4、ゼペックとの出会い 2

掃除を終えたキルを見て、ゼペックが話しかけた。


「お前、今まで何をして食ってきたんじゃ?田舎から出てきたばかりなのか?」


「去年の春にパリスの街に出てきて冒険者をしていました。

今はEランク冒険者です。

パーティーメンバーが大きなクランに加入するためにパーティーが解散になり俺はソロの冒険者になりました。」


「フーーーン。何人でやってきたんじゃ?」


「3人パーティーでした。2人が移籍して俺だけできなかったんです」

キルは少し情けない表情だ。


「3人で1年続いたってことはなかなかやるのう。

冒険者は2/3は1年保たずに辞めるか死ぬかなんだって聞いてるぞい」


「はい。自分らの同期もそんな感じでしたね」


「しかも大規模クランに移籍できるとは才能あるんじゃないのかのう?」

慰めなのかゼペックが煽てる。


「2人は戦闘職のギフト持ちだったので……俺は違ったし……冒険者やってたらいずれは………」うつむくキル。


厳しい顔でゼペックは言った。

「この仕事なんて続けられたやつはこの町でワシだけじゃ。

冒険者より厳しいぞよ。

お前これから仕事覚えるにしても冒険者で食い繋ぐんじゃな。

それしかないじゃろう。

ワシはお前を食わしてやれるほどの稼ぎはないのじゃからのう」


「はい」

当面清掃とか力仕事とかで食いつなごうとは思っていたから状況は変わっていないとキルは思う。


「来れるときは此処にきて掃除でもして行きな、それと使いっ走りな。

あと冒険者にスクロールを売りな、卸値で卸してやるからのう。

個別の卸値と売値は後で教えてやるからのう。

それからスクロール作りは見て覚えるんじゃぞ。

在庫が履けねーうちは余り作ることもないんじゃがな。

そんなところじゃな、まあ頑張りな」


確かに材料の仕入れもままならないと言っていたし、在庫が溜まっていても仕方ないし生活費も必要だ。

売ってこいというのは当然かもしれないがハテどうしたら買ってもらえるのだろうか?と考えてまず品揃えを教えてもらう事にした。


「あの、どれがどんな働きをするスクロールなんですか?」


「そうじゃなあ、商品がわからなくては売れないよなあ。

見せながら教えてやるぞよ。こっちきな」

ゼペックに招かれてスクロールが入っている棚の方に歩いて行くキル。


「まず、生活魔法のスキルスクロール。俺が作れるのはこの3つだ」

3つのスクロールを取り出して並べてみせるゼペック。


「まずこれがライトのスキルスクロールだ。

生活魔法は誰でも間違いなく覚えられるのは知ってるよな。

ライトの魔法は魔力5を使って30分光の球を自分のそばの出したいところに出しておける魔法じゃ。

このスクロールを使えばライトの魔法が使えるようになる。

魔法スクロールは1回使いきりじゃが、何度でもできる能力を身につけさせるスクロールはスキルスクロールといってとても高い値がついてるんじゃよ。

コイツは売値は50000カーネル(小銀貨50枚=大銀貨5枚)、卸値は半額じゃ」


「スキルスクロールですか?売れたらすごい儲けですね」


「そんなに売れねーのが悩みの種なんじゃよ」とゼペック。


「次にこれがファイヤーのスキルスクロール、ファイヤーは魔力2で指先に5秒間小さな火を灯せる。

まあ種火をいつでも出せるって事じゃな。

コイツは40000カーネル卸値はみんな半額だからな。

そしてこれがクリーンのスキルスクロール。

クリーンは魔力10を使って半径1mの球体の範囲を綺麗にする魔法じゃ。

コイツは80000カーネルじゃ」


「スキルスクロールって高いんですね」


「そうじゃな」高いと認めるゼペック。

だがそれで能力が身につく事を考えれば安いかもしれない。

ただみんな金がなくて欲しくても買えないだろう。


「あとは魔法スクロールな。コイツは使えば一度魔法が発動してそれで終わりじゃ」


「よく見かけるやつですね」とキル。


「コイツのいいところは魔術師でなくても魔法が撃てるところじゃな。

レベル1の威力の魔法がさまざま、ファイヤーボール、エアカッター、ヒール、ウォーターボール、ストーンショット、変わったところではステータスとかのう。

これらは3000カーネル卸値は半額な。

取り敢えずはこのくらいじゃ?

これらを売ることができれば、儲かるし俺も在庫が履けて次のスクロールを作ることもできるからのう」

ゼペックが悪徳商人のような顔を覗かせた。へへへ。


「それじゃあ働いてスクロールを仕入れる軍資金を作ってくるのじゃよ。

頑張って稼ぐのじゃよ」

ゼペックはそう言いながらキルを追い出した。

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