三章──洞窟戦闘──
出立
武装実験部隊フレイムの到着とエイモン、ゼトの両隊員同士の思わぬ衝突の巻き起こった一日は過ぎ、ケヨウス砦に向かい進軍する朝がやってくる。
魔獣加工工場の搬入倉庫を騎甲館区画代わりにした武装実験部隊フレイムの
「ウワハッハッハッ、整備は一日掛りでバッチリだ。安心して乗り込んでくださいや」
マリオ整備主任が冗談めかした笑い声で片手を上げる先には身体にフィットする水色と灰色の
「
リリィが主任達の前に立ち礼を言うと整備員らは照れくさげに笑う。
「なぁに、
「あぁ、砦に着くまでの鉄馬車の護衛はワタシ達に任せて貰う。グッスリ高いびきをかかせてやろう。よし、ダイス、エイモン、行こう」
リリィの声にダイスとエイモンはそれぞれの
「よし、
「了解、指揮型から搭乗ッ。下がれ下がれ下がれッ!」
リリィの声に整備員のひとりが念押しな復唱をし全員が距離を取るのを確認、リリィはもう一度、
周りの空気が振動をし全身が水面の奥に沈み込むような感覚に落ちていく。波がかりな月色髪が不規則に浮き上がりまるで水中に潜り込んだように身体が軽くなる。光彩強い青の瞳に映し出される到底この巨大な
続き、リリィは空気を短く肺に取り込み、長くゆっくりと心臓の鼓動に合わせて息を吐き出す。自身の体内魔力を騎甲に血管の如く張り巡らせた
「
指揮〈ハイザートン〉は鉄の軋みを上げて片腕を付き膝から順に立ち上がると、低減重力の
魔結晶幻影境面を見やると
「この瞬間は自分が巨人になったのか小人になったのか一瞬だけ分からなくなるな」
実際は圧縮された空間に包まれたリリィの身体は小さく縮んでいるようなものだが境面に映る景色は
リリィが前方を見やると長大な二対の魔騎装銃を肩背面に取り付けられたダイス騎は既に立ち上がり、クレーンに吊り下げられた特殊な
しばらくと鉄の響きが広がり、鈍い音をたててクレーンが上昇し、追加装甲の取り付けが完了した。座り込むような待騎姿勢で固定された大盾装甲〈ハイザートン〉がゆっくりと鉄の軋みを鳴らし立ち上がると、重力低減の効果で軽く浮き上がるような動作を一瞬して、沈み込むように関節部を折り曲げて着地し姿勢を安定させる。
『騎甲良好、準備はよーしよしです』
「よし、外に出るぞッ」
リリィの声と同時に三騎の
搬入倉庫の外へと出ると既に目の前に五騎の
第四小隊の魔刃騎甲である。出撃準備は万全といった所で、ガルシャの国色である森を意味する濃い緑を基調としたガルシャの現量産型魔刃騎甲〈ガルナモ〉が整列をしている。
「すまない、遅くなってしまって」
『いえ、そちらの
一騎の
『改めて目の前で見ますと、変わった風貌ですねあなた方の〈ハイザートン〉は』
しかし、フィジカから見ればリリィ達の〈ハイザートン〉の方が特別な物珍しさがあるようだ。
「ふむ、我々は〈ハイザートン〉に普段慣れしているが、確かにそちらにとっては珍しいだろうな。何せ、二つ眼に筒背負い、大盾がゾロゾロとだからな」
リリィが冗談めかして言うとフィジカ隊長も声を返す。
『その珍しさに期待というものをしてしまいます。それでは、早々ではありますが先ずはケヨウス砦へと向かいましょうか』
「あぁ、出発しよう」
二人の隊長の声と共に、八騎の
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