第4話 鳴と初めての夜
夕凪さんって、そう言う目で私達を見ていたんだ。気持ち悪い! 最低!
忘れたいのに、地元であった事なんて全て忘れて、都会の女子高で青春を謳歌するんだと、そう思っていたのに、どうしてまだ夢に見るの?
私が何かした?
ただ見ていただけなのに、どうしてそんな酷い事を言われるの?
どうして、夕凪美咲はレズで、女の子の裸に欲情する変態ですって、机に書くの?
レズの何がいけないの?
ただ同性が好きなだけで、皆と一緒じゃないと駄目なの?
どうして、誰も本当の私を見てくれないの?
どうしてママも、そんな寂しそうな憐れんだ目で私を見るの?
私なんて産れて来なければ良かったの?
こんな醜い私なんて、存在したらいけないの?
悪夢で目が覚めた。
嫌な汗を大量に掻いていて気持ち悪い。
シャワーでも浴びようと起き上がろうとするが、身体に力が入らない。おかしいと思った美咲は、体温計で熱を測ると、38.5度もある。
今日は休もう。
入学してから、二週間休む事なんて考えていなかった。
鳴との約束は、今週末と言うか明日だったのだが、申し訳ないが今度にしてもらおうと、鳴にLIMEで事情を説明してから、学校に連絡を入れる。
学校も美咲が一人暮らしなのを知っているので、ゆっくり休みなさいと言ってくれた。
鳴から、大丈夫? 学校終わったら看病しに行くから、薬飲んで寝てるんだよと来たので、美咲は素直にはいと返事をすると、薬を飲んで再び眠りについた。熱で鳴に家の場所を教えていない事にまでは気が回っていなかった。
夕凪さんのお嬢さん同性愛者何ですって。
夕凪さんも可哀そうね。
奥さん大丈夫かしら?
夕凪美咲は、変態だから近づいたら行けません。
学校の女子だけじゃなくて、今までは仲良く話してくれた本屋のお姉さんも、コンビニのお姉さんも私の事を敬遠しているのがわかる。
悲しかった。寂しかった。
私は何もしていないのに、ただレズだからって、皆から軽蔑されて距離を置かれて、それでも負けたくないから学校に通った。
教室に入ると、自分の机に何か置かれていた。
裸の女の子が抱き合う写真。その一人の顔は美咲だった。所謂コラ画像で、誰かの嫌がらせだった。
美咲は、その写真を片付けると自分の席に座る。
「夕凪さんって、ビッチなんだって、年上の女の人としてるって」
「私は、お金貰ってるって聞いたよ」
「本当に気持ち悪いよね」
そんなクラスの女子の心無い言葉に、私はまだ処女だしとあんたがビッチなんでしょ! と怒りを覚えながらも、美咲はただ俯いていた。
もうやめてぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!
こんな酷い夢を見せないでと、美咲は早く覚めてよと夢なんだから、早く覚めてよと誰か助けてと泣きながら祈っていたら、急に温かいものに包まれる感触がして目を覚ますと、鳴が優しく抱きしめてくれていた。
「め、鳴ちゃん? どうやって入ったの? 」
鍵は必ず掛けているので、どうして鳴が部屋に居て自分を抱きしめてくれているのか、理解が追いつかない。
「管理人さんに事情話して開けてもらった」
そう言う事ですかと、美咲は一応納得したが、鳴に家の場所を教えてないのにどうして鳴はここに居るんだろうと、まだ熱の下がってない頭で考える。
「レズ先生に聞いたから」
エスパーですか!
「まだ熱あるね。それに凄い魘されてたけど、嫌な夢見た? 」
「うん。昔ってそんなに昔じゃないけど、死にたい位に嫌な事あって」
「そっか、今は大丈夫? 美咲死にたいとか考える? そんなの嫌だよ」
鳴の目に涙が浮かんでいるのを見て、美咲は今は大丈夫だよと鳴がいるからと答える。素直な気持ちだった。
鳴と出会ってなければ、ここにも自分の居場所はないと悲観して、自殺を図っていたかもしれない。
「本当に、本当に考えてない? 私美咲いないの嫌だよ。初めて出来たお友達がいなくなったら」
「本当に大丈夫だよ。まだ乗り越えたとは言えないけど、こうやって夢に見るし、でも鳴ちゃんを絶対に一人にしないって、約束するから」
その言葉に安心したのか、鳴は涙を拭うと取り合えず汗を拭いてご飯にしようと、汗拭きシートを買い
物袋から、ごそごそと取り出すと、脱いでとすら言わずに美咲のパジャマに手を掛ける。
「ちょ、ちょっと鳴ちゃん自分で脱げるし拭けるから! 」
そう言って抵抗する美咲に、この娘何言ってるの?
黙って看病されなさいとでも言いたげに、鳴は更に力を込めてパジャマを脱がせてしまった。
何の装飾もないスポブラが露わになって、美咲は恥ずかしそうに手で隠そうとして、鳴に妨害されて諦めて、抵抗をやめた。
「病気の時は、素直に看病されて欲しい」
「う、うん。私の小さいよね」
僅かな膨らみしかない胸。
美咲は、鳴はどう思ったんだろうと気になっていたら、鳴はスポブラに手を掛けて、脱がせてしまった。
「め、鳴ちゃんのエッチ! いきなり取るなんて」
「取らないと拭けないし、私は綺麗だと思う」
初めて見た同年代の女の子の胸。
鳴は素直に綺麗だと思った。だから、素直に綺麗だと伝えた。
「ほ、本当に? 醜くない? 」
こんなにも綺麗なのに、どうして美咲が醜いと言ったのかはわからないが、鳴は約束だからと自分も制服の上を脱ぐと下着姿になる。
真っ赤な顔をしながら、約束だし私だけ見るのは不公平と言いながらも、ブラを外して見せてくれた。
その大きさよりも、その美しさに美咲は熱があるのも忘れて食い入るように様に、鳴の胸を見つめてしまう。
「これで約束守ったから、不公平じゃないよね」
美咲はうんと空返事を返しながら、ただ目の前にある美しくもその存在を主張する鳴の胸を見つめ続けていた。
身体を拭き終えると、お互いブラを着けて制服とパジャマを着る。
「鳴、ありがとう」
「約束だし」
「それも嬉しかったけど、看病してくれて魘されてる私を抱きしめてくれて」
鳴は、ああすると落ち着くと思ったからと恥ずかしそうに答える。
「女の子って柔らかいんだって、美咲を抱きしめて思った」
初めてだったけど、鳴はまた抱きしめてみたいと、美咲はまた抱きしめて欲しいとお互いに、そんな事を考えながら、顔を真っ赤にしていた。
夕食はお弁当屋さんのお弁当だったので、美咲が普通は手作りのお粥だと思いますと言うと、鳴はごめんねと、私料理出来ませんとへこんでしまったので、美咲は大丈夫ですと、鳴の買ってきてくれたお弁当を食べ始めた。
しかし鳴が料理が出来ないなんて以外だった。
何でも出来る女の子だと思っていたから、鳴にも苦手な事があると知れて美咲は嬉しくなった。
「どうして笑ってるの。料理出来ないって馬鹿にしてる? 」
「してないし、ただ鳴ちゃんにも苦手な事があるんだなって」
「一杯あるし、私だって普通の女の子ですから」
学校では、勉強も出来て委員長の仕事も完璧にこなしていて、教師からの受けも良い。そんな鳴にも苦手な事があるのが、自分と同じ普通の女の子だって知れた事が美咲は嬉しかった。
「鳴ちゃんって、普段何してるの? 」
「………………」
「鳴ちゃん? 」
返事がないので、不思議に思った美咲が鳴の方を見ると、何故か鳴は真っ赤な顔をして固まっているので、鳴の視線の先に目を遣ると鳴は、美咲秘蔵の百合本(エロ)を見ていた。
「だああああああああああああ! それは、見ちゃ駄目ええええええええ! 」
固まってしまった鳴の手から秘蔵コレクションを奪還すると、美咲は必死にこれは、その、あの、私もお年頃な訳でしてと、必死に言い訳する。
「あ、あれは何してたの? 」
「はい? 」
いくら鳴がノンケでも、読んだんなら女の子同士でエッチしてるってわかるよねと、美咲は不思議そうに鳴を見る。
「裸で何してるの? どうしてあんな顔してたの? 」
もしかして鳴ちゃんって、そっちの知識皆無ですか?
そうなら、なんて説明したらいいものかと、まだ多少熱のある頭で思案して、下手に隠すよりはちゃんと伝えるべきだよねと、美咲は本を開くと鳴に説明を開始した。
説明を終えて鳴を見ると、真っ赤な顔をして何故か半泣きである。
性的知識皆無の鳴には、刺激が強かったのか、理解が追い付かなくて半泣き状態で美咲を見ているので、美咲はゆっくり勉強しようねと言うと、まだ身体が怠いので布団に入ると、鳴はいそいそと制服を脱いで、なぜか布団に入ってきた。
「何してるの? 」
「明日休みだし、美咲が心配だから泊まる。でも、パジャマないから」
下着でもいいよねと笑顔で言うので、大変嬉しいのですが、うつしたら申し訳ないですと、美咲はうつるよと言うと、鳴は大丈夫と言って、そのまま眠ってしまった。
まだ21時なのにと思いながら、鳴って夜弱いのかな? とスヤスヤと寝息を立てる鳴の綺麗な寝顔を眺めていた。
寝れない。薬が効いているから、眠気はあるのに隣に鳴ちゃんが下着姿で無防備に寝ていると思うと、
全く寝れません。
綺麗な髪だなあ。顔も本当に整っていて、肌も綺麗で、胸も大きくて足も長いし、本当に自分とは何もかもが違う。
髪に触れてみたい。顔に胸に足に触れてみたい。
もしバレても、熱に浮かされていたと言えば、きっと許してくれるよね。
ちょっとだけいいよね?
美咲は自分の欲望にあっさりと負けた。
本当にさらさらで、いい香りがする。その甘い香りに酔ってしまったかの様に、顔に唇に、そして胸に手を伸ばしてしまった。
初めて触れた女の子の胸は、柔らかくてずっと触れていたいと美咲は、暫らく鳴の胸に手を添えながら、鳴の下腹部に手を伸ばす。
パンツに手が触れた瞬間。美咲は我に返った。
今、私何をしようとした?
鳴の大切な部分に許可なく触れようとした?
そんな事したら、鳴は泣いてしまう。
泣きながら、美咲最低! と美咲なんて大嫌い! って言って、二度と話してくれなくなる。二度とあの天使の微笑を、私に向けてくれなくなる。
いくら性的知識が皆無とは言え、大事な部分に触れられれば本能的に、私が何をしようとしたのかを悟る。
鳴を起こさない様に、静かに布団から出ると冷蔵庫から、鳴が買ってきてくれたスポドリを取り出して飲みながら美咲は、自分を嫌いになりそうだった。
自分が、女の子が好きなのはわかっているし、自分がエッチなのも理解している。
彼女が出来たら、色々な事をしてみたいと思っている。
ソフトなのから、ちょっぴり背徳的な事も、偶には激しいのもしてみたいと、でもきっとそんな相手は私には見付からない。
大人になったら、レズバーに行って相手を探そうかなって、この街に都会に出て来た時に考えていたけれど、きっとそんな勇気はない。
だって、私は醜いから、醜くて変態と罵られた女の子だから……
冷蔵庫の前でへたり込んで、声を押し殺して泣いていたら「また怖い夢見たの? 」と後ろから優しく抱きしめられて、美咲は泣き顔を鳴に見られたくなくて、ずっと俯いていたら、鳴に怖くないよと私はずっと美咲の味方だよと言われて、もう我慢出来なくて、堰を切った様にわんわんと泣いてしまった。
「落ち着いた? ごめんね。今日は看病するとか言って、先に寝ちゃって」
いいのと、思い切り泣いて腫れた目をしながら美咲は鳴の胸に顔を埋めて甘えている。
「美咲って、実は甘えん坊さん?」
「具合悪いからだし、鳴のおっぱいが気持ちいいのが悪いし」
軽く拗ねながらも、鳴のおっぱいが気持ち良くて、鳴の体温で安心出来て美咲は、そのまま寝たいと我儘を言ってしまった。
「いいよ。こうしてたら怖い夢見ない? 」
本当はただ寝られなくて、昔を思い出して憂鬱な気持ちに囚われていたのだが、美咲はうんと言うと目を閉じた。
鳴に抱きしめられていると、安心出来て美咲はそのまま眠りにつく事が出来た。
そんな美咲を見つめながら、鳴は美咲の過去に何があったのか気になって仕方なかった。
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