頭を狙い口の中を狙う。時にアイスシールドで攻撃を受け、ケーナに向かう敵はヘイトテイカーでキルに向かわせる。

詠唱省略はなくてはならないアーツである。コレがあると無いとでは近接戦闘時の魔法発動時間が全く違う。コレがなければ戦いにならないだろう。


キルはステータスが上がったので近接戦闘もアリゲータゴンの攻撃は余裕でかわせる。

ただアリゲータゴンも打たれ強いので倒すのに時間がかかるだけである。


ミスして攻撃が当たってもヒール、ハイヒールで即座に回復する。


MPは全然消費を気にするほど減らない。クリスはクスリを飲んだりしていたが。


ケーナも矢を射尽くして遠くに回避、キルの奮戦を見守った。


キルは槍を突き続け口を開けて襲って来るアリゲータゴンにはカウンターで口の中にストーンショットをお見舞いした。


アリゲータゴンの数も減りキルが攻勢をかけると背を向けるアリゲーターゴン。


逃げられるものもいたが混戦の末に14匹のアリゲータゴンを倒していた。


ゴブリンの死体を咥えて逃げた強者アリゲータゴンもいたが別にゴブリンの死体はいらないのでかまわない。


14匹のアリゲータゴンを荷馬車に積んで今日の狩りは終である。あとはギルドに買取をしてもらうだけだ。


ギルドについて獲物を見てもらう。皮に傷の少ない10匹分は割高の依頼価格で引き取ってもらい残りは通常価格で引き取ってもらった。魔石はキルが持ち帰る。


14匹のアリゲータゴンの引き取り価格は魔石分を引いて582000カーネル。1人194000カーネルだった。いつもより稼ぎは少ないが経験は積めたと思う。


狩りの時間も早上がりのイメージで自由時間が多くできた。ケーナもクリスもそっちの方が嬉しいようだ。


「今日は、早上がりで嬉しいっす。」とケーナは言った。


そこに貴族の執事風の男が近づいて来るのがわかる。


まさかとは思ったがその男はクリスの元に来て声をかけた。


「クリスチィーナ様、やっと見つけましたぞ!」


クリスは顔色を曇らせたがそのまま身を翻してキルの背中の後ろに隠れるのであった。


執事風の男はキルの前にズイと近づいて来る。圧を感じるキル。


「貴様何者だ。クリスチィーナ様をどうするつもりだ!」


事情の飲み込めないキルであるが、クリスが貴族に関係があるのではと感じていたのも事実である。さては貴族関係の揉め事か?と思うキル。


「まあ、落ち着いてください。私はキルという冒険者です。クリスとは同じパーティー仲間です。事情を説明してはいただけませんか?」


「クリスチィーナ様、、、が冒険者のパーティーメンバー、、、とは、、、」

気を取り直して説明を始める執事風の男。


「クリスチィーナ様は、ルビーノガルツ侯爵家の三女に御座います。3ヶ月ほど前に魔法修行の旅に出ると申しまして突然出奔いたしまして我らが捜査しておりました所本日ここでお会いできた次第でして、、申し遅れましたが私はクリスチィーナ様付きの執事ギルバートと申します。   さあ、クリスチィーナ様旦那様が心配していらっしゃいます。帰りましょう。」


なるほどと思うキル。なんか思ったとおりだな。クリスはお嬢様ぽい所がありありだったと思い返した。

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