54 ゴブリン騒動2

キルは昨日たくさんのアーツを身につけたのでそれらを試したい部分もあったが、今の時点では使えるアーツは装備の関係上兜割とヘイトテイカーが増えているだけである。


ただこの2つが使える事で近接戦闘が強化され、ケーナとクリスにライガーが向かう事を避けることもできるようになり安心感が強まった。


今日は群れのライガーの数が多くても気にせず狩っても大丈夫なのではないかと思いいきなり6匹の群れを狩ってみた。


遠距離攻撃で4匹を倒したあとキルが残りの2匹を鎌鼬と兜割で苦もなく瞬殺できた事で7匹でも問題ないのはまず間違いない。ライガーを兜割一撃で倒せるようになった事がとても戦いに余裕を与えてくれた。


次は5匹の群れ、そして、6匹、4匹、5匹の群れと倒して5つの群れで26匹のライガーを狩りギルドに卸しに向かった。そしていつものようにとって返してまた狩りを繰り返す。


5匹、6匹、7匹、とかり続けて、実際7匹の群れでも危なげなく狩り続け、5匹、6匹。


29匹でも荷馬車にまだ積む余裕があった事もわかった。群れを選ばずに狩ることにより狩りの時間も短縮された。


そしてこの時、キルに初めてアーツが生えた。「紋様鑑定」というスキルで、スクロール職人にだけできるアーツのようで、発動していない状態でも他人の持っているスキルや魔法の紋様を見ることができその紋様を記憶するというもので、スクロール作りには最高に有効で必要なアーツだ。


基本的には魔法やアーツは経験を積むことによって自然に生えるものらしい。練習する事もその経験に入るのかもしれない。


どちらかといえばスクロールを使って覚えるのは少数派なのだ。


キルはケーナとクリスの紋様鑑定をおこなう。


ケーナは「オートターゲット」、クリスは「詠唱省略」のアーツが生えているようだ。


2人は気づいていないのか?ステータスを調べて以降に生えたアーツのはずなのでつい最近生えたのだろう。このようにスキルが生えたのに気付かないでいることはよくある事らしい。見つけて良かった。


キルはその事を2人に告げた。2人は喜んで早速次から使いだすつもりだ。


ギルドに輸送しもう一度狩りに戻る。さっきと同じように狩りを続け27匹のライガーを狩ってギルドに戻った。ギルドは少し不穏な空気が流れているようにも感じたが、時短がうまくいっているので本日4回目の狩りに行けそうだと思い急ぎ狩場に引き返した。


本日4回目の狩りで28匹のライガーを狩りギルドに戻る。今日はもう働きすぎでグッタリだ。


いつもより遅いのにギルドに人がたくさん残っている。変だと感じたがライガーを買い取って貰った。本日ライガー110匹、441万カーネルと魔石110個。金は1人147万ずつ。


普通であれば1日1万カーネル稼げれば良しとするところ、非常に高給取りと言える。

しかし、ライガーも少なくなってきたので別の魔物を狩った方が探す時間が短縮できそうに思う。


ギルドに人が残っている訳がわかったのは、怪我人が担ぎ込まれてきた時である。

どうやらゴブリンの大型の群れの討伐に向かった冒険者に大きな損害が出ていたらしい。その為急遽応援を派遣していたのだとか?


バーミリオンの人達はどうなっているのかと心配になるキルである。


そこに冒険者達の一団が引き返してきた。その中にバーミリオンの3人の姿を見つけて安堵するキル。


初めに20人の冒険者が派遣され、援軍としてまた20人の冒険者が派遣されたと聞いた。ギルドに想定外的に戦力を低く見積っていたせいである。


バーミリオンの3人には大きな怪我はないようだ。応援部隊の活躍で引き上げてくることができたらしい。しかし、死亡者も多数出ていると言う。


「知り合いがいるんだ。話に行ってもいいかな?」とキル。


「私たちもご一緒してよろしいですの?」


「構わないぜ。一緒にいこう。」キルはバーミリオンのところに話をしに行く。


「ガスさん、ダクさん、大変だったみたいですね。」


「ああ、キルか、ハイヒール、役に立ったぜ。イヤーー酷いもんだったぜ。」とガス。


どうやらハイヒールのスクロールを使う事になっていたようだ。死なずに済んで良かった。


「強化のアーツも買っておいて良かったよ。あれが無かったら俺達死んでいたと思うんだ。本当に助かったよ。」ダクも言う。


「キングゴブリンがいたんでなあ。逃げるのが精一杯だったがな。」とバズも言った。


キングゴブリンがいたとなればAランクパーティーがいなければ討伐は厳しいと思われる。それに対してCランクを中心にした20人の冒険者で討伐に赴いたのだから死者が出ても仕方が無い。


応援部隊もBランクパーティーが中心で討伐隊を助け出してくるのがやっとと言うところだろう。


キングゴブリンは未だ健在だから、ゴブリンの脅威が消えたわけでは無い。困ったものである。早急になんとかする必要がありそうだ。


だが敵のおおよその戦力、最大戦力が判明した事は的確な対応、適切な戦力を投入することができると思われる。


新たに討伐隊が組まれるまで気を付けているしか無いだろう。

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