骸との戦い──異形植物・根
骸魔刃騎甲の頭部に侵食し張り巡らされた異形植物が蠢き、触手のような幾つもの根の尖端がフィジカの〈リ・ガルナモ〉へと向かい新たな寄生先として貫かんとしていた。
フィジカはバカにゆっくりと感じる
そして────魔結晶が穿かれ砕ける音が大穴に響いた。
フィジカの眼が飛び出んとばかりに皿と大きく見開かれる。
目の前で
『無事だなフィジカ、ベティも』
掲げた
「ええ、まだ、ベティ隊員は気を失った、ままのようですが……助かりました」
フィジカは全力を懸け振り放った一撃による大量の魔力消費と急激に押し寄せる魔力濃度の高さからくる酔いに、体内魔力の流れを一時的に
『ベティがまだ。そうか……急いだ方がよさそうだな。フィジカ、貴方の常態もよくないなすぐにでも地上に戻った方がいい。だが少しだけ、待っていてくれ』
リリィは即座に目を覚まさぬベティとフィジカの不調も感じ取り、地上へとすぐに戻る事を決め、目の前に転がる骸魔刃騎甲の胴体部に鋼刃剣を突き刺し再び焔を燃え上がらせた。絡みつく異形植物がまるで悲鳴でもあげるかのように暴れ、燃え散ってゆく。
「それは、いったい、何を?」
フィジカは一瞬、リリィの行動が理解できなかった。魔力の供給源となる骸魔刃騎甲の頭部を切り離す事さえできれば、無力化できるのはリリィの戦いで分かった事だ。これ以上は無駄に魔力を消費しない方がよいと思われる。念には念をという事であろうか。
『あぁ、なんとか
「連れ、帰る?」
リリィの「連れ帰る」という言葉にフィジカの疲労過多な脳髄が理解を示すには時を有してしまう。リリィは異形植物を燃やしきった
『約束したからだよ、連れて帰ると』
「そう……ですね」
フィジカは異形植物により変わり果てた骸魔刃騎甲を驚異としてしか見ていなかった自分に遅れて気づき、それと同時に
『よし、これならいいだろう。フィジカ、まずはワタシが貴方とベティを地上に上げてから第五小隊の
リリィの〈ハイザートン〉は異形植物が燃え落ち、痩せ細った鋼鉄骨格の見える〈ガルナモ〉だった魔刃騎甲に紅い双眼を向けていた。そこに、先程の戦いでみせた
(しかし、この悪魔のような植物は、いったいなんだったのだ?)
フィジカは今一度、黒く燃え散った異形植物だった物を見つめた。禁足地と定められた魔獣の森最奥にはこんな寄生植物が存在していたのかとまだ鈍い頭で考え、恐ろしくなる。もしかしたら、ガルシャの上層は
『フィジカ、ベティを先に抱え──ッッ?!』
リリィがベティ騎を抱えるために〈ハイザートン〉の右腕を伸ばそうとした瞬間──声に緊張の色が走り、リリィ騎は伸ばそうとした右腕をそのまま振り被り、背後に迫り来る槍の如き植物を打ち弾いた。
『迂闊だったな。まだ大物が隠れていたようだ』
再び鋼刃剣を握り刃を向けるその先には、魔結晶鉱石やアミ・メレオゥの骸を打ち飛ばしながら地表壁を
(この不自然な大穴を作った主はコイツか?)
地中から植物の根が絡まった物体がせり上がり、リリィの〈ハイザートン〉を不気味に見下ろしてくる。
『
リリィが呟き、見上げたそこにある根絡む物体はジオッカの
恐らくこの〈グラーゲ〉の巨大装甲だった物は魔獣騒動の起因となったジオッカの脱走兵達が置き去りにしたものだろう。蛮に動いた奴等の素行を考えるにこの異形植物に襲われた仲間を贄として命からがらと逃亡をはかれたのだ。捕らえた際にこの事を口にしなかったのは奴等なりの小さな
そして、この異形植物の根は地表壁を這い、地上へと続いている。ヤツの「本体」は地上にいると短い時の中で理解するとリリィの真上を向く蒼い眼は大きな焦りに広がった。
(
地上の危機を理解するが、目の前の脅威は活きの良い餌を逃がさぬと立ちはだかる。
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