66 バッカス鍛治屋

ブラットホーンベア変異種の討伐成功はギルド内でも評判を呼んだ。


なにしろ強力な魔物だ。魔石は15万。

大切にスクロール作りに使いたい。

その他は45万で買い取られた。


それよりもほぼ1人でブラットホーンベア変異種を倒したと言う話にギルド内でキルの評価が大きく上がることになった。


前回の活躍も有りキルは実力的にはBランクに近いのではと言う評価が大勢を占める様になっているとケイトがそっと教えてくれた。


キル自身はまだBランクの実力はないことはわかっていた。


明日の依頼を掲示板でチェックする。良さそうな依頼ないだろうか?


ケーナやクリスが経験を積めるもの、、、


『 アリゲータゴンの皮 1匹当たり2万カーネル 10匹分 』


アリゲータゴンは川や湖に住むワニ型の魔物で体長は3mくらいの硬い皮を持つ強力な魔物だ。大きな口と強い顎と歯を持つ。皮だけでなく肉も美味しく歯の大きく買取の対象になる。皮は、通常15000カーネルらしいが急ぎなのか割高で買い取る様だ。

魔石も12000カーネルはするので1匹50000カーネルが引き取り価格だ。


ただ皮が硬く防衛力が高いため狩るのは難しいとされる。


通常の矢では通らないだろうがケーナの強射なら矢も刺さるだろう。水の中では戦いづらいため陸に上がって来たところが狩りのチャンスになる。口を開けた時にその中を狙えば硬い皮の防御力を避けられるので狙い目だが剣では腕ごと噛まれかねないので槍を持っていった方が良さそうだ。槍使いのスキルを試すためにも槍を買っておいた方が良いので鍛冶屋をあたってみることにする。


そういえばゼペックさんの工房を教えてくれたバッカスという人が鍛治師だった事を思い出した。早速バッカスの鍛冶場を訪れてみる。


バッカスの鍛冶場はゼペック工房より先の町外れにあって鋼をたたく音が響き渡って周りには人家がない。騒音がひどいために離れた所にあるようだ。


鍛冶場の入り口は剣、槍、盾などの鉄製品が並んでいた。奥でガンガン音が響いている。店番は奥さんだろうか?頑固そうなおばさんが睨みつけている。


「冷やかしはゴメンだよ。何が欲しいんだい!」とおばさんがいきなり高飛車な態度だ。


「アリゲータゴンを狩るために槍が欲しいと思ってるんですけれど?」キルが答えるとおばさんが予算を聞く。


「いくらくらいの物が欲しいんだい?ここは中古品はないからね、高いよ!金がないなら武器屋行きな。武器屋なら中古品が売ってるよ。」このおばさん売る気がないのだろうか?


「この前バッカスさんに助けてもらいまして、武器を買うならバッカスさんのを買って見ようと思いました。金ならそこそこできたので買いに来たんですけれども。」とキル。


「へ〜、義理堅い子だね。来な、ここらが1番安くて20万カーネル、そんで中くらいのできのが30万、ここらの上出来のが50万だよ。その上の高いのは材料が違ってくるんでね、上級冒険者にでもなってから買いに来な。」サラッと値段をレクチャーするとおばさん。


キルは中くらいのものから槍を見始めたがやはり上出来の槍に惹かれる物がある。


「この上出来の槍は50万カーネルですか?」確認するキル。


「そうだよ。それにするかい?」


「コレが気に入りました。コレを下さい。」


「あんたそれ50万カーネルだって言ってるだろう。後払いはやってないんだよ。金が足りないなんて言わないんだろうね!」


キルが金貨50枚を出すとおばさんが驚いて大声を上げる。


「あんた!大変だよ!あんたの知り合いって小僧が大金持って買いに来たよ!早く来ておくれ!」


奥からのっそりと顔を出すバッカス。


「うるせーな、なんだって?    あ!ゼペックジジイのとこに行った小僧か?どうしたんだよ?」バッカスが事情を確かめる。


「あんた、この子が50万も金出して、あんたの槍が買いたいって!50万だよ、50万。」おばさん慌てふためいている。あまり売れたことがないのか?まあこのおばさんでは客が逃げそうだがなあ。


「お、、、お、、おう。  その槍か? それは良いできの品だぞ。俺の最高傑作だ。鉄の槍ではなあ。持ち手の方まで鉄製で丈夫なことはこの上ないがその分重いぞ。小僧、この槍を使えるほど力があるのか?」とバッカスが言った。


キルは槍を軽々と振って見せる。キルは腕力も200以上あり並みの大人に負けないくらいの腕力はあるのだ。安い槍は先だけが鉄でできていて他は木製だ。その分材料費も安いというものだ。


「お前、スクロール職人にはなれたのか?槍を買うってことは狩りをするってことか?」バッカスはキルの近況が気になったらしい。


「スクロール職人にはなれましたが、売れないので冒険者をして金を稼いでいます。なので槍が欲しいんです。」答えるキル。


「そうか。その槍ならちょっとやそっとでは壊れないからな。役に立つと思うぜ。スクロール、売れなくても頑張りな。ゼペックによろしくな。」バッカスは心配そうにキルをはげます。


「ありがとうございます。」


キルは丈夫な槍を手にして鍛治屋を出るのだった。

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