第22話 洪作の告白

 ふらふらした足取りで立心館の外に出た洪作は、一人の女性とぶつかった。

 謝る気力もなくぼんやりと顔を上げた洪作の両目は、予期せぬ相手の姿に大きく見開かれた。

 おびえたような表情で立ち尽くすその姿は、洪作が決して忘れるはずのない、他ならぬ綾葉だった。

 流藤は、一瞬のうちに考えた。

 まだ、物語は完結していなかったのかも。

 僕が馬原を追いつめ推理が完成したことも、そのことによって徴兵免除が取り消されたことも、さらにたった今、馬原を殺してしまったことも、この物語の必然だったのかも。

 そうだ、そうに違いない!

 だとすれば、今ここで綾葉に出会ったのも必然ではないか!

 僕の物語は、まだ終わっていない。

 それは、今この瞬間にたどり着いた答えであるようにも、ずっと前から用意していた結論であるようにも思えた。

 洪作は必死の思いで、今自分が持て余している感情を言葉にしようと格闘した。

 そして、ついに見つかった。

「好きです、付き合ってください」

「嫌です」

(GAME OVER)

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モラトリアムGAME 鮎崎浪人 @ayusaki_namihito

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