第6話

 がらがらと、私の中にあった何かが崩れていく感覚を私が覚えたのはその時だった。


 誰から聞いた、と言う言葉と、焦燥の表情。


 それが一つの答えを脳内では出している。

 しかし、それを必死で頭から閉め出しながら、私は口を開こうとする。

 冗談でも趣味が悪いわよ、と笑いながら。


 ……冗談であって下さい、そう祈りながら。


「向こうが全部説明してくれると言ったはずのに!」


 ──なのに、その一瞬の現実逃避さえネパールが許してくれることはなかった。


 ひっ。

 変な音が喉でなる。

 目頭が熱い。


 その感覚に、私はようやく気づく。

 自分がほとんど泣いていることに。

 しかし、今はまだなく段階ではなかった。

 まだ何も分かっていないのだから。

 だから私は、必死に自分を奮い立たせて口を開く。


「……何を言っているの? 本当に私との関係を終わらせるつもりなの?」


 そう言いながら、私は祈っていた。

 何を言っている、そうネパールが言ってくれることを。

 私の想像が、ただの被害妄想であることを。


「仕方がないだろ?」


 そんなこと、ある訳がないのに。


「向こうが何を言っても引き下がってくれなかったんだよ。君の妹のエミリーも」


 ネパールの顔に浮かぶのは、いつも都合が悪い時に浮かぶ表情。

 困ったような笑みでさらに続ける。


「僕にはそんな気はなかったんだ。でも、向こうが誘ってきて……」


「誘って、きて?」


 ……信じられない言葉がネパールの口からできてきたのはその時だった。

 信じられない気持ちで、私はネパールの顔を凝視する。

 その顔に浮かんでいたのは、余計なことを言ってしまったと言う後悔の表情だった。


「とにかく、これは全部君の両親のせいで……」


「……エミリーに手を出したの?」


 その瞬間、私の頭が沸騰したように熱くなった。

 私をネパールをにらみ叫ぶ。


「何を考えているの! 私が忙しい時期に、そんなことをしていたの?」


 そう言いながら、私の頭に今まで公爵家との交易にい参加するため動いてきた日々が頭によぎる。

 そんな中、こんな裏切りをしたネパールが私には許せなかった。


「……いや、それは」


「そもそも、どうして私の意見も聞かずにこんなことを決めているの!」


 そう叫びながら、私はネパールに怒鳴る。

 怒りのままに私はさらに続けようとして。


 ばん、と大きな音を立ててネパールが机をたたいたのはその時だった。


「どうして全てが僕の責任にされないといけないんだ!」



 ◇◇◇


 明日から1日一話更新にさせて頂きます!

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