第22話
「こんユノ~! 今日も元気にダンジョン攻略やってくよ~!
なんとなんと、今日は新しい配信友達ができたので紹介しちゃうね」
いつも通っているダンジョンの序盤で、
ユノはドローンカメラを、隣に立つダガーに向けた。
「こちらの美少女は……新人Stuberの、ダガーちゃんです!」
「初めまして、コードネーム『ダガー』です」
ダガーはいつもと同じクールな表情で、
カメラに向かって一礼する。
衣装はいつもの漆黒の戦闘衣装ではなく、ゴシック風のスカート姿だ。
〈おお〉
〈ユノちゃんの友達?〉
〈かわいい〉
〈かわいい!〉
〈コードネーム?〉
〈髪きれー〉
コメントは新たな謎の美少女の登場に盛り上がっている。
俺はダガーにスマホの画面上でその様子を見せた。
ダガーは意外にもこういうものに慣れているのか、すぐに応じた。
「はい、皆様ありがとうございます。
私はユノのお友達であり、
ユウ様の忠実なる配下です」
いきなりの爆弾発言をカメラに向かってした。
「だ、ダガー……!」
「はい? なにか……まずいことを言ったのでしょうか?」
「いやだって」
俺は恐る恐るコメント欄を確認する。
〈配下?〉
〈そういう設定か〉
〈いいね〉
〈配下ちゃん!〉
〈部下ができたかw〉
〈ユノちゃんではなくユウの方なのかw〉
〈らじゃー〉
意外にも、コメント欄は落ち着いていた。
どうもダガーが演技でそういうキャラを装っているように、
視聴者には映ったらしい。
「じゃあダガーちゃんとユウと三人パーティで、
今日はダンジョンいけるとこまでいっちゃうよ~!」
ユノは意気揚々と細剣を掲げた。
+++
迫りくるキマイラアントの群れに、
ユノとダガーがふたり同時に斬りこんでいく。
ユノは以前よりも動きが洗練しており、
以前俺が渡した飛翔スキルも、今ではダンジョン内でも器用に使いこなしていた。
空中で自由自在に向きを変え、
立体的な動きでモンスターを切り払っていく。
一方のダガーも、
いつもは使っていないダンジョン攻略用の短剣を両手に逆手に構え、
モンスターの間を駆け抜ける。
一瞬の停滞の後、その進路上にいたすべてのモンスターが切り刻まれて消滅した。
〈ユノちゃん強いはw〉
〈ダガーちゃんもすごい!〉
〈忍者かな?〉
〈ちょいかわ剣士不要説〉
〈ユウくんなにもしてなくてわろた〉
その通り、もはや俺がなにかするまでもない。
ダガーはもとより、ユノの急激な成長もあり、
この中層レベルではもはやほとんど苦戦する場面に遭遇しなくなっていた。
自分が助けた頃がもはや懐かしい。
ダンジョン中層も、かなり奥まで攻略が進んだ。
そこでふと、ダガーが俺に近寄って囁いた。
「ユウト様、このダンジョン内ですが、以前調査した状態ときと
かなり状態が異なっています」
そのダガーの言葉に、俺はぴくりと眉をひそめた。
「それって、あのダンジョン災害の前、だよね?」
「はい」
「誰かが、手を加えた可能性があるってこと?」
俺の言葉に、ダガーは沈黙した。
忠実なダガーは確信を持てないことに対して、容易くYESともNOともいわない。
つまり、可能性はゼロではない、ということ。
「ふぅ~今日めっちゃ進んだねー!
武器用の素材とかも一杯手に入ったし、今日はこのへんにしとく?」
俺が思案しているところに、
良い汗かいたというような爽快な表情のユノが戻ってきた。
俺は笑顔で応じる。
「よし、じゃあ今日は……この調子で、もっと上まで行ってみよう」
「え? 上って……」
「つまり、初めての“上層”探索だよ」
俺の言葉に、ユノは目を丸くして聞いたことない声で悲鳴を上げた。
ダンジョンで救った配信者が、同棲中の義妹だった ヒトども @_underscore
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