第16話
高層ビルが並ぶ都市の上空を、
無数のドラゴンが飛翔している。
街はパニックに陥っていた。
逃げ惑う人々、出動する警察や消防。
あちこちでモンスターによる攻撃によって被害が発生している。
「ど、どうしよう……! 夕都くん……!
なんでモンスターがダンジョンの外に出てきてるわけ……!?」
優乃さんも混乱していた。無理もない。
これは、数年前に起きたダンジョン災害と同様のものだ。
低層に頻出するようになった上位ランクのモンスターたち。
それが予兆だったのかもしれない。
とにかく、今はそんなことを考えている余裕はなかった。
「俺たちでなんとかしよう」
「え? なんとかって……ってか、今“たち”って言った?
それって、私も入ってる?」
「もちろん」
「む、ムリムリムリムリ! 無理だってばぁ!
だいたい、あんなドラゴンと戦ったことないよ!
ドラゴン種なんて、全部SS級以上のモンスターでしょ!?」
「大丈夫、今の優乃さんなら戦えるよ」
「でも……」
「こうしてる間にも、被害が拡大してる。
とにかくすぐに止めないと」
「……そう、だね」
優乃さんは青ざめた顔で、こくりと頷いた。
勇気を出して覚悟を決めてくれたようだ。
だが、手数としてはまだ心もとない。
それを危惧していた直後だった。
上空から、複数の黒い影がその場に舞い降りた。
「……来たか」
影たちは、俺を中心として整然と半円をつくるように並ぶと、
片膝を地面について、深く頭を垂れた。
ステルス機能を有した特殊戦闘衣装。
背中や腰脇には、それぞれの名を冠した、
対モンスター殲滅用のワンオフ武器を装備している。
「なななっ、だ、誰!? なにこの人たち!?」
一見して異様な外見の少女たちの出現に、
優乃さんがぎょっとして周囲を振り返る。
「大丈夫。味方だから」
俺は端的にそう説明した。
すると、
影たちの中央にいたひとりの少女――ダガーが、
俺に指示を求めた。
「ユウト様。ご命令を」
「来てくれてありがとう。手分けして、今この街に出現してる
全部のモンスターを掃討してほしい。
もちろん、俺も出る」
「承知しました。ユウト様のお手を煩わせぬよう、
我らが最後の一匹まで塵芥と変えてみせます」
「頼んだよ、ダガー、みんな」
俺が言うと、全員が胸に手を当てて一糸乱れぬ敬礼で応じた。
それぞれが黒い渦を通じてその場から瞬間移動して散開する。
「えっと……あの、夕都くん?
今の人たちは、どなたで……?」
「ちょっとした知り合いだよ。昔の……ね」
「はぁ……」
「じゃあ、俺たちも行こう」
「で、でもどうやってあの空飛んでるドラゴンを倒すわけ?
剣じゃどうやっても届かないし、
私、遠距離攻撃用のスキルも持ってないし……」
「俺たちも飛べばいい」
「え?」
俺は以前特訓をしたときと同様に、優乃さんの手をとった。
そしてスキルをいじり、必要な強化と付与を終えた。
「よしっ……と。これで優乃さんも飛行スキル扱えるよ。
空中に疑似的な足場も形成できるから、近づいた地上を同じ感覚で
戦えると思う」
俺は言って、自分が先に空中に浮遊してみせた。
一歩前に歩くのとたいして変わらない感覚だ。
「もぉ~~~~なんとか、なれぇ~~~~~~!」
優乃さんはやけ気味に叫ぶと、跳躍するように、空中を飛翔した。
飛び上がってから、そんな自分の姿に驚きを上げた。
「ほ、ほんとにできちゃった!?」
「うん、それじゃあ……。
ドラゴン狩りといこうか」
それぞれ剣を抜き、街の上空を我が物顔で飛翔する
ドラゴンたちに向かって、突撃を開始した。
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