第19話 学校案内
その三日後の午前中、大学から洪作にとどいた郵便は、無味乾燥ないたって事務的な文面で、最優秀論文の決定が取り消された旨を告げていた。
洪作は、いったい何のことやら、わけがわからず、その通知文を握りしめたまま六畳の部屋に立ち尽くした。
やがて湧き上がってきた怒りの感情に任せ、わめき声を上げながら、部屋にあるものを投げつけ壁を殴りつける。
今までの学生生活そのものが憎悪すべき対像に思えた。
テキストや講義ノートを次々に叩き付けた。
そして、最後に洪作に残されたのは、虚しさだけだった。
絶望的な気持ちに沈み込んだ洪作は、両目に涙を浮かべながら、緩慢な動きで乱雑に散らばったものを拾い集める。
開いたままで床に落ちていた学校案内の冊子を取り上げたとき、洪作の涙でかすんだ目に、表紙裏のページに配された馬原の顔写真が飛び込んできた。
その写真の下には、短いキャプション。
まさしく、驚愕の瞬間だった。
そのとき、洪作は完全に事の真相を理解した。
『理事長、馬原進太郎』
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