サマージェン整備計画
「フゥ……おっしやっ」
小型昇降器を上下させ調整すると、整備計画記録を端へと送る。騎甲を中空に滑らした魔結晶版面と合わせ付け爪を外し、爪を短く切り揃えた綺麗な指で魔結晶版面を弦楽器を奏でるように素早く叩いて
(ダイスくんのはそれほど魔獣鋼化筋肉の肉付きに改良点は無いんよな。元々射撃優先に調整してあったし、それは次の戦いも変わんない方がいい。重要なのは武装、
サマージェンは頭の中でダイス騎の調整を素早く整理しながら今後に必要な計画を魔結晶版面の端に置いた計画予定を見比べ、考える。
(ここは
現状の欠点を洗い出して溜め息を吐く。
「よし、ひとまずの完了ちゃん」
ダイス騎の
「お次は……あぁ」
赤い眼を横に流し見やると、エイモン騎の大盾装甲型がまるで椅子に座り込んでグッタリと項垂れるように格納されている姿が見える。衝撃波によりへしゃげた大盾装甲は取り外され別所で新たに造り直されている。
大盾を脱いだエイモン騎は下半身の太い
その姿が何処か痛々しく感じられるのは意識をしばらく取り戻さなかったエイモンと重ねてしまっているからだろうか。
「キミのお兄ちゃんな、もう目覚ましたから安心しなよな」
小型昇降器を側へと移動させながらサマージェンは小さな子どもを励ますような優しい口調でエイモン騎へと話し掛けた。
「痛かったよなぁ、あの野郎は無茶しちゃってさ、考えろって話だよねぇ」
へしゃげた大盾装甲の損傷の酷さをサマージェンはこの眼で確認した。厚い装甲板で造られた大盾は鉄壁の護りで武装実験部隊フレイムを救ってきた守護神とも言える存在だ。それは扱うエイモン自身も守られているという事だ。大盾を充分に使いこなしてきた彼の慎重さと大胆さを兼ね添えた器用妙技を疑う事は無かった。そんな彼の扱う大盾装甲が、あんなにもへしゃげてしまった理由は不意打ちな敵衝撃波の予想外な威力もあったかもしれない。サマージェン自身、鉄馬車の中で耳が壊れてしまいそうな気持ちの悪さに襲われていたのだから。
だが、それ以上に大盾が物語っていたのはエイモンが衝撃波を自身に集めて受け止めていたという事実だ。不意打ち衝撃波を瞬時に構えて受け止めたエイモンは意識してか無意識に行ったのかは分からないが
もしも、
(二度とさせねぇかんな。死んじゃったらあたしの一生分、絶対に、許さねえ。だから、今は)
エイモンが無茶に耐えうる限界まで鍛えた盾が必要になる。彼が守りたい大切なもの全部を守りきるのに充分な超強化大盾が必要なのだ。そのために潤沢な素材を注ぎ込んで鍛えあげた新たな大盾装甲を作って貰っている。後は
「やったりますわッ」
サマージェンは今一度気合いを入れ直して調整作業に取り掛かった。
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