信ずる心
突如、樹木群の間を抜うように最奥からの衝撃が一行を襲う。それは、一瞬の間を感じる事も無く
『グ──ウゥッッ?!!』
衝撃の一撃を喰らったのはエイモン騎〈ハイザートン〉の
(こいつの
新たな大盾のおかげで命を拾えたのだとエイモンは乱れた息を整えながら心の中でサマージェン達に最大限の感謝をした。ホッと胸を撫で下ろすようなサマージェンの姿を想像すると可笑しくもなるが、この襲ってきた一撃の前にマヌケと油断を晒すわけにはいかぬと気を引き締め直し、この場にいる全騎に繋がり直された
『気をつけろッ、大穴反対向こう側さんの奥からトンデモねえのが撃ち込まれたッ。いいか、絶対に俺の盾より前に行くんじゃねえぞッ。ちとクラっとするくらいにゃデケェ一発だが
エイモンの圧ある叫びと目の前で起こった一瞬の攻撃に緊張が走り、全騎はエイモンの声に従い後方へと下がる。
『まさか、今のがウワサの蝙蝠魔獣の攻撃なのでは』
昨日からゼトに聞かされてきた巨大な蝙蝠魔獣の存在が頭をもたげ、己の想像範疇での恐怖の中でウェックスが乾く喉から振り絞りな声をあげるがそれをゼトの低い声が否定した。
『いいや、あのオゾマシイ攻撃ならこんな生優しくはねえはずだ。あいつを喰らえばこの場にいる全員、立ってなんていられなくなるぞ。今の魔力酔い
ゼトの焦りの中にありながらも簡潔とした言葉は分かりやすくも体感した恐ろしさを伝える。その言葉にウェックスは知らず想像とする恐怖から眼を大きく開く。洞窟での衝撃波を体感した者の発言はあらためて真と迫ったものであると理解し、出ない唾を空気と一緒に飲みこんだ。
『おいおい、この一発もなかなかにヘビーなもんだがね』
エイモンは軽口を挟みながら目線上部のみを開かせた大盾越しから前を睨む、次の一撃はまだ来ない。先程の攻撃のは連発できないものだと判断するべきか、一瞬の迷いを生じさせる。
『こちらで、襲撃者を見破るぞっ』
ダイスが
『待ちなって、おまえさんご自慢な遠眼鏡の
長距離照準術式の弱点である無防備の数分を晒すわけにはいかない。それに加え
(落ち着きなよ、今は冷静に考えさせていただける
魔力濃度の負荷の中で緻密な思考を続けるのは困難を極めるが、エイモンは思考を止めず現状を打破する方法を探す。ここで立ちん坊なデク人形となるのは全滅を意味するからだ。
(っ──なんだ?)
エイモンが大盾上部覗き穴から
あきらかに、何かが蠢いて覗き穴を登ってきている。
それはまるで幾つもの触手が生えだしたような──木の根の集合体である。
(こいつは──)
──驚異であると本能が判断すると同時にソレは熟し破裂した種のような中心部から根を瞬時に伸ばしエイモン騎の
『──ッッッッ!!!??』
瞬間──エイモン騎の頭部の間を無理矢理にこじ開けるように後ろから銃口が差し込まれ、おぞましい木根の集合体が覗き穴の外へと押し戻され、迷わずと発砲されると不気味な根は魔結晶が砕けるような音を立てて破裂した。
『なんなんだいまのはッ』
背後から咄嗟に銃口を突き入れたダイスの震えた声が響く。彼にもあのこの世のものと思えぬ小さく不気味な姿をとらえたようで、咄嗟に
『すまな──ッッ!!?』
エイモンが礼を言おうとした瞬間、再び
それと同時に、あの不気味な木根の集合体が覗き穴から登ってくるのが見え、ダイスが魔騎装銃を引き槍を突くように前に押し出し、発砲をした。再び破裂音が響く。
(間違いねぇ、
二度も認めれば確信へと変わる。何者かは分からないが得体の知れない怪物の弾丸をこちらに向かって撃ち込まれているのだと。次弾が来ないという事は連発と撃ち込むには時間が掛かるという事だ。その僅かな余裕も時間稼ぎにしかならぬだろう。
(このままじゃ、一方的な的当てのカカシじゃねえか)
エイモンは憎々しげに奥歯を強く噛み、次に来るだろう一撃をいつまでも警戒するしかないのか。時間を掛けて蝕んでゆく毒のような焦りを覚えていた。
『エイモン、
蝕む焦りの中でダイスの真っ直ぐと耳を貫くような強い声が響く。
『ソイツは待てと──』
『──臆病をみせている場合なのか!
ダイスの信念を持った声にエイモンは真正面から殴られたような気分だ。あの蝙蝠魔獣との戦いで慎重という名の臆病風に吹かれ過ぎていたのかもしれない。再びの姿なき襲撃による絶対絶命なこの状態を脱するには
『へ、大口を叩いたんならやってみせろよッ』
『
ダイスは大盾上部覗き穴に銃口を突き刺したまま合着とさせ、
『こっちも数は足りねえが魔騎装銃は二丁ある。援護ぐらいはできるはずだ、やるぞウェックス!』
『は、はい、こっちだってこんな所で死にたくはないですからね! ダイスさんを信じますよ!』
『近づく魔獣があれば俺が相手をするっ。集中を切らさずやってくれッ』
第四小隊も覚悟を決め、ダイスの射撃に懸ける決意を固めた。ダイスは息を整え、意識を集中し
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