骸との戦い──フィジカ
(いったい……彼女は)
フィジカは目の前で繰り広げられるリリィの戦いを驚愕と見つめていた。骸魔刃騎甲の攻撃を
「ッッ、リ──」
リリィの〈ハイザートン〉の背後に迫る焔燻る骸魔刃騎甲の襲撃にフィジカは声をあげようとするが、リリィは振り返る事無くそれを剣先で突き飛ばし次なる反撃体勢に入り、仕留めにかかった。それも一瞬のうちに蹴りをつけてしまう事だろう。
(この魔力濃度の重さ、なぜあそこまで、身軽に戦えるのだ)
「グッ──ふうぅッッ」
フィジカは普段は考えつきもしないような
(彼女が、己が身を懸けてまで戦ってくれているからこそ、私達は助かっている。私の、矮小な思考で、彼女をとぼしめる侮辱なぞ絶対に許されないッ)
いまだ
(今は、私にできる事を考えろ)
戦闘続け距離を放されているリリィに代わりこの状況下で意識無き部下を守れるのは
「っ……グウォァゥッ!」
〈リ・ガルナモ〉の立ち上がりと同時にアミ・メレオゥの焦げた焼骸から再び二騎の骸魔刃騎甲が這い出てきた。行方知れずの第五小隊の魔刃騎甲は五騎、ガルシャの軍にしか分からぬ彫り深い胸部外装を証とする隊長騎もリリィの戦う骸の中に確認した。目の前にする二騎の外装はより汚れ歪み、異形植物の侵食も深く見える。恐らく、最初に行方知れずとなったグマノープ・サマーン卿達の〈ガルナモ〉に違いないだろう。第五小隊はもう全て得体の知れない異形植物によって全滅したのだという現実を理解するしかない。
同胞だったものが異形の植物に使い捨てられるためになおも動かされている。この異形植物がどういった物かをフィジカは理解する気なぞ到底無いが、新たな寄生先として動き鈍く新しい
(
フィジカらに迫ろうとする二騎の骸魔刃騎甲に向かって何とか一刀の
狭くなった思考の中でリリィが繰り出した首を飛ばし
魔力濃度の高さによる不調から魔力をコントロールする事はできない。全てを賭けた一撃で勝機を見いだせねば意味するは「死」である。必ず二騎ともその首をはね上げて見せるとフィジカは全力で
骸魔刃騎甲の首へと全力と振り抜かれた疾風一閃の一撃は骸魔刃騎甲一騎の頭部を断と跳ね飛ばした。勢い衰えず横へと居並んだもう一騎の首も瞬時にはね飛ばそうと更に風刃を超加速させる。
『つッっッッ!?』
だが、緑風の刃纏った
大振りに体勢を崩した〈リ・ガルナモ〉の巨躯は骸魔刃騎甲の目の前で無防備を晒し、単眼な頭部に侵食した異形植物が眼球に血走るように蠢きフィジカを捕食せんといま、襲いかからんとする。
フィジカは大きく眼を見開き、己の不運を呪った。
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